2018年2月17日 (土)

マリア・トロMaria Toroのフルート・ジャズ「A CONTRALUZ」

フルート・フラメンコ・ジャズ

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<Jazz>
Maria Toro「A CONTRALUZ」
Jazz Activist / Imp / JA04 / 2017


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Maria Toro: Flute
Jean-Michel Pilc: Piano
Ben Street: Double Bass (1, 3, 5, 7)
Justin Brown: Drums (1, 3, 5, 7)
Israel Varela: Drums (2, 6)
Andreas Arnold: Flamenco Guitar, Bouzouki (2, 6)
Auxi Fernández: Palmas (2, 6)

 どうゆう過程で、こうした取り合わせが出来上がったのか解らないが、とにかくピアノの名人格のジャン・ミシェル・ピルクJean-Michel Pilcが全面参加しての実力派と言われている女流ジャズ・フルート奏者マリア・トロMaria Toroがリーダーのフラメンコ・ジャズ・アルバムである。
 このマリア・トロに関しては全く私は白紙状態であったと言って良い。それもそのはず、このアルバムが彼女の最初のアルバムと言うことだ。いずれにしても彼女はスペインで生まれ(1979年生まれ、そろそろ40歳に近くなっている)幼少期よりフルートに接し、そしてフラメンコには馴染んできたと言うことだろう。そして2011年にはNYに進出している。
 フルート・ジャズと言えば、昔どうゆう訳けか良く聴いたハビー・マンを思い出すが、その後はむしろイタリア・プログレッシブ・ロックでたっぷり聴いてきた。しかし考えて見ると久々にフルートを主体としたジャズ・アルバムを聴くことになったのである。
 
Jmp1w2 ピアノ参加のジャン・ミシェル・ピルク(←)は、この人もなかなかの歴戦の強者であるのだが、私は殆ど彼のピアノ・トリオにも接してこなかった。まあ名前を聞いてきた程度のところであった。彼は1960年10月19日、パリ生まれ。9歳でジャズ・ピアノを始め、ほとんど独学でマスターしたのだという。87年までは、なんとフランスの国立特別研究所に勤務してロケット開発に携わっていたが、以後音楽の道へ変わったと言う変わり者。欧米の著名な音楽家との共演や映画音楽の制作などを経て、95年にNYへ渡り、自己のレギュラー・トリオを結成している。
 何故、彼のことをここに書いたかというと、このアルバムではなかなか見事なピアノ演奏で、ここでは最も重要な役を果たして、このアルバムを引き立てているからだ。これを聴くと彼のアルバムにも手を出さざるを得ない気持ちになっている。

(Tracklist)
1.  Cocodrilos 6:58
2.  A Contraluz 5:19
3.  Babel 6:23
4.  Sus agujeros 5:37
5.  Por el reloj 6:19
6.  Gitano 3:24
7.  Te mire 7:17

 
さて、このジャズ・フルート奏者マリア・トロだが、なんと15年間の音楽的探求の結果、満を持してリリースした作品ということでアルバムとしてはデビュー作品だ。そしてジャズとフラメンコなどの要素をたっぷり取り入れてのまさにオリジナリティーそのものの世界を演じて居る。そして活動の場がNYということであろうか、このようなメンバー構成であり、華々しさばかりでなく、フルートの奏でるちょっと深遠なるところも聴かせてくれる。
 ハービー・マンはロックやボサ・ノバにフルートでのジャズ展開を演じたのであるが、このマリア・トロはフラメンコを軸にフルート・ジャズを演じているのだ。しかしメンバーはピアノ、ベース、ドラムスとオーソドックスなカルテット構成である。そして2曲はギターも参加というところだ。

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 アルバム・タイトル曲のM2. "A Contraluz"は、歯切れのよいフルート音は、ギターとピアノのバックを生かして如何にもフラメンコ調の世界を築く。M6. "Gitano"も同様だが、やはりギターが入るとフラメンコ・ムードが盛り上がりますね。。
 M3."Babel"はベースから始まり、テンポの早いステック音をバックにピアノのフルートのスリリンクな演奏でジャズを楽しめる。
 M4."Sus agujeros"静かな中に、やはりこの曲もフルート、ピアノのインター・プレイが聴きどころで、かなり息の合ったところを聴かせる。
  M5. "Por el reloj"はフルート・ソロから始まって、ドラムス、ベースがサポート、とにかく歯切れのよいフルートはなかなかのもの。後半はフルートに替わってピアノが前面に出ての演ずるところとなり、最後はカルテットの掛け合いだ。

 全体に、マリア・トロはとにかく歯切れの良いフルートを奏でるというのが信条のようで、テクニカルにも圧倒されるし、ジャン・ミシェル・ピルクのピアノも同様にそのテクニシャンぶりには驚かされるところ。

(視聴)

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2018年2月13日 (火)

フランク・ハリソン・トリオFrank Harrison Trio 「Lunaris」

ピアノによって語られる内省的、抒情的世界

<Jazz>
Frank Harrison Trio 「Lunaris」
Linus Records / UK /LRCD02 / 2014


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Frank Harrison : Piano
Dave Whitford : Bass
Enzo Zirilli : Drums

  これも寺島靖国コンピ・シリーズ『Jazz Bar 2017』(TYR-1061)の恩恵で知ることになったものだ。そこに登場した曲"My Love and I"(David Rassin)が収録されているのは、ピアニスト・フランク・ハリソンFrank Harrisonのトリオによるアルバム『Lunaris』である(2014年リリース)。私が注目することになったこのアルバムは、彼としては3作目の作品。 
  何時しかイギリスの”ピアノ詩人”と言われているらしいフランク・ハリソン。彼はバークリー音楽院で研鑽を積み、イギリスに戻ってからは自国の一流アーティストを中心に共演、活動を続けて来ている。オックスフォードを中心に活動しているようで、現在最もよい年頃を迎えている40歳だ。

81lc97xnhylw  彼のピアノ・トリオ作品としては、デビュー作は2006年に発表(アルバム『First Light』)。更に2012年にはLinus Recordsから2nd『Sideways』(LDCD01)をリリース。
 
(参考)その1stアルバム・・・・
 『First Light』Basho Music/SRCD152)
    FRANK HARRISON(p)
    AIDAN O'DONNELL(b)
    STEPHEN KEOGH(ds)  

 このアルバムはかなりの好評で彼が注目を浴びることになったものだという。そんなことから聴くことにしたのであるが、一部のピアノトリオ・ファンにひっそりと愛されて来ていたらしいが、私は今にして聴いているわけである。
 当時28歳でのデビューだ。収録9曲で、彼のオリジナルは5曲。歳に似合わずといっていいのか、静寂な雰囲気を醸し出すのが得意で、やはり内省的にして静謐な音楽性に満ちている。ジャケも上のように地味ではあるが、部屋の床の一部にさしてきた陽の光を描いていて、その心を十分に表している。なかなかの好作品。

 さて本題に戻るが、ここに取りあげたこの2014年の近作(3rd)では、ベース、ドラムスが変更されているが、相変わらず陰影に富んだクラシカルなタッチで不思議な宇宙空間を描く作品を作り上げているのだ。

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          (現トリオ・メンバー Harrison,  Whitford,  Zirilli)

Fkw(Tracklist)
1.My Love and I 
2.I'm Old Fashioned 
3.Stars *
4.An Evening of Spaceships and UFOs *
5.Io  *
6.Sunrise(Port Meadow) *
7.Ascent  *
8.The Bird  *
9.BoRG-58  *
10.The Recruited Collier
11.Emily 
12:Stars II  *

 収録12曲中、8曲はハリソンのオリジナル(*印、内2曲(M4、M9)はトリオ・メンバー3人によるもの)。
 M4."An Evening of Spaceships and UFOs "は注目曲。ピアノとベースの音とそこに見る間によって描くところが深遠。そして次第にテンポを上げてドラムスも活発に絡んで高揚して行く、この3者のインター・プレイが素晴らしい 。そして再び3者の音一つ一つが間を大切にしつつ静かな情景を描くM5."Io"に繋がって行く 。
 一方M6."Sunrise(Port Meadow)"は如何にも明るく、美しい。
 彼らはこのアルバムでは、宇宙空間に存在する世界の不思議さと地球の自然の美しさ、更にそこに存在する者達を描こうとしたのだろうか、M1."My Love and I"は抒情的な美しさで満ちている。 
 どうもこのアルバムは、それぞれの曲が独立しているのでなく、一つのコンセプトによってトータルに構築されていると思われた。
 陰影のある中に、深遠な哲学的世界を美と叙情をもって描いているところは素晴らしい。

(視聴)

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2018年2月 9日 (金)

メロディ・ガルドーMelody Gardotのライブ・アルバム「Live in Europe」

心の琴線にふれる歌心のライブ・ベスト盤

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★ライブで大切なものはただ一つ。・・・それはハートです。このアルバムには私のハートとツアー中に応援してくださった皆様の愛情が込められています。私にとって大切な思い出溢れたギフトであると同時に、リスナーの皆様にも贈りたいギフトでもあります。このアルバムは長い「ありがとう」のメッセージです。感謝しています。・・・・メロディ・ガルドー

(上記はメロディ・ガルドーのこのアルバムにおけるメッセージです。そう言えば2009年の彼女の私にくれたサインにも、”Arigato !”と記してあった)

<Jazz>
Melody Gardot 「Live in Europe」
Universal Music / JPN / UCCM-1243 / 2018


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Vocals , Guitar and Piano : Melody Gardot
Trumpet: Shareef Clayton,  Sax: Irwin Hall,  Organ: Devin Greewood,  Guitar: Mitchell Long,  Bass: Edwin Livingston,  Drums: Chuck Staab


 いやはや頑張っているジャケですね。このヌードの女性はメロディ・ガルドーなんでしょうか?、ギターを弾き語りしていますね。何処かに今回のアルバムを作るに当たって彼女は自らヌードを披露することを選んだとか書いてあったような気がしますが・・・・・。と、すれば気合いが入ってますね。

 まあそれはそれとして、このアルバムはメロディの精力的な2012年から2016年までに行われた世界ライブからのヨーロッパにおけるもの。彼女自身が厳選したものを納めている。2枚組という豪華版に仕上がった。デビュー10周年記念としての意味もあるようだ。

Mg 私は彼女に直接話をしたり生演奏に接したのは、2009年の話。2ndアルバム・リリース時でした。右はその時の彼女のサイン。あれ以来ファンと言えばファンである。
  もともと彼女はライブへの力の入れ様は高い。従ってアルバムの出来とライブの出来には、そのパターンにかなりの違いがあり、それぞれ興味深いのである。ライブではよく編曲も行っているし、そんな意味でもライフ盤の価値は結構高い。又彼女のライブ盤への力の入れ様も解るのである。

 今回は初のCDライブ・アルバム盤となっているが、既にライブ映像オフィシャル版は、一昨年ここでも取りあげたようにリリースされている( 『Live At Olympia Paris』(EVB335359/2016))。
  又、ブート・ライブ・映像版『DONOSTI 2012』 (MegaVision, Live at SPAIN)もあった。

(Tracklist)
Disc 1
1.  Our Love Is Easy - Live in Paris / 2012 *
2.  Baby I'm A Fool - Live in Vienna / 2013 *
3.  The Rain - Live in Bergen / 2013 *
4.  Deep Within The Corners Of My Mind - Live in Amsterdam / 2012 *
5.  So Long - Live in Frankfurt / 2012 #
6.  My One and Only Thrill - Live in Barcelona / 2012 *
7.  Lisboa - Live in Lisbon / 2015 #
8.  Over The Rainbow - Live in Zurich / 2013 *

Disc 2
1.  (Monologue) Special Spot - Live in London / 2016
2.  Baby I'm A Fool - Live in London / 2016 *
3.  Les Etoiles - Live in London / 2016  *
4.  Goodbye - Live in Utrecht / 2016 #
5.   (Monologue) Tchao Baby - Live in Utrecht / 2016
6.  March For Mingus - Live in Utrecht / 2016 %
7.  Bad News - Live in Utrecht / 2016 %
8.  Who Will Comfort Me - Live in Amsterdam / 2015 *
9.   Morning Sun - Live in Paris / 2015 %

 *印 アルバム『MY ONE AND ONLY THRILL』より
 #印  アルバム『ABSENCE』より
 %印  アルバム『CURRENCY of MAN~出逢いの記憶~』より

 さてこのライブ盤の内容であるが、成る程、上のようにヒット曲満載の作品に仕上がっていると同時に、見事な編曲が施されているものが選ばれている。そしてファンから愛される代表曲 ”Baby I'm A Fool ”(2013年のウィーン、2016年のロンドン録音)、”My One and Only Thrill” (2012年のバルセロナ録音)、”Who Will Comfort Me”(2015年アムステルダム録音)など聴き応え十分。更に”Les Etoiles ”(2016年ロンドン録音)、”March For Mingus” (2016年ユトレヒト録音)なども収録されている。とにかくオリジナル・アルバム(スタジオ録音盤)を持っていても、このライブ盤は全く別のアルバムとして聴くに十分だ。
  ”The Rain”(2013年ベルゲン録音)は、11分以上に及ぶ曲と化して、器用なIrwin Hallのサックスなどの演奏の別仕立てによっての編曲はお見事。
 又 ”Lisboa” (  Lisbon / 2015) ”Over The Rainbow” ( Zurich / 2013 )の2曲などは、会場との一体感を表現しているなど聴き手を飽きさせない。

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 もともと歌唱能力が高く、ギターやピアノの演奏能力も長けているメロディのライブは聴くものにとっては魅力十分で有り、こうしたミュージャンは貴重である。
 彼女の交通事故による重体などの不幸な経歴を乗り越えての活動に喝采を浴びせるのであるが、それはむしろ彼女自身が、自己の作曲や演奏活動の力にしているところが共感を呼ぶところである。
 スタジオ最近作は、2015年の『CURRENCY of MAN~出逢いの記憶~』(UCCU-1468)であったが、勿論女性としての心の流れを描くと同時に、現在の社会に目を向けて、ジャズからプログレッシブ・ロックっぽい技法でコンセプト世界も描いてみせるところは稀有な存在である。目下は当然スタジオ次作にも期待をしているところだ。

(視聴)

 

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2018年2月 6日 (火)

アンナ・コルチナAnna Kolchina「野生の息吹 Wild Is The Wind」

( 2017年リリース 印象に残ったアルバムを-13 )

(美女狩りシリーズ) やや物憂いミステリアスな歌声が魅力

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<Jazz>
Anna Kolchina「 Wild Is The Wind」
Venus Record / JPN / VHD01228 / 2017

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Anna Kolchina (vocal)
John Di Martino (piano)
Peter Washington (bass)
Willie Jones (drums)

Recorded atTedesco Studio, New York on Sept.12,13and14,2017
Produced by Tetsuo Hara
Engineer by Tom Tedesco

 ジャズ界におけるヴォーカル部門では、まさに女性ヴォーカリストの独壇場で、いやはや尽きることを知りません。これもロシア出身の女性ヴォーカリストのアンナ・コルチナAnna KolchinaのVenus Recordsからの3rdアルバム。彼女はニューヨークでの活動のようで、それに至った経過は興味があるが、よく解らない。
 Venus Recordsですから、バック演奏はニッキ・パロットでもお馴染みのジョン・ディ・マルティーノ・ピアノ・トリオだ。彼らの演奏はどちらかというと聴きやすいタイプであり、従ってこのアルバムも非常に親近感ある仕上げだ。
 彼女のやや物憂いミステリアスな歌声が魅力で、日本では若干話題になっているようである。

(Tracklist)
01.Wild Is The Wind野生の息吹
02. So In Love
03.You Do Something To Me
04.Don't Worry 'bout  Me
05.You Won't Forget Me
06.Don't Look Back
07.Exactly Like you
08. I Never  Told You
09.With A Song In My Heart
10. It Never Was You
11.A Fine Romance 素敵なロマンス
12.You Can Have Him
13.Day By Day
14. A Sinner Kissed An Angel

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 バックのジョン・マルティーノ・ピアノ・トリオも、アンナの地に着いた落ち着きのあるヴォーカルを生かすべくなかなか頑張って、これはお手の物と言う感じでの演奏だ。彼女の物憂い歌声を支えてうまく纏め上げている。M04".Don't Worry 'bout  Me"なんかは、ピアノ演奏もじっくりと聴かせてくれてその典型だ。
 それぞれの曲は過去の名高いスタンダード曲だが、しっかりジャズとして演じられる中に、結構アンナ節に統一されて、聴く方にも意外に新鮮。冒頭のアルバム・タイトル曲のM01".Wild Is The Wind野生の息吹"も情感も入って魅力たっぷり。
 彼女については全く知らずに今回美女狩りを得意とする友人から初めて教えてもらったもので、これは意外に魅力を秘めていて今後楽しみなヴォーカリストだ。唄う声の質も”ハスキーでコケティッシュ”と言われているようであるが、私の印象では、ハスキーと言うのでなく、マイルドにして美声と言うタイプである。そしてしっとりと囁くようにも唄ってくれて好感が持てた。

 とにかくこれは彼女の1st『Street Of Dreems』(2015年)、2nd『Dark Eyes』(2016年)に続くアルバムで、Venus Recordsなのでこれからも日本に定着しそうな雰囲気だ。

(視聴)

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2018年2月 2日 (金)

ケティー・サーウーKatie Thiroux 「OFF BEaT」

( 2017年リリース 印象に残ったアルバムを-12 )

女流ベーシスト・ヴォーカリストのアルバム

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Katie Thiroux 「OFF BEaT」
CAPRI Records / USA /CPRI 74146-2 / 2017

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Katie Thiroux (vocal except 4,5,9) (bass except 3)
Justin Kauflin (piano except 8,10)
Matt Witek (drums except 3,8,10)
Ken Peplowski (clarinet on 1,6,8) (tenor saxophone on 7,9)
Roger Neumann (soprano saxophone on 1) (tenor saxophone on 9)

  ロサンジェルスで活躍中の若手の女性ベーシスト兼ヴォーカリストのケイティー・サーウー(シロウ)の2ndアルバム。彼女のベースにピアノ&ドラムとのトリオに、曲によってはケン・ペプロフスキーらのゲストのクラリネット、サックスが加わっての演奏、そして彼女のヴォーカルが入るアルバム。 若くして多くの音楽賞を獲得し、1st『Introducing Katie Thiroux』は(私は未聴)、高い評価を受けたと言うことだ。今回、プロデュースはジェフ・ハミルトン。曲は、ジューン・クリスティー、デューク・エリントン、フランク・シナトラ、レイ・ブラウンなどの名曲を聴かせる。
 こうなると日本で人気のニッキ・パロットと比較してしまうが、ケイティーの場合は、間違いなくアメリカン・ジャズそのもので、どちらかというとご機嫌なリズムに乗っての小粋なジャズで、パロットの一連のVenus盤にみるようなJazzy not Jazzパターンのヴォーカル中心というのでなく、むしろ演奏中心と言っても良い(ちなみにM4,5,9は、インスト曲)。

Thiroux20press20photo_2_0(Tracklist)
1. Off Beat
2. When Lights Are Low
3. Why Did I Choose You?
4. Slow Dance With Me
5. Brotherhood Of Man
6. Ray's Idea
7. Some Cats Know
8. When The Wind Was Green
9. Happy Reunion
10. Willow Weep For Me

 彼女のヴォーカルは、”テンダネス溢れる瑞々しいリラクシング・ヴォーカル”と表現されているが、ほめて言えばそんなところだ。

   M1. "Off Beat"
は、サックス、クラリネットが華々しくビートが効いた曲で、アメリカン・ジャズそのもの。昔、ジューン・クリスティーが吹き込んだナンバー。
  M2. "When Lights Are Low"は、ピアノ・トリオによる一転して落ち着いたムード。しかししっかりスウィングしている。
 M3. "Why Did I Choose You?"では、しっとりと夜のムードで、彼女のヴォーカルもお話をしているが如くで私好み、この線は良いですね。
  M5. "Brotherhood Of Man"M7. "Some Cats Know" のオープニングは、彼女のベース・ソロもお目見えするが、軽妙な小気味のよいジャズを展開する。
 M8. "When The Wind Was Green"は、彼女のベース弾き語りとペプロフスキーのクラリネットの掛け合いが上出来。このアルバムでは注目曲。

 とにかく居こごちのよい和みムードをもった曲が特に冴えていて、軽妙な小気味のいい洒落たムードを持っている曲も展開する。インスト曲もしっかり聴かせるところも楽しませることが上手であるし、ダイナミックな曲も挿入してフルコースのアルバムだ。
 私のようなユーロ・ジャズ党も、時にはこのアメリカン・ジャズの線も有りというところであった。

(参考:ある紹介記事より転載↓)
Katie Thiroux (ケイティ・サーウー(シロウ))
 
1988年LAで音楽一家に生まれる。4歳でヴァイオリンを始め、8歳でダブルベースに転向。同時にジャズ、クラシックのヴォーカルも学び、10歳でオペラの主役も務めているとい才女。ハミルトン・ハイスクール・アカデミー・オブ・ミュージックに進学し、17歳でLA Jazz Societyなどで多くの賞を獲得。そして2006年にはボストンのバークリー音楽院で6人しか与えられない奨学金を授与され入学。入学後もグレッグ・オスビー、ブランフォード・マルサリスなどと共演。在学最後の年の2009年にはエクアドルのサンフランシスコ大学バークリー校で音楽教授となる。その後、LAに戻り、修士課程を終えた2012年には全米の多くのフェスティヴァルへ出演。そして2013年にはケイティー・サーウーカルテットを結成。2015年にグラミー受賞プロデューサーのジェフ・ハミルトンを迎え、ファーストアルバム『Introducing Katie Thiroux』をリリースし、各メディアでも絶賛された。その後もアメリカ、メキシコ、ドイツなど世界中のジャズフェスティバルに呼ばれ、演奏者、指導者として精力的に活動している。

(視聴)

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2018年1月29日 (月)

ボボ・ステンソンBobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

久しぶりに巨匠のピアノの世界に浮遊

<Jazz>
Bobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

ECM / Germ / ECM2582 5786976 / 2018

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Bobo Stenson (piano)
Anders Jormin (double bass)
Jon Fält (drums)

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  しばらく聴いていなかったため、なにか懐かしい気持ちになって聴いているスウェーデンのピアニストの巨匠ボボ・ステンソンのトリオ最新作。過去のアルバムにみせた耽美で叙情詩的な世界を落ち着いた中に構築し、しかしフリー・ジャズのニュアンスのある彼ら独自のインプロをハイレベルで三位一体で展開してみせることも忘れていないアルバムとなっている。この浮ついたところのない静かな世界は、新年の新たな出発にぴったりのアルバムだ。

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1. Canción Contra La Indecisión (Silvio Rodriguez)
2. Doubt Thou The Stars (Anders Jormin )
3. Wedding Song From Poniky (Béla Bartók)
4. Three Shades Of A House (Anders Jormin )
5. Élégie (Erik Satie)
6. Canción Y Danza VI (Frederic Mompou)
7. Alice (Bobo Stenson )
8. Oktoberhavet (Anders Jormin )
9. Kalimba Impressions (Bobo Stenson, Anders Jormin, Jon Fält)
10. Stilla(Anders Jormin )
11. Hemingway Intonations(Anders Jormin )

 さて収録曲は上のようなところ。7曲は彼らのオリジナル(ベーシストのアンデルス・ヨルミンAnders Jormin はなんと5曲、ボボ・ステンソンBobo Stenson は1曲、トリオ3人での1曲)で、その他はサティ、バルトークのほかモンポウなどの曲がお目見えするが、意外やキューバのシルヴィオ・ロドリゲスの曲(アルパム・タイトル曲)が冒頭に登場する。
 とにかく、全てを知り尽くしたと言えるベテランのボボ・ステンソンのピアノには、静謐な美しさと共に乱れのない彼の築く空間の世界が厳然とこのアルバムにも構築されている。しかし今回も私は過去のアルバムから感じているところだが、ベーシストのヨルミンの果たしている役割が意外に大きいと思っているのだが・・・。

 M1. "Canción Contra La Indecisión"、ボボ・ステンソンの美しく思いの外明るいピアノのメロディーが展開。 
 M3. "Wedding Song From Poniky"は、 Béla Bartókの曲で、特にピアノの調べは、このアルバムでもピカイチの美しさにしばし我を忘れる。
 M2. "Doubt Thou The Stars"、 M8. "Oktoberhavet"などヨルミンによる曲では、彼のアルコ奏法に織り交ぜてのシンバルの繊細な響きも加わった美しい世界で、なかになか深遠で聴き応えある。
 M7. "Alice"は、ステンソンの曲だが、彼の特徴の一つでもあるECM的空間にフリー・ジャズとも言える世界を展開している。繊細なシンバルの響き、メロディというよりは静寂な空間を描くピアノの音、こうした味付けは過去にも見られた手法である。そしてこの曲と同時に、その後の3者によるM9. "Kalimba Impressions"も、そこにはトリオのインプロヴィゼーションによる静かな中に描くスリリングなインタープレイの味が聴き所だ。
 M10. "Stilla"は、彼らのジャズ心をトリオのそれぞれの味を交錯させての見事なアンサンブルを演じた1曲。

Reflectionsw_2 私は思い起こせば、ボボ・ステンソンを最初に聴いたのは、1996年のECM盤アルバム『Reflections』(ECM/ECM1516)(右上)であったかも知れない。あのアルバムは、美しさの漂う曲と共に、決して軟弱でない彼らの凜々しさを感じたアルバムであった事を思い出す。
 その後ニューヨークに進出してのドラマーにポール・モチアンを迎えてのこれもECM盤『Goodbye』(2005年リリース、2016年再発ECM/UCCU-5753)(右下)あたりは、その取り合わせに驚きつつもGoodbyew
キース・ジャレットとは又違った北欧の臭いのするフリー・ジャズの流れに感動して聴いたのだった。

 この今回のアルバムは、過去のものとの比較では、フリージャズの実験性の色合いは減少していて、ボボ・ステンソンの野心性は後退してはいるが、やはり美しさの中に描くハイレベルの空間の美はお見事と言わざるを得ない。

(参考)Bobo Stenson
 1944 年、スウェーデン出身。音楽一家に育つ。 10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねたようだ。 1970 年代には盟友ヤン・ガルバレクと共にカルテットで活動を開始、この頃は私はあまりマークして居らず、当時の作品は歴史的名盤と言われているが実のところ聴いていない。1971 年にはアリルド・アンデルセンとヨン・クリステンセンを迎え、自己のトリオを結成。 その後、トーマス・スタンコ、チャールズ・ロイドなどのグループにも参加。現在は、トリオとしてアンデルス・ヨルミンとヨン・フェルトと活動を続けている。このトリオは、北欧の自然をイメージする音楽的空間を描きつつ、音楽をプログレッシブな感覚で構築する現代最高のアンサンブルとして尊敬を集めていると言うのだ。ステンソンは既に70歳を越えており、キース・ジャレットと双璧をなす北欧の巨匠とされている。 

<Bobo Stenson Discography>
Underwear (ECM, 1971)
Reflections (ECM, 1993)
War Orphans (ECM, 1997)
Serenity (ECM, 1999)
Goodbye (ECM, 2005)
Cantando (ECM, 2007)
Indicum (ECM, 2012)
Contra la indecisión(2018)

The Sounds around the House, Piano Solo (Caprice Records, 1983)
Very Early (Dragon Records, 1987)
Solo Piano (La Sensazione, 1999)

(視聴)

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2018年1月25日 (木)

リズ・ライトLizz Wright 近作「GRACE」

( 2017年リリース 印象に残ったアルバムを-11 )

スピリチャル・ヴォイス満開のリズ・ライト

<Jazz, Blues, Gospel>
Lizz Wright 「GRACE」
Universal Music / JPN / USSCO-1192 / 2017

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Lizz Wright (Vocals)
Kenny Banks Sr.(p), Marc Ribot(G), David Piltch(B),  Chris Bruce(G),Marvin Sewell(G), Jay Bellerose(D), Patrick Warren(Key)

Lizzwright2_2 リズ・ライトLizz Wright (born January 22, 1980)は、 もう日本でも知られている米国南部ジョージア州出身のジャズ、ゴスペル歌手(ブルース、ソウル、フォークの因子も)だ。
 父親は、教会の牧師で音楽監督を務めていた。その影響で、ブルース、ジャズに開眼。高校では聖歌隊に参加し、ナショナル・コーラル・アウォードという賞を受賞しているようだ。ジョージア州立大学では本格的なバンド活動をし、大学卒業後にジョー・サンプルのアルバム『The Pecan Tree』(2002年)にてデビュー。ジョー・サンプル・バンドのメンバーを務める。2003年にVerveから自己の1stアルバム『Salt』をリリース。

 本作はConcordに移籍しての2作目(デビュー以来通算6作目)。彼女のルーツであるアメリカ南部のソウル曲が中心、Ray Charles, Allen Toussaint,  k.d. lang, Bob Dylan, Frank Perkinsや Mitchell Parishなど懐かしの往年のミュージシャンをカヴァーしている。
 プロデュースはシンガーソングライターJoe Henryだが、おそらくリズの歩んだ道から彼女のセンスで選曲されたところが多いのではと思う。LAのサンセット・ブルヴァードでのライヴ録音、そしてユナイテッド・レコーディング・スタジオでの多彩なミュージシャン達との録音による作品。

(Tracklist)
1.  Barley (Allison Russell)
2.  Seems I’m Never Tired Lovin’ You (Cortez Franklin)
3.  Singing in My Soul (Thomas A Dorsey)
4.  Southern Nights (Allen Toussaint)
5.  What Would I Do (Ray Charles)
6.  Grace (Rose Cousins-Mark Erelli)
7.  Stars Fell on Alabama (Frank Perkins-Mitchell Parish)
8.  Every Grain of Sand (Bob Dylan)
9.  Wash Me Clean  (k.d. lang)
10. All the Way Here(Lizz Wright-Maia Sharp)
11. This is Heven to Me  (Bonus Track)

Ribotschindelbeckwiki とにかく充実感のある彼女の歌声がやはり魅力ですね。又曲も哀感のあるものから、美しい世界を描くものと充実していて彼女の歌いあげる充実ヴォイスに感動するアルバムだ。バックも素晴らしく、20年来一緒に活動してきたKenny Banks Sr.、スペシャル・ゲスト・ギタリストMarc Ribot(→), ベースの David Piltch, ギタリスト Chris BruceとMarvin Sewell, ドラマーJay Bellerose, キーボーディスト Patrick Warrenが参加して充実。

 M1.  "Barley" スタートのこれって"大麦"のことなのか、南部の穀倉地帯での生活を唄うのか、リズム感たっぷりのフォーキーな曲で、幕開きとしては十分の説得力。
 ロカビリー調の曲(M3. " Singing in My Soul" )もあるが、ほぼ全編ゆったりとした曲と彼女のヴォーカルをじっくり楽しめる。時にバッキング・コーラスも入って盛り上げる(M2、M6など)。
 なんと言ってもやはりアルバム・タイトル曲のM6. "Grace"が私はお気に入り。これは"優雅、恩恵、慈悲、感謝"という意味なのだろうが、やはり"感謝"なのだろう思う。バラード曲で彼女の歌い込み説得力十分の良い曲だ。
 M2. " Seems I’m Never Tired Lovin’ You"も哀感ある愛がたっぷりで聴き惚れる。
 又、M7、M9などは、バックのギターも美しく、単なる歌ものでなく聴くに十分な魅力をもっている。
 
 南部のソウルをもってして歴史的ストーリーを綴っているようだが、彼女のスピリチャルな歌声による決して暗くならずむしろ感謝の心を示しつつ希望を持たせる曲に仕上げたアルバム作りに感動すらあった。

(参考)Lizz Wright Discography
<Verve>
『Salt』(2003年)
『Dreaming Wide Awake』(2005年)
『The Orchard』(2008年)
『Fellowship』(2010年)
<Concord>
『Freedom & Surrender』(2015年)
『Grace』(2017年)


(視聴)

 

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