寺島靖国氏の看板アルバム 「Jazz Bar 2024」
今回もピアノ・トリオのオンパレード
<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2024」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1129 / 2024
毎年の年末行事と化しているTERASHIMA RECORDSからの13曲入りの「Jazz Bar 2024 」がリリースされた。ジャズ愛好家は誰も知っている寺島靖国氏(→)の選曲するところのオムニバス・アルバムだ。彼に関しては、近年日本のジャズ界では、取り敢えずジャズ喫茶オーナー、評論家としてスタートしたといってもよい彼が、今や1938年生まれと言う86歳と言う高齢でありながら、オーディオ界、ジャズ関係書籍出版界、レコード出版界、音楽評論家界などにて破竹の勢いである。そして自己のレーベル「寺島レコード」を2007年に発足させ、彼なりきの感覚でジャズ系のレコード(CD、LP)をリリースしている。
そしてそのリリース・アルバムの骨格はこの「Jazz Bar」シリーズといってよい。これは彼のレーベル発足前の2001年に初版がdiskUnionの力を借りてリリースした。それ以来24年、毎年の1巻リリースで経過で24巻、なんと十二支を二周したことになる。こうなると恐るべき延命のオムニバス・アルバムである。そして我がCD棚をみると2001から2024まで全て欠けるもの無く並んでいるという私も好き者なのである。彼のジャズ系のオムニバス・アルバムは、これに留まらず「For Jazz Audio Fans Only」16巻、「For Jazz Vocal Fans Only」7巻、「For Jazz Ballad Fans Only」5巻、「For Jazz Drums Fans Only」2巻と、合わせて54巻既にリリースしているのである。
そして話は「Jazz Bar」に戻すと、主たる内容は世界各地のピアノ・トリオものが圧倒的に多い。その点は私の好みにピッタリであり、又どちらかと言うとヨーロッパ系が多いのもクラシックやトラッドの流れの因子の強いところに寄っていて、その点も私は大賛成なのである。ただ2001年の第1巻からしばらくは、まだその他のシリーズがスタートしていないのでヴォーカルものも入っている。
スタートの2001年版(→)では、彼はオムニバスであることに面白いことを言っている「個人色は強く出す。社会一般のことなど考慮せず、とにかく好きなものをかき集める。そして虫眼鏡でのぞき、ふるいにかけ、あたかもマッケンジー河から砂金を取り出すごとく抽出してCDに収めるのである」と、そして「一曲一曲は砂金である。ゴールドである。・・・・以上のような性格が帯びたとき、はじめて普通一般のCDを飛び越えることがありうるのである」と。なかなか面白いではないかと、私もそれにお付き合いして24年、今年も巡り合えたことを喜んでいるのである。
そもそも、私にとって新発見の好物が一番の目的であった。ここにすばらしさを知った曲のアルバムを入手したという事は、数えきれないぐらいあって、感謝してきたのである。さて、今年はどうであったであろうか・・・・・
(Tracklist)
1.Nightfall / Diego Imbert, Enrico Pieranunzi, Andre Ceccarelli
2.Den Vilsna Tomten / Tingvall Trio
3.Home / Joonas Haavisto
4.Solveigs Sang/ Henrik Gunde, Jesper Bodilsen & Morten Lund
5.Neena / Michel Bisceglia Trio
6.Grateful / Soren Bebe Trio
7.Room 93 / Marc Martin Trio
8.Overnight / Marco Frattini
9.Kansas Skies / Walter Lang Trio
10.Elle / Colin Vallon Trio
11.Deep Blue / Colin Stranahan, Glenn Zaleski, Rick Rosato
12.Valsa Para Julieta / Alexandre Vianna Trio
13.Au fil et a mesure / Dominique Fillon Augmented Trio
以上の13曲、それぞれ異なったミュージシャンのリリースされたアルバムからの選曲であったが、近年は少々古いものも入ることも多くなった。とにかく、Audio的に注目のもの、Balladもの、Vocalものなどは、それらのシリーズが並行して動いていることや、ここ2000年以降、コロナ禍でアルバム作成が低調であったこと、又アルバム作成がCDとしてリリースしないことも増えてきたことなど、彼にとってもこのところは選曲対象が減少しているのではないかと推測するのである。
そんなことなどで、なんと今回の13曲中7曲という半分以上が、実は私の持っているアルバムからの曲であった。最も趣向が似ているのであるからあり得ることであろうが、新発見を目的にしている私にとっては、ちょっと空しかったのである。
当然注目曲は、おなじみのTingvall Trio (M2.), Joonas Haavisto (M3.), Michel Bisceglia (M5.), Soren Bebe Trio (M6.), Colin Vallon Trio (M10.)のこの流れの常連ですね。私は既に聴いているものであって、寺島氏と共通であることを実感した。今回はそれが非常に多かったところだ。これらは当然、美旋律、哀愁などの世界でお勧めアルバムである。
さて、私がこのアルバムで新たに注目できたのは、まずスペインのMarc Martin Troの陰影感の曲(M7."Room 93" from 「Roaming」(2017, 上左))、イタリアのドラマーのトリオの Marco Frattiniの静の世界(M8."Overnight" from 「Empty Music」(2022,上中央))、 フランスのDominique Fillon Augmented Trio の聴くほどに味の出る曲(M13."Au fil et a mesure" from 「Awiting Ship」(2021,上右) ) 等であった。これらのアルバムはまずはサブスク・ストリーミングで既に試聴はしているが、更にアプローチしてみたいと思ったところだ。
今年のニューアルバムからは、ここでも既に私は取り上げた寺島氏自身のレーベルのアルバムHenrik Gunde Trio『MOODS』(TYR-1127)のみであった。毎年のことではあるが年の締めくくりにふさわしい寺島靖国氏の『Jazz Bar 2024』を取り上げてみた。
(評価)
□ 選曲 : 90/100
□ 録音 : 87/100 (全体的に)
(試聴) Marc Martin trio "ROOM93"
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