2021年2月22日 (月)

イーグルス Eagles 「Largo 1977」

全盛期のライブ収録映像盤

<Rock>
Eagles 「Largo 1977」
DVD (Pro-Shot)
Live at Capital Centre, Largo, MD, USA 21st March 1977

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Glenn Frey : G, Key, Voc
Don Felder : G, Voc
Joe Walsh : G, Key, Voc
Randy Meisner : B, Voc
Don Henley : Drum, Voc

PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.52min.

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  最近ブートを漁っていると、なかなか実益多い。このところのELP、Renaissanceに続いて映像モノの第三弾はイーグルス。
 カントリー・ロックのリンダ・ロンシュタットのバツク・バンドから発展して生まれたこのイーグルスEaglesが興味深い。とにかく私が気に入ったのは、全盛期の1977年頃だ。76年にジョー・ウォルシュ加入で話題沸騰の時。そして曲は何と言っても"Hotel California"である。勿論彼らの1971年からのスタートのイメージはカントリー・ロック的な範ちゅうだが、1976年末リリースされたアルバム『Hotel California』(P-10221Y)、勿論その色があってもこの曲は何と言ってもギター・ワークの素晴らしさだった。
(上左 : 今もそのまま持っている当時76年のLP盤。 上右 : 2003年リリースのDVD Audio盤、5.1サラウンド盤である)

57a9c58ffa9957ed8721092382cd3784   ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュ(→)によるギター・リフが巧みで、二人のツイン・ギターの素晴らしさ、又イントロなどの12弦ギターのアルペジオ・ワークなど魅力で、メロディーには美しさと共にどこか退廃的な世界があって聴くポイントは多い。その曲調の退廃的なところは、又ドン・ヘンリーのハスキー・ヴォイスと歌詞が更にそれを印象づけた。とにかくロック史上屈指のギター・ソロといわれるドン・フェルダーのギターソロを手に取るように見れるのもこの映像盤の価値である。

 一方この曲の評価は、社会が60年代以降未来指向に流れてきたものが、この70年代後半になると、いつしか退廃ムードに包まれ始め、それをホテルを舞台にして描き警告したところにある。彼らのロック・ミュージックの姿勢が、社会の問題意識に向かい合っているものを失っていないと、評価を高めたのだった。このこともあって、私はイーグルスを愛するバンドに入れた。

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 このDVDは、そんな当時のイーグルスの北米公演「1977年3月21日ラーゴ公演」をプロショットで納めたものだ。この映像は彼らを納めた代表的なモノで、オフィシャルにも「ヒストリーDVD」として過去に公開されていたもの。それをしっかりとしたマスターから纏め上げたものがこれだ。そもそもイーグルスのオフィシャル映像は再結成1994年『hell freezes over』(MVLG-18/1994)が最初であって、私は当時流行のLD盤で持っているモノだ。この1977年映像となると、とても見ると言うことは考えられなかった。こうして当時は見れるとも思わなかった映像を満喫できるのも今日の幸せなのである。

Glenn-frey1w (Tracklist)

1. Intro
2. Hotel California          (Don H.)
3. New Kid In Town        (Glenn)
4. Take It To The Limit  (Randy)
5. One Of These Nights  (Don H.)
6. Lyin' Eyes                   (Glenn)
7. Rocky Mountain Way   (Joe) 
8. Best Of My Love          (Don H.)
9. Take It Easy                (Glenn) 
             ()内はリード・ヴォーカル
(Bonus Track) 
10. Hotel California -PV 1976

 収録曲をみると、全曲シングル・リリースしてヒットしたものだ。まさにヒット・パレード。メンバーはBernie Leadonに変わって、Joe Walsh(フェンダー・テレキャスター)が入った直後で、既に彼の明るさでDon Felder(ギブソン・レスポール)とも良いツイン・ギター構成で、ハモってみせてナイスだ。

Dhenleyhcdrumsw  当時のライブの演奏順と思われるが、冒頭からM2."Hotel California"で圧倒される。この曲はギタリストDon Felderの曲で、Don Henley(→)が歌詞を付けたモノ。後にクレジットでもめた経過があるが、Grenn Freyが入り込んだのが原因か。このようにメガ・ヒットの曲の扱いからお互い不信感が生まれ解散に追い込まれたのだった。1994年再結成したが結局2000年にDon Felderは追い出される。そんなことからこの当時のモノは貴重。
   そしてGrenn FreyのヴォーカルでM3."New Kid In Town "と、なんとも快調。
   そして翌年脱退することになるオリジナル・メンバーのRandy Meisner の高音ヴォーカルM4."Take It To The Limit "と続く。この後は現在のTimothy B Schmitに変わるので、この映像は貴重。
   更に見物はJoe Walshのヘビー・ロック・ナンバー"Rocky Mountain Way"(M7)だ。この一連の曲では異色で、当時のロックの良さを堪能出来る。

 やはり全盛期の映像は彼らの演奏も充実しているし、バンド・メンバーの連携も快調で気持ちがいい。
 このような映像に見るライブ像はやはり貴重である。

(評価)
□ 選曲・演奏   :  90/100
□ 映像・サウンド :  75/100 (カラー、ステレオ録音を当時のモノとして評価)

(視聴)
(1977年)

*

(1998年再結成)

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2021年2月17日 (水)

シャイ・マエストロ Shai Maestro 「Human」

イスラエル風民族音楽的なムードを生かしつつ・・・
実は「彼の思い」が込められたアルバムだ
・・コンテンポラリー度、リリカル度、スリリング度が適度で素晴らしい

<Jazz>

Shai Maestro 「Human」
ECM / Germ. / ECM 2688 089 0670 / 2021

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Shai Maestro シャイ・マエストロ (piano)
Jorge Roeder ホルヘ・ローダー (double bass except 04, 07)
Ofri Nehemya オフリ・ネヘミヤ (drums except 04, 07)

Philip Dizack フィリップ・ディザック (trumpet except 06, 07, 08, 11)

Recorded Feb. 2020, Sudio Studios La Buissonne, Pernes-Les-Fontaines

  ECMの前作『The Dream Thief』(ECM 2616 6771112/2018)にてその素晴らしさを味わったNYシーンで活躍するイスラエル出身の人気急上昇ピアニスト:シャイ・マエストロShai Maestro(1987年イスラエル生まれ)の、ECMでの2作目、前作と同じ彼のトリオに、新たにトランペットが加わってのカルテット作品となっている。

Shaimaestrow  彼のピアノの素晴らしさは、実はAvishai Cohen Trio で気に入ってから注目はしているところだが、ここに来てECMからのリリース2枚目で、私にとっては尚更興味津々と言うところなのである。
  
  彼は、なんと8歳の時にオスカー・ピーターソンのアルバムを聴いてジャズに開眼したとか。そして19歳の若さででベース奏者アヴィシャイ・コーエンのバンドに抜擢されたのだった。2010年に自身のユニットを結成。以来活動を共にし、これまでリリースした4枚のリーダー・アルバム全てに参加するホルヘ・ローダー(b)と、同郷イスラエルのドラマー、オフリ・ネヘミヤ(ds)に、本作では、米国人トランぺッター、フィリップ・ディザックを加えている。

(Tracklist)

01. Time
02. Mystery And Illusions
03. Human
04. GG (tp & p duo)
05. The Thief's Dream
06. Hank And Charlie (p-b-ds trio)
07. Compassion (solo piano)
08. Prayer (p-b-ds trio)
09. They Went To War
10. In A Sentimental Mood *
11. Ima (For Talma Maestro) (p-b-ds trio)

*印以外Shai Maestroのオリジナル曲

 手頃にエスニック風の味付けがある独自のフォーク・ジャズ的と言うかイスラエル民族音楽的トラッド風と言うか、そんなムードが滲み出ているが、なんとなく引きつけられる世界を持っている。
 しっとりとした潤いと透明感溢れるピアノの音が、流れるように演じられ、又一方余韻をもって耽美的・哀愁的情景を描いてくれる。そして独特の異国情緒は今回はトランペツトの響きによって描いているのが特徴。カルテット演奏はドラマティックな展開も織り込んでいてジャズとしての味付けはちゃんとみせる。アルバムを通して聴いてじっくり感動が沸いてくる。

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 もともと私の好みからは、ビアノ・トリオ+トランペットというのは恐らく否定的な方向に感ずる処だ。確かにM4." GG", M5."The Thief's Dream"あたりは、ピアノの美しさがトランペットによって消されてしまう感覚になる。しかし救いは、ECM盤ということで想像していたことだが、全体に寧ろ優しく歌うトランペットであったことだ。
 M2."Mystery And Illusions", M3." Human"で意外だったのは、イスラエル的エスニック風の味付けがやはりあるが、それはなんとトランペットの響きから一番感じられるところなのだ。そこがこのカルテットとした味噌なのかも知れない。
 しかし中盤に入って、M6."Hank And Charlie " M7."Compassion ", M8."Prayer "はピアノ・トリオのみの演奏で、ようやく美しいピアノ、ベースの休まる音、余韻を大切にしたピアノの音から沈着な世界に美しさが漲る(M7はピアノ・ソロで情緒豊か)。又M6.は故ハンク・ジョーンズとチャーリー・ヘイデンの音楽にトリオが敬意を表している。このピアノ・トリオ・スタイルが私好みの世界のだ。
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 ところが、M9."They Went To War" が注目曲、ここでトランペットの素晴らしさに浸れる。"彼らは戦争に行った"・・その苦しさ、哀しさが、静かに演じられるトランペットの音に哀しく訴える心が感じられ感動。これがマエストロの描きたい一つの世界とみた。
 そしてM11." Ima"でこのアルバムは納められるが、そこには、心のよりどころとなる世界を見事にペットなしのマエストロ・トリオが描くのである。ここには民族的ムードは無く、世界に普遍的に未来志向のムードで響く。

 なかなか、したたかなアルバムである。中盤から後半で完全に虜にされた。やはり前作と同様、このシャイ・マエストロとは、ただ者で無い。とにかくスリリングなところも魅せながらコンテンポラリーな味付けがあったり、リリカルな世界があったり、哀愁度と、それが手頃に納める技はお見事と言いたい。そして彼の思いが込められていることに感動した。推薦盤だ。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□ 録音   :  85/100


(視聴)

*

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2021年2月13日 (土)

ルネッサンス Renaissance 「Sight and Sound in Concert」

涙ものの映像のパーフェクト収録盤

<progressive Rock>

Renaissance 「Sight and Sound in Concert」
Live at Golders Green Hippodrome, London, UK 8th Jan.1977
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 70min.

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Annie Haslam : Vocals
Jon Camp : Bass, Vocal
Michael Dunford : Guitars, Vocal
John Tout : Keyboards, Vocal
Terence Sullivan : Drums, Percussion, Vocal

  かって我々がロックを愛し聴き入った1960-1970年代というのは、まずは英国はじめ欧米の彼らのライブ映像なるものは殆ど見ることが出来なかった。そこでアルバムに載っていた写真や雑誌などのミュージシャンの写真を見ながら、彼らの演奏を頭に浮かべ聴いていたものである。そもそもアルバムすら手にすることが難しかった事があったぐらいだから。
 ここに取上げたクラシックの要素を取り入れたプログレッシブ・フォーク・ロツクのルネッサンスRenaissanceの映像なんて考えてもみないところであった。とにもかくにもアニー・ハズラム (右下)の美しい声にうっとりしながら、聴き入ったものである。
 ところがここ10年の世界の情勢の変化は信じられないところに、このルネツサンスの1970年代ライブ映像を良好なプロショットものでYouTubeにより見ることが出来たのである。まあこんなことも一つの衝撃であった。私自身はもうこの何十年と彼らのアルバムからは離れて別の世界に現をぬかしていた訳であるが、こんな映像の出現で、昔をつい先日のように思い起こすのであった。

 そうこうして数年経ったわけであるが、最近ブート界を少々覗いていると、なんとその衝撃映像のパーフェクト盤が手に入るのではないか。こうして今日のブート映像によって、40年以上前のステージを遅まきながら見ているのである。

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1.Introduction
2.Carpet Of The Sun
3.Mother Russia
4.Can You Hear Me ?
5.Ocean Gypsy
6.Running Hard
7.Band Introduction
8.Touching Once
9.Prologue

 

 これは丁度私が最もお気に入りだったアルバム『Novella お伽噺』(1977)のリリース時のもので、上のような演ずる曲は注目の"Can You Hear Me ?"があり、アルバム3th『プロローグ』から7th『お伽噺』までの五枚のアルバムから選ばれている。1977年英国の音楽番組「Sight & Sound」用に収録されたもので、ロンドンBBCライブによる70分のパフォーマンスがプロショット映像でこうして観れるのだ。当時このようなものが観れたら日本中大騒ぎだったと想像に難くない。

   このRenaissanceというバンドは5人の構成で、アニー・ハズラムという女性ヴォーカルを前面に出して、彼女のクリスタル・ヴォイスが神秘的な香りを漂わせて聴く者を圧倒したわけだ。しかしのメンバーは3rdアルバム『Prologue』(1972)からで、1、2ndアルバムとは、全くの別グループ・メンバーで演じているのだ。
 本来の元メンバー(YARDBIRDSのキース・レルフそしてジム・マッカーティのリーダー・バンド)の一部はこの時から「ILLUSION」というバンドとなっている。しかし我々が日本にいて知ったバンドは、実はこの二代目の方の(新)Renaissance からのメンバーもの (下)であったのである。従ってここに収録されている曲も人気を博した二代目による3rdアルバムからのものである。

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  いずれにしてもリーダーであるマイケル・ダンフォード(G)(上左)のオリジナル曲を中心に展開されており、彼は総入れ替えした前期バンド・メンバーとの関係と彼自身が放送作家へと歩み始めていた時で、表には出ずバックにいた頃(3rd, 4thアルバム)の表舞台のメンバーと共に、晴れてこうして堂々と演ずるライブは頼もしい姿だ。

 当然注目曲はM4."Can You Hear Me ?  私の声が聴こえますか?"だが、アルバムでは、オーケストラ、混声合唱団とクラシック風の展開、そしてアニーのクリスタル・ヴォイスが物語調に流れる。その美しさと日本に無い異国の神秘を感じつつ聴いたものだった。ここではそのオーケストラ、混声合唱団は無いが、ジョン・タウトのキー・ボード、マイケル・ダンフォードのカッティング演奏のギター、ジョン・タウトのベースがしっかりその演ずる姿と音を聴きとることが出来、むしろアニーのヴォーカルの占める位置も多くなり、ドラムスのテレンス・サリバンが頑張っている様子も解って楽しい。アルバムでのこの後に続く曲"The Sisters"の美しさと、"Midas Man"のダイナミックな演奏が無いのが寂しいくらいである。
861749098963d86e351502bf14b786a6  『運命のカード』(1975)からのM3."Mother Rssia "は、ジョン・タウトのピアノとダンフォードのギターが美しい。そしてM5."Running Hard"では、ピアノ・プレイがたっぷり聴くことが出来る。
 こうしてみているとアニーはあまり歌っているときは表情を変えずに、ややクールな出で立ちだったことも解る。


   そして近年のアニーの活動等には殆ど接していなかった私であり、ルネッサンスというのは、1970年代の"私の想い出のバンド"であって、そのことだけで満足してきたのである。このライブ映像はそれを十二分に思い起こさせてくれるものであった。当時何故あれ程このバンドに魅力を感じて心が躍ったのか、そして一方心の安らぎを感じたのかは解らないが、40年経ってみてもこうして当時の心が蘇り楽しめることは嬉しいことだ。
 

(評価)
□ 選曲・演奏   90/100   
□ 映像・音質   85/100
 
(視聴)   

 Renaissance "Can You Hear Me ?" (1977)

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2021年2月 8日 (月)

フェイツ・ウォーニング Fates Warning 「LONG DAY GOOD NIGHT」

メタル色を失わずに、希望と不安の世界を描く
・・・・遂に13枚目のアルバム登場

 

<Progressive Metal Rock>

Fates Warning 「LONG DAY GOOD NIGHT」
Metal Blade / Import / MTB1573522 / 2020

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レイ・アルダー (Ray Alder) - Vocals(1987年− ) 
ジム・マテオス (Jim Matheos) - Guitars (1982年− ) 
ジョーイ・ヴェラ (Joey Vera) - Bass (1996年− ) 
ボビー・ジャーゾンベク (Bobby Jarzombek) - Drums (2007年− ) 
(Support)
マイケル・アブドウ (Michael Abdow) - Guitar (2013年、2016年− )

 

  久々の登場で、少々興奮気味だがプログレッシブ・メタルの元祖Fates Warningの13枚目のスタジオ・アルバムの登場だ。彼らは1984年デビューからオリジナル・メンバーはジム・マテオスのみであるがバンドとして35年以上のキャリアを誇る。そしてレイ・アルダー加入時のアルバム『NO EXIT』(1988)(下左)に惚れ込んで以来の付き合いは深くなった。一世を風靡したドリーム・シアター、クイーンズライクに影響を及ぼした彼らの作風は、あのプログレッシブ・ロックが崩壊した時に、ロック界の一時期を守ったとも言える。
   ここで取上げるのも、2014年『Darkness in a Differrent Light』以来の7年ぶりだ。
 その彼らの復活の第二弾、バンドの頭脳ジム・マテオス(G)とレイ・アルダー(Vo)によって造られたという13曲。かってのマーク・ゾンダー(Dr)の存在も大きかったと思われるプログレ色がここでどうなのかというのも興味があるが、それにつけてもアーマード・セイントのジョーイ・ヴェラ(b/1997年から)と元ライオットのボビー・ジャーゾンベク(dr/2007年から)という布陣も期待度を高める。

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   私的には残念であるのは、この復活前もそうであったが、かってドリーム・シアターのキーボード・ケビン・ムーアの加盟した頃(アルバム『Pleasant Shade Of Gray』(上中央)、『DISCONNECTED』(上右))のサウンドが消えていることである。実はこの頃が最も懐かしいのだが、このアルバムもキーボード・レスでのバンド・スタイルを貫いていて・・・現行バンドとしては、それは意識外のようだ。

(Tracklist)

1.The Destination Onward
2.Shuttered World
3.Alone We Walk
4.Now Comes the Rain
5.The Way Home
6.Under the Sun
7.Scars
8.Begin Again
9.When Snow Falls
10.Liar
11.Glass Houses
12.The Longest Shadow of the Day
13.The Last Song

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 いずれにしても、複雑なリズムを好むプログレッシブ・ロック、そしてそこに宿る内省的な精神性はやはり感じられ、しかもヘヴィメタルの圧倒的パワフルな演奏も十分存在していた。まさにプログレッシブ・テクニカル(パワー)・メタルだ。そして中期後期のややダークなイメージもあって、所謂フェイツ・ウォーニングというのはそのまま存在していたのは嬉しい。
800pxfates_warning1w  しかしあの何処までも伸びるレイ(→)のハイトーンのヴォーカルは、やはり後退していたのはやむを得ないところである。それは『FWX』(2004)でもみられていたことだから。
  このバンドは、2016年、プログレッシブ・メタルの色づけが決定的となった3rdアルバム『 Awaken the Guardian』(1986)の発売30周年を記念して、当時のメンバーが集結し同作の完全ライブを再現。これがリユニオンだった。
 私の場合は、マーク・ゾンダーが加入したアルバム『Perfect Symmetry 』(1989)以降のプログレッシブ・ロックの要素がさらに強まった頃の技巧派のスタイルに魅力を感じてきていたのだが、そのあたりとの比較ではヘヴィメタル要素は、このアルバムでは寧ろ復活しているところもある。

 M1."The Destination Onward"では静かな深遠なるスタート、そして重量感のあるドラムス、泣きに近いギター、情感のヴォーカル。中盤以降にハイテンポに転調、フェイツ・ウォーニングの特徴を十分示してくれている。
 M2.M3.あたりは、ヘビーメメタル色をみせる。
 M5."The Way Home"は、聴き所の曲。バラード・ヴォーカルで聴かせ、ジャジーなギター、更に変調してメリハリのあるロックへ。最後はヘビー・ロックの要素を入れて終わるというナイスな曲。
 M6."Under The Sun"は珍しくストリングスの調べ、ゆったりとしたロック、そしてアコギ、エレキが心に響く。
 M9."When Snow Falls"は、マテオス・レイ・コンビの曲だが、メンバー交代の色づけ曲、このアルバムではロック・アルバムとして良いムードで聴かせる。

1280pxfates_warning2w   私の一押しの曲はマテオス(→)の曲・歌詞の M12."The Longest Shadow of the Day"ですね。11分25秒の長大曲であるが、静かなギターで始まり、どちらかというとオルタネティブ・ジャズのパターン。ほぼインスト曲でスタート。中盤は次第に疾走パターンに変調し、再び静かなスローテンポの世界。そして6分あたり経過してレイの訴えるようなヴォーカル、やや泣きに近いギターと要素がたっぷり。次第にテンポは上がってロック世界を築く。プログレ・メタルの面目躍如。

  最後のM13."The Last Song"は、美しく優しいアコギでスタート、レイのヴォーカルも語るような落ち着きがあり、絶叫は無く一つの信念を得たかの如き、どこか落ち着いた世界。昔、ロジャー・ウォーターズがよくやった手法ですね。

 どちらかというとやや暗めの世界。曲は多彩なロックのパターンに支えられ、変調も加味して飽きさせない。時に襲ってくるヘビー・メタルなサウンドがアルバム全体のメリハリに貢献し、プログレッシブな要素をちらつかせながらの精神的な内面の世界に迫る曲構成。しかし曲の質感としてキーボード・レスが少々寂しく、プログレ色がやや後退している。
 又、ツアーギタリストのMike Abdowがソロパートでゲスト出演して味付けに厚みをだし、M9."When Snow Falls"ではPORCUPINE TREEのGavin Harrison(Dr)がゲスト出演、これもちゃんと曲の色合いに変化と味わいを付けていて、単調さを回避している。
 久々に、プログレ・メタルの世界が、高度化した演奏と曲の良さで堪能出来るアルバムに仕上がっている。

( 参考 Fates Warning : Discography)

『ナイト・オン・ブロッケン』 - Night on Bröcken (1984年)
『スペクター・ウィズイン』 - The Spectre Within (1985年)
『アウェイクン・ザ・ガーディアン』 - Awaken the Guardian (1986年)
『ノー・イグジット』 - No Exit (1988年)
『パーフェクト・シンメトリー』 - Perfect Symmetry (1989年)
『パラレルズ』 - Parallels (1991年) 
『インサイド・アウト』 - Inside Out (1994年)
『プレザント・シェイド・オブ・グレイ』 - A Pleasant Shade of Gray (1997年)
『ディスコネクテッド』 - Disconnected (2000年)
『FWX』 - FWX (2004年)
『Darkness in a Different Light』 (2013年)
『セオリーズ・オヴ・フライト』 - Theories of Flight (2016年)
『ロングデイ・グッドナイト』- Long Day Good Night (2020年)

 
(評価)
□ 曲・演奏・ヴォーカル  88/100
□ 演奏          85/100

(視聴)


*

 

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2021年2月 3日 (水)

Sony のやる気は半端でなかった-「Sony α1」の登場

フルサイズ・ミラーレス機の創始者としての意地か
・・・遂に出たフラグシップ機「Sony α1」

[カメラの話]

Sony1w  ソニーのカメラがここまで発展してきたのかと実は驚かされている。
 ここに来て、恐るべき高性能機「Sony α1」(→)の登場となったのである。
 
 なんと、Sonyミラーレス・フルサイズ一眼カメラの「α9Ⅱ」の連写等の性能グレード・アップ、そして「α7RⅣ」の高画素の取り込み、「α7SⅢのダイナミックレンジの高性能、ソニー機自慢のトリオの性能を取り込んでの性能アップを図っての新フラグシップ・カメラが登場したのである。
 「α7RⅣ」に近づけた5010万画素メモリー内蔵フルサイズ積層型CMOSイメージセンサー、しかもこの5010万画素での秒間30コマ撮影をAF/AE追従高速連写可能とし、フリカーレス使えないモノを使える工夫、フラッシュがつかえないものを1/200でも使えるとし、更に動態がどうしても歪むところをアンチディストーションシャッターによる改善、そして人物、動物、鳥にも対応したリアル・タイム瞳AFと、信じられない高性能となっている。
 更に、なんと8K画像にも着手し、8K30Pの動画性能を載せた。そして驚きは、スマホとHDMIにより繋いで、画像モニターとして使いながら画像処理して即離れた地に送信できるという離れ業。
 又、ファインダーも944万ドットの高精細OLEDによる高機能EVF、手ぶれ防止は5.5段の補正効果実現した。

  既にここ数年、フルサイズ・ミラーレス機にカメラ界は振り回され、一眼レフ機は大きい上に機能的にもミラーレス機の便利さからは低迷。遅まきながらニコン、キャノンはそろって、この分野にエネルギーを注いだが、ソニーはまたしても一歩先を目指しているのである。しかも相変わらずのコンパクト・ボディーで他社の追従を許さない。私が目下使用している「α7RⅣ」の高画素機から見ても、これだけの機能を盛り込みながらも、そのカメラ本体のコンパクトさは負けておらず、これも脅威である。

 思い返せば、そもそもソニー・カメラに私が期待したのは、あのコニカ・ミノルタのカメラ部門がソニーに移管され発展させることになった時からである。
Dscrx1w  そして次の注目は2012年の「Sony RX-1」(→)が発表されたときだ。なんとAPS-Cサイズが標準化されつつあるときに、35mmフィルム・サイズの所謂フルサイズのセンサーによるコンパクトなミラーレスカメラの出現だ。明らかに大型されたセンサーと、それにも増してレンズの性能が、かっての35mmフィルム感覚で使えるところが、昔からのカメラ愛好家にとってはたまらない。つまりフルサイズセンサーと大口径F2レンズを搭載しながら、手のひらにのる驚異的なコンパクトサイズを実現させたのだった。
 ただ、これに私が飛びつかなかったのは、残念ながらレンズ交換機能の無い事であり、しかし当時必ず交換レンズ対応機が出現することを信じ、待機したのである。

 

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 そしてなんと2013年10月、ついにソニーはフルサイズでミラーレスのコンパクトにしてレンズ交換可能なSony α7」(上)を発表、遂に時は来たと、私は直ちに購入に走った。まだ当時、カメラの二大メーカーのニコン、キャノンは全く興味無しの相変わらずの大きな一眼レフ機に主体をおいていた。しかしそのソニーのなみなみならない努力により、遂にコンパクトなミラーレス機で一眼レフを機能的に対等の領域に入ってきたので、ニコン、キャノンを驚かせたのである。
 一眼レフと言うファインダー構造から脱して、センサーにて感知した画像を見ながら撮影するというEVFによるファインダーの採用、これも私は当時からデジタルカメラにおいて必ず有利になると踏んでいた。高価な無駄なミラー構造そしてプリズム構造を廃してEVFによるところは必ずや光学ファインダーに近づくことを信じていた。当時まだ十分とは言えないが、機能的に耐えられるところまでに発展させたソニーは、堂々とミラーレス機として登場させたのであった。
 更に、レンズ交換可能機であることから、しかも新開発のEマウントの情報公開したため、マウント・アダプターの生産が活発化し、それにより過去の遺産のレンズをメーカーを問わず使用可能としたことだ。私にとっては当時ライカ、ツァイス等の遺産を持ち合わせていたため、それがこのカメラを手にした大きな要因でもあった。

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 そして、このソニー機をその後は、改良・高機能を繰り返してきており、「α7Ⅲ」(上左)に買い換え、更に現在は最も高画素なローパスフィルターレスのα7RⅣ」(上右)の購入により使用している。特に「α7RⅣ」の35mmのフルサイズにての6100万画素という高画素機というのは、昔のフィルム大型カメラも画像の繊細さに於いて遙かに超えてしまい信じられないところにある。
 又、おかげでアダプターの高機能(スマート化)により、目下ライカMマウント・レンズをオートフォーカスにて使用したり、あのコンタックスのカール・ツァイス・レンズもオートフォーカスで使用している。かって私にとって主流であったニコンレンズも使用可能と、楽しみが大きい。

 こうしてデジタルカメラの最も重要なる一つの潮流であるフルサイズ・ミラーレス機は、既に各社のメイン器機になりつつある。一眼レフ愛好家も既にこのカメラを手にしないものは居ないと言って良い程浸透した。私も実はニコンの一眼レフ機はこのところあまり出番が無くなっているという実情だ。
 そしてこうした「Sony α1」高機能機が登場して、この機種の創始者であるソニーの心意気を感ずることが出来たし、これからもこれに甘んずること無く各社が頑張って行くところであろう。特に今やニコンはやや置いて行かれ"ソニー・キャノン戦争"と言われるこの現象も、ユーザーからすれば発展に寄与することになるのだろうと歓迎である。日本のカメラもまだまだ世界的に捨てたモノで無いということで喜んでいる。

(参考)

 

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2021年1月30日 (土)

ヤン・ハルベック Jan Harbeck Quartet 「THE SOUND THE RHYTHM」

サブトーンで聴かす味付けとピアノ・トリオとのカルテットが聴きどころ


<Jazz>
Jan Harbeck Quartet 「THE SOUND THE RHYTHM」
stunt Records / IMPORT / STUCD 19022 / 2019

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Jan Harbeck (tenor sax)
Henrik Gunde (piano)
Eske Nørrelykke (bass)
Anders Holm(drums/Tr.1.2.4.5.6.7.)
Morten Ærø (drums/Tr.3.5.7.8.9.)
+ Jan zum Vohrde (alto sax/Tr.8)

2018年11月7日-8日、ヴィレッジ・レコーディング(コペンハーゲン)録音

  私はどちらかというとうるさいトランペット、サックス等は敬遠派なんでして、何と言ってもピアノ派なんです。しかしジャズにおいてトランペット、サックス等は重要な役割を果たしている事実は知っている。特にトランペットはミュートを効かしたものなら愛するものも多いと思っているし、サックスはサブトーン奏法での味が欲しいと思っているのだ。
 ところが、先日我が友人が・・・・
   そんな私がHarry Allenの『DEAR OLD STOCKHORM』(VHCD-78308/ 2017)(下左)を聴いている事を知って、それならばこのデンマークのヤン・ハルベックJan Harbeck(1975年デンマーク生まれ。ベン・ウェブスター賞受賞) を聴いたらどうかと言うのである。そこでヤンのアルバム『IN THE STILL OF THE NIGHT』(STUCD 08202/2008)(下右)と、今日話題にするこの『THE SOUND THE RHYTHM』(2019)を共に目下聴いているのである。

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 ハリーもヤンも私が聴くのはピアノ・トリオとのカルテット・スタイルをとっていることが重要で、ピアノの描くトリオ世界を尊重しつつサブトーンによるサックスの味付けがあるというスタイルが寄りつける大きなポイントなのだ。
 ハリーの『DEAR OLD STOCKHOLM』はVENUS Recordsで若干録音がうるさいのだが、彼はピアニストのウラジミール・シャフラノフの演奏を尊重しつつ両者共存で哀感すら感ずる世界に誘導してくれるところで好きなんですね。それもストックホルムでの演奏というのが又効果を上げているのかも知れない。

 さてそこで、本題に入るが、このヤンの近作に焦点を当てて考察してみたい (これもコペンハーゲン録音)。

 (Tracklist)

1.Lighter Shades *
2.Johnny Come Lately
3.Tangorrus Field *
4.Poutin'
5.Woke Up Clipped
6.Blues Crescendo *
7.Shorty Gull
8.I'd Be There
9.Tail That Rhythm *
10.Circles *

*印 : Jan Harbeck のオリジナル曲

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 ヤンのTSの音は、やはりハリ-の手慣れた洗練さのある音に比べると、サブトーンの効果ある刺激の和らいだ広がりがあり、むしろ図太さがありますね。ここで演ずるは、ベン・ウェブスターの4曲と彼のオリシジナルが5曲。
 Henrik Gundeのピアノ、Eske Norrelykkeのベースはこのところ不変のカルテット。私はどうしてもこのようなカルテットは、TS+ピアノ・トリオとして聴いてしまうところがあるが、そうして聴いても十分味わえる美しいピアノ・トリオも魅力。

 M1."Lighter Shades"からバラード曲、そしてヤンのサブトーンでうるささは抑えられているが重量感のあるサックスが唸る。しかし全体に優しく旋律を奏でる。中盤からピアノに旋律に変わり、アドリブ役と変わりところも彼の味が出る。こうしたやや哀感のあるところは良いですね。
 M2."Johnny Come Lately"、M4."Poutin'"、M5."Woke Up Clipped"のスウィングに優しく相づちを打ちながらの展開。ピアノ・トリオの良さも生かしてこれも優しい。
Janharbeckw  M3."Tangorrus Field "の彼のオリジナル曲のバラード演奏がなかなか聴き所、いいですね。優しく状況を支える演奏がピアノの響きを又美しくしている。
   M6."Blues Crescendo " イタリア語にブルースを付けた奇妙な取り合わせ、リズムに乗ってのジャージーな盛り上がり、このタイプはお任せだ。
   M8."I'd Be There"  ASのドラムスそしてピアノとの掛け合い、ジャズの面白さだろうが、私は特に興味を持たない。
   M9."Tail That Rhythm"  淡々としたリズム隊にTSの味付けが聴きどころ。ベースの軽快なリズムにソフトに乗ってゆく軽快なサックス。続いてピアノの旋律展開がジャズ・インプロを誘導してドラムスが健闘し、カルテットとしての総決算的曲。
 M10."Circles " 最後の締めくくりはバラード演奏、ピアノと共にサックスのブツブツ音混じりの美しさがしっとりと襲ってくる。

 やっぱりジャズ愛好家でも好みはいろいろだが、私にとっての彼の魅力はサブトーンにての独特の重量感をバラードで、哀感もって流れるところですね。このアルバムでも十分聴きとれて納得。
 そして追加だが、2008年のアルバム『IN THE STILL OF THE NIGHT』の方は、スタンダード曲集だが、あの誰もが知る"Ptite Fleur"を代表にバラードの美しさがたっぷり聴けて、これもなかなかのものだった。

(評価)
□ 曲・演奏    90/100
□ 録音      85/100

(視聴)

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2021年1月25日 (月)

ニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Doky 「Improvisation On Life」

ジャズ・ピアニストにしてコンポーザーとしての一つの集大成か


<Jazz>

Niels Lan Doky 「Improvisation On Life」
Rambling Records / JPN / RBCP3188 / 2017

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Niels Lan Doky : piano
Niclas Bardeleben : Drums
Tobias Dall :  Bass

with Debbie Sledge (of Sister Sledge) on Vocals for “Kiss” and Amanda Thomsen on Vocals for “Kærlighed og Krig” (Love and War)

Nielslandokyb   北欧のJAZZシーンでは中堅的存在であるデンマークのピアニスト、ニルス・ラン・ドーキーNiels Lan Doky (→)。ヨーロピアン・ジャズ・ピアノの知名度の高い群に入ってはいるが、どうも私にとっては今ひとつインパクトに欠けていたせいか、過去に於いてそのちょっと変わった名前をどこかで時に見る程度で来てしまっていた。

 昨年末の寺島靖国の人気コンピレーション・アルバムの『JAZZ BAR 2020』に、久々に登場した彼の曲"The Miracle of You"を聴いて、やっぱり少々ピアノの音が軽いが、流麗な演奏には魅力があり、この際一度アプローチしたくなったと言うところだ。
 そこで一気に5枚のアルバムを聴いてみたというところで、ここに最も最新のアルバムを取上げることにした。

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 彼の名義となるピアノ・トリオはメンバーは変わってきているが、かっての"Trio Montmartre" の2001年からの三作『Cafe En Plein Air (カフェ・モンマルトルからの眺め)』(上左)、『Casa Dolce Casa (ローマの想い出)』(上中央)、『SPAIN』(上右) (このトリオはパリのジャズ・ミュージシャンによる日本製作の為のレコーディング・プロジェクトで、ベーシストは、フランソワ・ムータンそして後二枚はラース・ダニエルソンが担当している。ドラムスはジェフ・ボードロー)は、かなり聴きやすいアルバム。

588  そして2011年のアルバム『HUMAN BEHAVIOUR』(BRO 011)(→)、そしてここに取上げた2017年の『Improvisation On Life』と聴いてくると、やはりそこには美旋律を愛するピアニストの心は常に宿っていて、トリオとしてのジャズの醍醐味を追求しつつ、我々の心に響くところは十分の存在だ。特にTrio Montmartreは、トリオ・ジヤズを極めると言うことより、日本向けにヨーロツパの地名に馴染んだ名曲を取上げての優しい演奏になっている。

 さて今作は彼の故郷のデンマークに拘り、更にジャズ・トリオとしての味にも拘ったという代物で、そこに聴きどころが結構あったので喜んでいるのだ。

(Tracklist)
1.Forever Frank (Niels Lan Doky)
2.Man In The Mirror (Michael Jackson)
3.The Miracle Of You (Niels Lan Doky and Lisa Freeman)
4.Kiss (Prince) feat. Debbie Sledge
5.Langt Højt Mod Nord (High Up North) (Niels Lan Doky)
6.Alone In Kyoto (from a movie “Lost in Translation”)
7.Toots Waltz (Niels Lan Doky)
8.Lady Marmelade (from a movie “Moulin Rouge”)
9.Kærlighed og Krig (Love and War) (Burhan Genç) feat. Amanda Thomsen
10.Don't Know Why (Nora Jones)
11.That's It (Niels Lan Doky)
12.Piano Interlude (Niels Lan Doky)
13.How Deep Is Your Love (Bee Gees)

   とにかくインプロヴィゼーション即興演奏が、アルバム・タイトルに出てくるぐらいに、彼らのピアノ・トリオに気合いが入っている。そして冒頭M1."Forever Frank"に自己の早弾きのオリジナル曲をぶつけてきた。しかし相変わらずピアノは名機Bösendorfer 225だと言うが、軽い音である。やっぱりこれは録音法なんでしょうかね、ドラムスの音もバタバタしていてリアル感も少ない。そして気合いが入っている割には、M1.、M2.に感動と言う世界は感じない。
 しかしM3."The Miracle Of You"になってガラっと変わってゆったりとメロディーの生きた叙情性たっぷりの美しいピアノ演奏となる。この曲は聴き覚えのある曲だ。この線でいってほしい。
 ちょっと意外だが、M4."Kiss"はDebbie Sledgeの女性ヴォーカルが入る。ベースの伴奏と相性が良い中低音を主体としたリズム感たっぷりでの歌声、なかなかジャズ心の芸達者なところを聴ける。後半ニルスのピアノはインプロヴィゼーションの展開となる。成る程ジャズを彩りもって楽しもうというところが見える、なかなかの出来。

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 M5."Langt Højt Mod Nord" 原曲のメロディーは意外に素直に演奏されるも、ここでもニルスのピアノは即興を織り交ぜて味付けが楽しい。
 M6."Alone in Kyoto"  異国の地をゆくをイメージさせるピアノの展開からスタートして、落ち着いた世界に。中盤ベースが深く心を静めるいい役割を演ずる。ピアノの美しさも味がある。
 M7."Toots Waltz" ニルスのオリジナル。大半を占めるピアノ・ソロが美しく展開。
 M8."Lady Marmelad" 珍しくピアノの低音から始まって、後半の三者によるインプロの醍醐味に進む。このアルバムの一つの主役曲か。
 M9."Kærlighed og Krig" 女性ヴォーカルの入る二曲目。澄んだピアノの音、そしてAmanda Thomsenの高音のヴォーカルが入ってトラッドっぽく訴えるように広がる。
 M10."Don't Know Why" と M11."That's It " は、ニルスのインプロの世界の緩と急を描く。M11ではドラムスのソロがステックを生かした展開でセンス抜群。
   M12."Piano interlude" ピアノ間奏曲を彼のインストで綴り、M13."How Deep Is Your Love"へと流れる。まさにインプロの楽しさを演じて締めくくる。

 ジャズのアレンジとインプロヴィゼーションの妙を描くアルバムとして作成された印象は十分伝わってきた。彼の長年の携わってきたジャズ・ピアノもこうして多くの要素から成り立っていることも聴きとれた。しかし先に触れたように録音が不満足だ。それでも彼のピアノ・ジャズのこの後への新展開の足がかりになりそうなアルバムとして評価する。

Niels_lan_doky2ネツトに見る・・「ニルス・ラン・ドーキーの略歴」
 1963年、デンマーク、コペンハーゲン生まれ。幼少のころからピアノに親しみ、バークリー音楽院卒業後、1986年にデビュー作を発表して以来、これまでに30枚を超えるアルバムを発表している。デンマークのみならず、アメリカ、イギリス、日本など世界中で演奏経歴があり、パット・メセニーやビル・エヴァンスらとの共演も果たした。演奏技術はもとより、アレンジや作曲能力の高さも評価されており、ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世の前で演奏を披露したり、2010年にはデンマーク国よりナイトの称号も授与されるなど、卓越したキャリアを持つピアニストでもある。ジャズだけに留まらずクラシックやポップスのセンスも兼ね備え、世界中の注目を浴び続ける音楽家である。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100 
□ 録音     78/100

(視聴)

 

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