2020年8月15日 (土)

ダーリオ・カルノヴァーレDario Carnovale 「I Remember You」

絶妙のスウィング感でバランスのとれた緩急メリハリある抒情派作品

<Jazz>

Dario Carnovale / Alfred Kramer / Lorenzo Conte 
「I Remember You」
FONE / EU / SACD173 / 2019

711pyugu9bl_acw

Dario Carnovale ダーリオ・カルノヴァーレ (piano)
Lorenzo Conte ロレンツォ・コンテ (bass except 4)
Alfred Kramer アルフレッド・クラーマー (drums except 4)

2016年10月イタリア-イル・カステッロ、セミフォンテ・スコト宮殿(の地下)録音

  イタリアはシチリアの州都パレルモは数年前に訪れたことのある懐かしい美しい街だが、ここはシチリア島の玄関口と交通の要所ということで、なかなかの大都市。しかも教会や宮殿が立派で、ギリシャ、アラブ、フランス、スペインなどが混じりあっての独特の文化が生まれている。更に余談だが、ここのマッシモ劇場は、映画「ゴッド・ファーザー」で有名になったところ。
Dc3    このパレルモ出身の俊英ピアニストに、ダーリオ・カルノヴァーレ (→) がいて、彼のピアノ・トリオ作品を一度しっかり聴きたいと思っていた時に、このSACD盤が目に留まり早速聴いてみたというところだ。高音質に定評のあるイタリア「foneレーベル」のセミフォンテ・スコト宮殿地下録音プロジェクトの一つとして2016年10月に吹き込まれ、2019年にリリースされたアルバムである。
 このカルノヴァーレは、2年ほど前にイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に活動の拠点を移しているそうだが、そんな彼が、高音質レーベルで知られるFone Jazzに、アルフレッド・クラマー(ds)、ロレンツォ・コンテ(b)というトリオでスタンダード中心に録音したスペシャル・セッション版である。

33599w

(Tracklist)

1. I Remember You (Victor Schertzinger) 5:41
2. Madrigale (Carnovale) 4:00
3. I'll Close My Eyes (Reid - Kaie) 7:38
4. Alone (Carnovale) 2:25 (solo piano)
5. What Is This Thing Called Love (Cole Porter) 5:55
6. Emersion (Carnovale) 8:19
7. Ckc (Carnovale - Conte - Kramer) 6:27

Lc1_20200814212401  しかし、メロディアスにしてスインギーな展開にアドリブの効いた流れ、そして時々適度にイタリア独特の美旋律が流れ、しかし時にハードなダイナミックな展開と多彩多芸。特にM4."Alone"のカルノヴァーレのピアノ・ソロでは、やや前衛がかったオルタナティブな世界も見せる。
 私にとっては、なんと言ってもM3."I'll Close My Eyes" いわゆる美旋律のピアノを中心に描くピアノトリオの世界が、何と言えない心地よさだ。ベースそしてシンバルも手頃の余韻を持って響きそれは快適。落ち着いた夜にぴったり。
 しかし、その他の曲で、特にスタートのアルバム・タイトル曲M1."I Remember You"での、ここまで小気味のいい軽やかなスイング感を大切にしたリリカルなプレイを展開してみせるトリオも珍しい。これも彼らのキャリアの蓄積がそうさせるのであろうと思うが、力みの無い洗練された技巧派ジャズなのである。この軽妙さはジャズ心の極致である。
Ak2  M5."What Is This Thing Called Love"、これはドラムスの疾走から始まって迫真のインタープレイの展開、とにかく息詰まるスリル感たっぷりの生々しい演奏は凄絶で圧巻。この三人はこれをやらずには納まらないと言ったところか。
 M6."Emersion"のそれぞれの世界をそれぞれがアクロバティックに流れてゆき、そして演じてゆくうちにトリオとしての交錯そして統一感への世界は面白い。美的という処からは別物だが、これが又このトリオの味なのかも知れない。
 そして続く終曲 M7."CKC"は三者による作品。この"CKC"とは何かと思ったら、どうやら三人の頭文字だ。この曲には三者がクレジットされている。それは緻密に静とその世界の神秘性にも迫る情景に納得。そして次第に現実の世界に目覚めさせる。

 又、音質も極めて自然な録音で、さすがはFONE JAZZだけあってその心意気はSACD盤としてリリースされている。これは派手さで無く自然体を追った録音と行って良い。むしろかってのアナログのLP時代を思い起こさせる。
 とにかくトリオ・ジャズの楽しさ満載のアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)

 

| | コメント (0)

2020年8月11日 (火)

キャロル・ウェルスマン Carol Welsman 「Dance with Me」

"キャロル、ラティーナを歌う"と・・・ラテン・ジャズ・ヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Carol Welsman 「Dance with Me」
Justin Time Records / JPN / MZCF-1419 / 2020

61ubksceblw

Carol Welsman キャロル・ウェルスマン (vocal, piano, produce)
Justo Almario ジュスト・アルマリオ (tenor saxophone, soprano saxophone, flute)
Rene Camacho ルネ・カマチョ (bass, background vocal)
Jimmy Branly ジミー・ブランリー (drums)
Joey de Leon ジョーイ・デ・レオン (conga, percussion, background vocal)
Juan Luis Guerra フアン・ルイス・ゲラ (guest vocal on 04)
Oscar Hernandez オスカー・ヘルナンデス (arrangement, produce)

200306_042atrw  カナダのベテラン歌姫キャロル・ウェルスマン(1960年カナダ・トロント生まれ) の、なんと「ラテンを歌う」というニューリリース盤。それも私は彼女自身の過去のアルバムでもラテンものはあまり印象に無いし、ピアノ弾き語りのジャズのイメージがあって、実はあまりラテンには合わない印象なんですね。
   以前ここで話題にした『ディス・イズ・キャロルThis is Carol - ラヴ・ソング20』(MUZAK Fab./MZCF1340/2016) がベスト・セラーとなって、日本でもおなじみの彼女だが、本人の話だと、ライブでラテンものを歌うと会場が楽しげに盛り上がると言うところから、ラテンものは従来から考えていたとのこと。
 満を持して作り上げたアルバムで、なかなかバックにはラテン・ジャズ界の雄オスカー・へルナンデス、そしてトロピカル・ラテンの至宝ドミニカ共和国1957年生れのファン・ルイス・ゲラ(1曲デュエットを展開)といったグラミー賞連中をはじめとするトップ・プレイヤー達が集まり、楽しく演ずるところは、ジャジーでゴージャスな明るいラテン・ワールドとなっている。

(Tracklist)

1.You and the Night and the Music 貴方と夜と音楽と
2.A Taste of Paradise
3.Femme Fatale (Amor Fugaz)
4.Dance With Me (Si Tu No Bailas Conmigo)
5.Time to Dance Cha Cha Cha (Ya Llego La Hora)
6.Yesterday (Como Fue)
7.Island Lullaby
8.I Think of You (Hoy Como Ayer)
9.I Won't Dance
10.Revelations
11.Yesterday I Heard the Rain (Esta tarde Vi Llover)

  とにかく難しいことは抜きにして楽しくラテン・ジャズ・ヴォーカルを楽しんでくださいと言ったスタートは、定番曲 M1."You and the Night and the Music 貴方と夜と音楽と"である。サックス、コンガが響いて明るく一気にラテン・ムードに。
 どちらかというと彼女のヴォーカルは、M2."A Taste of Paradise"のように、中・低音域の歌声が印象深い。
 私はこのM3."Femme Fatale"のようなスローな曲での彼女の味のほうが好きなのでこの曲は歓迎。
 いずれにしても英語で歌っているのは殆ど彼女の作詞らしく、そこまで気合いが入っている。
Juanluisguerra2017w  M4."Dance With Me"は、このアルバムで唯一のファン・ルイス・ゲラ(→)とのデュオ、彼のラテン・ヴォーカルがやっぱりラテン・ムードを盛り上げている。これがアルバム・タイトルになっているメイン曲。
 M5."Time to Dance Cha Cha Cha"バッキング・ヴォーカルと楽しいチャチヤチャだ。
 M6."Yesterday "は、楽天的ではない曲で、むしろ彼女らしい味がある。これもスロー・ナンバー。
 M7."Island Lullaby" 大人のラテン・リズムといった雰囲気で、このアルバムでは中核的曲仕上げ。
 
  まあ肩のこらない力みの無いラテン・ミュージック、バック演奏も南米の猛者連を含む強力な精鋭コンボ体制による本格的なラテン・アルバムと言うが、昔ながらのラテンもの演奏で新しいモノは無い。
 私的には、バラード・コンセプトっぽい語りかけるようなヴォーカルでリラクシング・ムーディーな M8."I Think of You "、 M11."Yesterday I Heard the Rain " あたりがお気に入りであった。

 ヴェテランの風格の彼女の味付けは、このアルバムにもちゃんと感じられ安心して聴いていられる。
 いずれにしても、ラテン特有のダンサブルな展開や、快調なテンポで明るい曲を織り交ぜてのアルバムで、ただでも暗いコロナ渦にあっては、気分転換に良いアルバムであった。

 (評価)
□ 曲・演奏・歌   80/100
□ 録音       80/100

(試聴)

 

| | コメント (0)

2020年8月 7日 (金)

[ カメラの話 ] 陽の強い夏ともなれば・・・KIYOHARA SOFT の世界

ソフト・フォーカスの魅力はフレアと光反射の滲みにあり・・・・??

 

  以前2014年に、ここで紹介したKIYOHARA SOFT レンズですが、このところの長い梅雨の曇天から明るい陽が射してきたとと同時に、暑さも忘れ思い出して取り出したレンズ。このレンズは陽の光の反射の滲みが好きで私は撮ってきたレンズ。もともとはフィルム・カメラ時代の産物ではあるが、このデジタル時代になってみると、いくらでもレタッチ・ソフトでそんな効果は簡単に出来るのだが、やっぱりレンズ効果で描いてみるとその味はひと味違って楽しいのだ。

 ベス単フード外し(1920年頃のコダック社の人気カメラVest Pocket Kodakのレンズ)で、一躍ソフト・フォーカス撮影が注目されたのである。そしてその線を狙って工夫して作られたKIYOHARA SOFTレンズですが、当初1986年70mm(VK70R)であったが、その後ユーザーの期待に応えて出来た50mmレンズ(VK50R)、私の所有しているのはNIKON Fマウントのものを所持しているので、下のようにNIKONのデジタル一眼に装着して遊んで居るのである。

Img_2247trw

  ソフト像だとピント合わせが難しいため、撮影時はF8-11あたりでピントを合わせ、この一眼カメラでソフト効果を確認しながら、F4.5-6あたりに開いて撮影するのである。

( 写真:クリック拡大)

Dsc_5712trw

1

 

Dsc_5702trw

2

 

Dsc_5492trw

3

 

Dsc_5524trw_20200807175601

4

 

Dsc_5650trw

5

 

Dsc_5596trw

6

 

( 下は今年の春の思い出 )

Dsc_5246tr1bw

7

SOFTKIYOHARA SOFT  VK50R

発売時期 1987年  フィルター径 40.5㎜
レンズ構成 1群2枚+保護ガラス1枚
最近接距離 0.45m  絞り羽根枚数 10枚
絞り f4.5-16  質量 約125g

(参考)

 

| | コメント (0)

2020年8月 3日 (月)

ジャン・ポール・ブロードベック・トリオ Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」

洗練されたジャズ心とテクニックでジャズの美学を演ずる・・・

<Jazz>

Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」
Solid/Enja / JPN / CDSOL-46459 / 2020

Extratimew

Jean-Paul Brodbeck : p
Lukas Traxel : b
Claudio Strüby : ds

Adapted By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 5)
Recorded By, Mixed By, Mastered By – Daniel Dettwiler
Written-By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 2-4,6-9), Brahms* (tracks: 5), Schumann* (tracks: 1)

 スイスの若手ピアニストでチャイコフスキーのカヴァーなどをして来たジャン・ポール・ブロードベックJean-Paul Brodbeck がルーカス・トラクセルLukas Traxel(b)とクラウディオ・ストルビーClaudio Strüby (ds)とで結成したスイス産トリオによるアルバム。
 これは2017年にドイツのヨーロッパ良質なジャズ・レーベルと言われるENJA(European New Jazz)からリリースされたもので、メインストリーム・ジャズの名盤を復刻する注目の新シリーズ ”ENJA REAL JAZZ CLASSICS"として今年7月に日本でお目見えしたモノ。
 ブロードベックは、クラシック楽曲を耽美的にジャズ化するなど美にこだわったスタジオ作品をリリースして注目されてきた。

 

Avatars000271845735jfsfjgt500x500 (Tracklist)

1 Ich Will Meine Seele 心を潜めよう 8:51
2 Im Strom Der 潮の流れに 9:33
3 The Night Comes Soon 6:18
4 Song For The Ancestors 7:11
5 Brahms Ballad 3:16
6 Juno Is Touching Down 8:01
7 Return/No Return 6:25
8 Rocka-Roas 4:58
9 Requiem Of A Song 6:28

 曲はクラシックからはシューマンのM1.とブラームスのM5の二曲のみで、その他はピアニスト・ブロードベックのオリジナル7曲によって構成されている。
 スタートのシューマンのM1."Ich Will Meine Seele"で、これは並に迫れないトリオだと、単なるクラシックのカヴァーと言うので無いそのジャズ演奏の意味付けの重さがヒシヒシと実感する。
 M2."Im Strom Der"はオリジナル曲、押し寄せるドラムスの流れに、ピアノ、ベースのテーマが始まり、これは耽美派ということではかたづけられない一歩ジャズを進化すべく試みる世界だ。ピアノ主導で無く三者の描く世界が美しさと共に伝わってくる9分を超える長曲、面白い。
 M3."The Night Comes Soon" ピアニストが浮遊する世界。 
 M4."Song For The Ancestors " ピアノのイントロが美しく、ベース、ドラムスの効果がそれを後押ししてのジャズ美学。
 ブラームスのM5." Brahms Ballad "はしっとりと。
 M6."Juno Is Touching Down " ベースの深層心理に迫ろうとするソロから始まって、トリオ演奏が高まりを造り、ベース主体の中にピアノの美しさが交えて聴き応え十分。コンテンポラリー感が結実して見事。
 M7."Return/No Return" 彼らの本領発揮のピアノの流れのバラードで耽美なトリオ演奏にうっとりといったところ、ちょっと思索的世界に導くところがお気に入りだ。
 締めのM9."Requiem Of A Song " は、ゆったりとしたピアノの旋律が美しい曲。

Jeanpaul_brodbeck223  三年前のこのアルバムを今年ここに復活させた意味は十分感じられるハイレベル・ジャズ・アルバム。しばらく聴いていたくなるのは、その技術的な洗練されたところと、ジャズ心の充実だと思う。

  参考までに、リーダーのJean-Paul Brodbeck は ( →)、1974年スイス・バーゼル生まれ、10歳でピアノに接し、12歳でバンドを組んだとか。11歳から15歳まで正式なピアノ・レッスンを受ける。その後音楽院に進んでクラシック専攻という経歴。28歳でトリオ初リーダー作を発表。チャイコフスキーのカヴァー曲集「Song of Tschaikowsky」等のアルバムをリリースしている。

(評価)

□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   85/100

 

(視聴)

 

| | コメント (0)

2020年7月28日 (火)

欧州ブルース・ロック歌姫 = ジョアンJoanne Shaw Taylor と イリア Erja Lyytinen

ギター・テクニック抜群で熱唱とソフトヴォーカルと・・・

 つい最近、ブログ友フレさんのブログで知ったこの歌姫二人、かなりレベルの高いギタリストにしてブルース・ロックを演ずるところは興味津々であった。なにせ、彼女らは欧州のブルース・ロッカーで、どのようにして育って来たのかとちょっと不思議に思いつつも、聴いてみるとなかなかそれぞれ魅力的であったので、ここに取上げた。

<Blues-Rock>

█ ジョアン・ショウ・テイラーJoanne Shaw Taylor 
  
CD「RECKLESS HEART」
  Sony Music / Import /SNY5948142 / 2019

61r34zjkysl_ac2w_

All Songs Written by Joanne Shaw Taylor

Joanne Shaw Taylor : Guitor , Vocals
Ron Otis : Drums , Percussion

James Simonson : Bass

Taylorjoanneshaw2w_20200728151901 (Tracklist)
1. In the Mood
2. All My Love
3. The Best Thing
4. Bad Love
5. Creepin'
6. I've Been Loving You Too Long
7. Reckless Heart
8. Break My Heart Anyway
9. New 89
10. Jake's Boogie
11. I'm Only Lonely

  彼女は英国出身のブルース・ロックを演ずるギタリスト、ヴォーカリストそして作曲者である。こうゆうのが英国でヒットするのはちょっと不思議な感あると思って、この3rdアルバム聴いてみたが、うーーん、これはブルース・ロックと言ってもややハードがかったロックですね。アルバム・タイトルのようにやや無謀な味付けのロック味を演じたのでしょう。ブルースっぽい味のある曲は M6."I've Been Loving You Too Long"、これはなかなかのもので、泣きギターも頂きだ。もともとはこの線で頭角を現してきたのではと思うのだが。
 彼女の声はちょっとハスキーっぽい、本来はもっとクリーンな声だと思うのだが、ブルース曲向きに作為的にスモーキー・ハスキー系に仕上げているのだろう。
 M10."Jake's Boogie"、M11."I'm Only Lonely"のスローな線は、味があって良い。やっぱりブルースが良さそうだ。
 いずれにせよ、ギターの腕前もなかなかでギブソンを使いこなして格好いい。今は米国に渡って活動しているようで、その結果が今回のアルバムの方向性に影響したのかと思うのだが、更にロックに磨きがかかったようだ。

CD+DVD「Joanne Shaw Taylor / SONGS FROM THE ROAD」
    Ruf Records / IMPORT / RUF 1197/ 2013

1_20200727183501

  これは、CDに加えDVD映像付きのライブ盤。ブルース系でそんなに大きくない会場で、たっぷり彼女の演奏と歌が楽しめる。
 彼女は1989年英国生れ、8歳からギターブルースに傾倒。16歳でデイヴ・スチュアートに見出され、翌年、彼とキャンディ・ダルファー、ジミー・クリフからなるスーパーグループ、D.U.P.のツアーにギタリストとして参加。2009年のデビュー作『ホワイト・シュガー』は全米・全英でブルース・ミュージック・アワードを受賞するという快挙あげたとか。

                  *          *          *          *          *

█ イリア・ライチネン Erja Lyytinen

<Blues-Rock>

① CD + DVD  「Erja Lyytinen / SONGS FROM THE ROAD」
      Ruf Records / IMPORT / RUF1179  /2012

2_20200727183601

Erja Lyytinen : Guitar, Vocals
Davide Floreno : guitar , Backing vocals
Roger Inniss : bass , Backing vocals
Miri Miettinen : drum , Backing vocalss

161014_elyytinen3  こちらの歌姫イリア・ライチネンは、なんとフィンランド出身のブルース姫というから驚きですね。15歳から音楽学校でギターを学び2001年にCDデビュー、もう20年のキャリア。もともとはジャジーな世界で、フォーク系のムードのある曲を演じていたようだ。Rufレコードと契約し、会社の企画のブルース・ギターで注目を浴びたという。ここでのライブもギター・プレイ中心のインスト曲も演じ、何と言ってもギターの名手で、女子スライド・ギターでは世界トップ・クラスと言われている。
 このアルバムは2011年にヘルシンキで収録されたライブ盤で、映像DVDも付いている。
 曲は、典型的なブルース・ロック。映像もあって観れるのが嬉しいが、カラーの派手なテレキャス・モデルを赤そしてブルーと持ち替えて更にシルバー色も出てくる。まさに女流ギタリストの面目躍如の演奏を展開する。
 彼女のヴォーカルは、そのままの素直な歌声で私にとっては好評、あまり作った声は好きで無いのでこれでよい。
 M6."Can't fall in Love"、M8."Steamy Windows"のバラード・ナンバーがギターの情感と共に良いですね。
 M9."No Place Like Home"もうっとりだ。
 M10."Crossroads" 如何にもカントリー・ムードとスライド・ギターのハイテクニカル・プレイとうねりが聴き所。ほぼインスト曲。
 このアルバムは、後半に行くに従ってブルース色と、ギター・プレイが濃厚になって良い感じで聴き終える。

  参考までに、61f9laxf1fl_acw イリア・ライチネンの近作アルバムは 
『Another World』(BSMF Records /BSMF2661 / 2019)である。(→)

      *          *          *          * 

 今回、ここに英国とフィンランドのブルース・ロック歌姫を取上げたが、両者とも女流ギタリストとしては優れた業師であり、その上ヴォーカルはそれなりにこなしている。私の場合は発声の素直さと聴きやすさ、更にブルース色の濃さからイリア・ライチネンに軍配を上げたが、曲の演奏を楽しめるブルース系世界としてもイリアの出来に納得した。ロッカーとしてはジョアン・ショウ・テイラーですかね、彼女の作曲者としての才能も注目しておこう。
 
 いずれにしても、この両者の世界はなかなかそれぞれ貴重であって、2019年には両者ともニュー・アルバムをリリースしている。まだまだこれからも健闘して欲しいと願っている。

(参考視聴)

Joanne Shaw Taylor

*
Erja Lyytinen

 

| | コメント (2)

2020年7月22日 (水)

ピンク・フロイドの「the best of tour 72」の完全版の出現

まだまだ続くピンク・フロイドの「72'レインボーシアター名演」の完璧録音盤への道

 

<Progressive Rock>

PINK FLOYD  「LIVE  THE BEST OF TOUR72  - DEFINITIVE EDITION」
Sigma / ITA-JPN / Sigma 249-1,2 /2020

1_20200714145901

Rainbow Theatre, Finsbury Park, London , UK  20th February 1972

(Tracklist)

Uktour <Disc1>  (74分14秒)
Breathe

Variation Of "On The Run"
Time
Breathe Reprise
Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part One
Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part Two
Money
Us And Them
Any Colour You Like
Brain Damage
Eclipse
One of These Days
Careful with  That Axe, Eugene 

<Disc-2> (66分49秒)
Tuning
Echoes
A Sauceful Of Secrets
Blues
Set The Controls for The Heart Of The Sun

 ここにフロイド・ファンにとっては、かけがいのない「72年レインボーシアターライブ」(右上)の決定版アルバムの出現をみた。
   これは1972年の冒頭を飾る「UK TOUR '72」において、1年後にリリースした彼らの最も最高傑作のアルバム『The Dark Side of The Moon狂気』の全容を、初めてステージで公開した最も注目されるライブであった (これは前年71年の11月29日から12月10日までロンドンのDecca Studiosにてアルバムとライブの為にデモ・レコーディングを行い、'72になって1月17-19日リハーサルを行い、1月20日からUKツアーをスタートさせ、2月20日に打ち上げたもの)。 つまりその最終日の録音ものだ。
  更に注目は、この直後3月には「JAPANESE TOUR」を(東京、大阪、京都、横浜、札幌)行ったのだっだ。しかし当然日本ではまだ知らざる曲の披露で戸惑ったというのも事実であった。

 そしてこのアルバムを語るには、少々歴史を語る必要があり、下のこのライブを収録したアルバムに話しを持って行かざるを得ない。

█ PINK FLOYD 「Live , THE BEST OF TOUR' 72」Lp11973 (→)
  We Did It For You / UK / LP / 1973

 ピンク・フロイドの多くの歴史的名ライブ録音盤の中でも、ファンにとって貴重で5本の指に数えられるものの一つが、注目の1972年2月20日のレインボーシアター公演を収録したこのコレクター盤(当初はLP、後に当然CD化された)である。これは翌年1973年リリースの世紀の名盤『The Dark Side Of The Moon 狂気』の原型が聴けるとして注目されたもの。以来この50年近く、このアルバムに関してはLP盤、CD盤、別テイク盤も含め、音質の改善がなされつつ現在解っているところでもなんと61枚が手を変え品を変えリリースされてきた。
   非公式音源盤(Bootleg)であるが、この"親子ブタ"のジャケは、知る人ぞ知る忘れられない逸物だ ( 右のように、ジャケ表には何の文字も無いのが初期LP盤の特徴。アルバム『原子心母』の"牛"は傑作と言われているが、それにも匹敵する出来映え)。

 そしてこのブート盤は幾度となく改良が加えられてきたが、更なる改良が加えられた"究極の完全版"といえる代物が、なんと今年になってイタリアと日本の力によってリリースされたのだ。それがここで取上げる「 DEFINITIVE EDITION」と名付けられたものだ。ピンク・フロイド専門レーベル「Sigma Records」 からのもので、それが今日のテーマである。


 私が以前から所持しているこの改良版CDは、既に音質の良さから究極のモノとされている「THE SWINGIN' PIG RECORDS」の"TSP-CD-049"盤 PINK FLOYD「LIVE」(1990年↓)であるが、これはこのライブの中の第一部での公式アルバム『The Dark Side of The MOON 狂気』(1973)に関する音源のみを収録したものだ。従ってその他のこの日の演奏曲は入っていない、それでも私は満足していたのだが・・・更に全容を求める声もあった。
 更にこの名盤でも、フロイド・ファンなら良く聴くと解るとおり、編集では上手く繋いでいるのだが、曲("time"、"eclipse"など)の一部、音の欠落している部分が少々あったりしている。従ってこんな感動モノでありながら更にその上を求めるのがファン心。

2w_20200714152301

Japantourx  そもそも、ピンク・フロイドは、ライブ演奏を繰り返しながら曲を完成させてゆくバンドであり、この名盤『The Dark Side of The MOON 狂気』がリリースされたのは1973年3月で、その内容はなんと一年以上前には、ここに聴けるが如く既にほぼ完成させライブ演奏していたのである。そんな中の1972年7月には映画音楽曲集のニューアルバム『OBSCURED BY CLOUDS 雲の影』がリリースし、『The Dark Side of The MOON 狂気』はその更に後のリリースであるから、このレインボーシアター公演は新曲を求めるファンにとっては注目の公演であり、それが又高音質で聴けるとなれば当時大騒ぎになったのも当然の話である。更に一方その直後の3月に「JAPANESE TOUR」(S席2800円→)が行われた歴史的年だ( 当時は日本では当然未発表アルバム『狂気』は知らない訳で、キャッチフレーズが "吹けよ風 呼べよ嵐"であった)。

 私の関心もピンク・フロイドとなると、1983年の『THE FINAL CUT』までが興味の対象で、それ以降はオマケの部類であって、特に1970年代がほぼ最高潮の時であったと言っても良い。そんな事情から、現在もこの1972年のレインボーシアター公演は注目されるのである。
 そうして50年近くを経過しようとしている今日においても、この『THE BEST OF TOUR 72』をなんとか完璧にと求める作業は続いていたのである。そしてここに出現したのが、究極の1972年レインボーシアター盤であるピンク・フロイド専門レーベルSigmaの「DEFINITIVE EDITION」である。これはこのレーベルの意地によって究極版を仕上げたと言って良い。

Member1_20200722210701

(三つある有名録音)

 実はこの日のライブ音源というのは、雑多であるが、基本的にほぼ認められているものは三っあるのである。
① Recorder 1 (デレクDerek・A氏録音) : 過去最高の音質を誇る。上に紹介した名ブート盤「Live , THE BEST OF TOUR' 72」だ。曲の一部に欠落あり。マスターテープは盗難にあって現存しない為修復不可。 
② Recorder 2 (スティーヴSteve・B氏録音) : 平均以上の音質を維持、曲間は欠落。近年音質の改善が行われ再び注目。
③   Recorder 3 (ジョン・バクスターJohn Baxter氏録音) : 当日のショーの曲間も含め完全録音。しかしやや音質に難。
  それぞれこの3つともこのように何らかの難点を抱えていて、特に高音質の①は、内容の完璧さに欠けているのが最も残念なところである。そこで、②がここに来て音質の改善が高度な技術でかなり為し得てきたと言うことで注目された。

 そこで、この三録音を如何に組み上げるかによってこの日の実質2時間30分のショーを完璧再現出来ると、幾多の試みがなされたが、根本的にそこには甘さがあって、イマイチというのが偽らざる実情であった。

 しかしいずれの時代にも頑張るところが出現する。今回のこの「Sigma」においては、この三つの選び抜かれた最良のソースを使って、音質は勿論、演奏内容にも忠実にハイレベルな位置を目指して作り上げたのである。

 

(究極の「DEFINITIVE EDITION」の内容)

 この注目のSigmaの「DEFINITIVE EDITION」においては、まず上のTracklistにみるDisc1の「第一部」は、音源は最高音質の「① Recorder 1」をベースに仕上げている。冒頭は「③   Recorder 3」 を使って、ライブ開始までの臨場感と観衆の興奮を伝え、"Spek to me"は「③   Recorder 3」を使い、続く"Breathe"は最高音質の「① Recorder 1」が登場すると言った流れで、冒頭のロジャーのベースの迫力と続くギルモアのギターのメロディーのリアル感はスタジオ版と違って圧巻である。
 "Time"においては、欠落のあった3:36-56の間は完全に補填されて完璧な姿となっている。"Eclipse"も後半知り切れ部分を「③Recorder 3」で補填して完璧な姿に。
 チューニングの部分も「③Recorder 3」を使って臨場感ありだ。"Careful with That Axe, Eugene"も冒頭のロジャーの曲紹介などが入っていてライブそのものの形が出来ている。
 後半のDisc2の「第二部」は、「①Recorder 1」の音源が無いため「②Recorder 2」をベースにして曲間、チューニングなどは「③Recorder 3」で補填している。ここでもおなじみの"Echoes" は尻切れから完全型となり、"Set The Controls for The Heart of The Sun"も、中間部の当時の彼らの得意のミステリアスな世界が浮き彫りになっている。終演部も十分当時のライブの様を聴かせてくれる。とにかくその補填の技術が違和感なくスムーズに移行させていて、このあたりの技術の高さも感ずるところだ。

Rd_20200722210701

 こうして、50年前のライブを完璧なものにとエネルギーを注ぐと言うことは、今の若き人達にも聴く方からとしての要求があり、そしてそこにはレーベルの意地と努力がこうして答えるというコレクター・エディションの姿なのだ。70年代のピンク・フロイドの歴史的価値というのは今だに失せていないどころか、まだまだ探求が盛んになっている。
 こんなマニアアックな道は、究極ファンが支えているわけで、1960-1970年代のロックの潮流は恐ろしい。いずれにしてもこの状況みるにつけ、これを喜んで聴いて感動している私も何なんだろうか・・・と。

(評価)
□ 内容・演奏  90/100
□ 録音     80/100 (歴史的なコレクターものBootlegとしての評価)

(参考視聴) 当時のこの名盤はLPであり、スクラッチ・ノイズが入っている (後にTSPのCDでは完全に改良された)

 

*

 

| | コメント (2)

2020年7月18日 (土)

ロレンツォ・コミノーリ、ロベルト・オルサー Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」

ヨーロッパの伝統の中から生まれた叙情的な耽美な世界はここにあり

<Jazz>

Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」
abeat for Jazz / Italy / ABJZ 218 / 2020

Timeline

Lorenzo Cominoli (guitar)
Roberto Olzer (piano)

Recorded at Artesuono Recording Studio, Cavalicco , Itaria , Sept. 30, 2019
engineered by Stefano Amerio

 イタリアの今や油の乗った日本で人気のピアニスト・ロベルト・オルサー(Roberto Olzer下左)は、ここでも既に何回か登場してきたわけだが、今回は、ギターのロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli下右)とのデュオと言うことで注目のアルバムがリリースされた。これはイタリアの中堅叙情派という世界であって私としては見逃せない。更にそこにステファノ・アメリオのレコーディンク・エンジニアとくるからたまりませんね。又、ロベルト・オルサーが弾くピアノはイタリアの誇るFAZIOLI GRAND PIANO F278 MKⅢ と、音にうるさい人にも注目されるところである。
・・・と、言うことで早速聴いたという処です。

Ro1Lc1

 (Tracklist)

1. Bibo No Aozora (Ryuichi Sakamoto)
2. Blue Whale (Lorenzo Cominoli)
3. Dance Of Moroccan Veil (Garrison Fewell)
4. Atlantis (Roberto Olzer)
5. Timeless Part I (John Abercrombie)
6. Timeless Part II (John Abercrombie)
7. The Dolphin Jump (Lorenzo Cominoli)
8. Novembre (Roberto Olzer)
9. Blott En Dag (Oscar Ahnfelt)


  聴いたことのあるメロディー、坂本龍一のM1.”Bibo No Aozora 美貌の青空”からスタートする。ここにはしっとりと抑制の効いたエレガントなギターとピアノの調べが流れてくる。
 それは、コミノーリの曲M2."Blue Whale"になって更に瑞々しく流麗なメランコリックな美しいメロディーが情緒豊かな世界を築く。ピアノとギターが交互に旋律部を担当し、お互いがバックも担当してデュオの味の魅力を放つ。それはM3."Dance Of Moroccan Veil"、M4." Atlantis "になって、旋律の性質が変わるも基本的には静謐な雰囲気を作り耽美な世界を演ずるところは変わりは無い。


Lcro1

  しかしこのまま進行するのかと思いきや、M5."Timeless Part I " になって、彼らの若き世代からの積み重ねの世界が顔を出す。ちょっとダークさのある妖しく不穏なミステリアスな音をギターが響かせ、ピアノが後押ししてちょっとした異世界を浮遊するメロディーを流す。
ある意ではスリリングな世界で、インタープレイの妙も演ずる。ここに彼らの単なる美旋律に終わらないところが聴きどころ。
 そしてM6."Timeless Part II"に流れ、コンテンポラリーな世界は落ち着きのある世界に復帰。
 M7."The Dolphin Jump "では珍しく明るい世界を演じ、M8."Novembre "で、再び繊細にして優雅な中に、どこかオルサーの哀感のあるピアノの調べで叙情的美世界に導くのである。

 まあ若干の変化は見せたとはいえ、メロディアスな叙情的世界をエレガントな感覚で描いたアルバムであり、もう少しダイナミックな面もあっても良かったかとも思うが、まさに伝統あるヨーロッパの耽美な世界はここにありと言ったアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100

(視聴)

*

 

 

| | コメント (0)

«ケリー・ジョンソン Kelley Johnson 「SOMETHING GOOD」