1.I Let A Song Go Out Of My Heart 7:49 2.Somewhere Over The Rainbow 6:16 3.I Got Rhythm 4:04 4.Il Postino 5:30 5.I Got It Bad And That Ain’t Good 5:47 6.It Don’t Mean A Thing 3:28 7.Estate 4:58
M1."I Let A Song Go Out Of My Heart"は、ジャズはこうなんだと、スウィングして演じてくれる。中盤のベース・ソロを交えての演じ合いが楽しい。 M2."Somewhere Over The Rainbow "多彩な編曲を成している割には難しく聴こえないところがいい。映画全盛期の始まる1939年の映画『オズの魔法使い』でジュディ・ガーランドが歌ったハロルド・アーレンの曲「虹の彼方に」で、あの優しさを失わず聴かせるところが憎い。 M3."I Got Rhythm "ジャズらしい高速展開にドラムス・ソロ、そしてギターのベースとのコードが秀悦。 M4."Il Postino" 再びしっとりとメロディアスに聴かせます。 M5."I Got It Bad And That Ain’t Good " ドラムスのシンバルで軽くリズムをとる音との交錯がいい。 M6."It Don’t Mean A Thing" この曲のイメージを生かしての今度は軽快なシンバルの刻むリズムとのギター音との流れがにくいところ。 M7."Estate"イタリアらしくこの曲、ボサノバ・ジャズの私の好きな"夏の出来事の恨み節"を聴かせて締める。
余談であったが、ここ20-30年の経過でも、ビル・エヴァンスものを聴くよりは、ビル・エヴァンスを聴いて育った欧州ミュージシャンの演奏ものが多かった。そんな事のひとつにはビル・エヴァンスものの録音の悪さである。今思うに彼のトリオものでは『You Must Believe In Spring』(1977年録音の近年のリマスター・HiRes盤)ぐらいが、私にとっては今でも時に聴くアルバムなのである。このアルバムがエヴァンスものの中では、ちょっと抜きん出て音も良いし演奏もいいと思っている。 原点的には『Waltz for Debby』(1961年)を聴けば良いような気がしている。
そんな最近の経過での今回のエヴァンスの新アルバムの登場だ。彼が1965-69年にデンマーク各地を訪れた際の貴重な発掘ライヴ音源CDが登場したのである。中身は2枚組でヘビーだ(同時発売LPは3枚組)。ニールス・ペデルセン、エディ・ゴメス等が参加したトリオ演奏、そしてピアノ・ソロ、更にデンマーク・オーケストラとの共演等が楽しめる。 とにかくなんだかんだと毎年のように発掘盤のリリースのあるエヴァンスで(以前ここで発掘アルバム『Some Other Time』(HCD-2019 / 2016)を話題にしたことがあった)、追いかけていても大変だが、今回のこの盤は60年後半のものであり、やっぱり録音にはそう期待は出来ない。幸いにして時代はサブスク・ストリーミングの時代であって、早い話が特別買うことなく、それなりの音質でこのアルバムを聴くことが出来る良き時代になった。結論的には思ったよりは当時のものとしては音はライブものの録音でありながら、かなり良い方に思う。モノ録音もあるのだが、ステレオ盤としての工夫も施してあるようだ。
「Treasures」(2CD) : (Tracklist)
■(CD-1) Bill Evans Trio & Orchestra 1. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen-Johnny Mercer) 4:35 2. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill-Larry Morey) 4:31 3. Beautiful Love (Haven Gillespie-Wayne King-Egbert Van Alstyne-Victor Young) 4:18 4. I Should Care (Sammy Cahn-Axel Stordahl-Paul Weston) 4:08 5. Very Early (Bill Evans) 4:39 6. Time Remembered (Bill Evans) 4:53 7. Who Can I Turn To? (Leslie Bricusse-Anthony Newley) 5:59 8. Waltz For Debby (Bill Evans) 5:58 Orchestral Suite 9. Intro (Palle Mikkelborg) Into Waltz For Debby (Bill Evans) 5:13 10. Time Remembered (Bill Evans) 3:53 11. My Bells (Bill Evans) 4:45 12. Treasures (Palle Mikkelborg) 5:24 13. Waltz For Debby [Reprise] (Bill Evans) 4:19 14. Walkin’ Up (Bill Evans) 4:17
(M1-M3) Bill Evans (p) , Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) , Alan Dawson (ds) Copenhagen Jazz Festival, Tivolis Koncertsal, Copenhagen, October 31, 1965. (M4-M8) Bill Evans (p) , Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) , Alex Riel (ds) Slotsmarksskolen, Holbæk, November 28, 1965. (M9-M14) Bill Evans & Palle Mikkelborg Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Marty Morell (ds) With The Royal Danish Symphony Orchestra & The Danish Radio Big Band Featuring Allan Botschinsky, Idrees Sulieman (Trumpet) , Torolf Mølgaard (Trombone) , Jesper Thilo, Sahib Shihab (Reeds) , Niels- Henning Ørsted Pedersen (Bass) , Palle Mikkelborg - Trumpet (Featured On “Treasures”) , Arranger & Conductor Tv-Byen, Copenhagen, November 1969.
■(CD-2) Bill Evans Solo & Trio 1. Re: Person I Knew (Bill Evans) 3:21 2. ’Round Midnight (Thelonious Monk) 4:38 3. My Funny Valentine (Richard Rodgers-Lorenz Hart) 4:00 4. Time Remembered (Bill Evans) 3:19 5. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen-Johnny Mercer) 3:16 6. Epilogue (Bill Evans) 0:34 7. Elsa (Earl Zindars) 5:52 8. Stella By Starlight (Ned Washington-Victor Young) 4:19 9. Detour Ahead (Lou Carter-Herb Ellis-Johnny Frigo) 5:40 10. In A Sentimental Mood (Duke Ellington) 4:43 11. Time Remembered (Bill Evans) 3:31 12. Nardis (Miles Davis) 3:35 13. Autumn Leaves (Joseph Kosma-Johnny Mercer-Jacques Prévert) 6:44 14. Emily (Johnny Mandel-Johnny Mercer) 5:44 15. Quiet Now (Bill Evans) 3:42 16. Nardis (Miles Davis) 8:06
(M1-M6) Bill Evans, Unaccompanied Piano. Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, Late November, 1965. (M7-M12) Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Alex Riel (ds) Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, Late October, 1966. (M13-M16) Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Marty Morell (ds) Stakladen, Aarhus, Denmark, November 21, 1969.
(Tracklist) 1 Round Midnight (Monk) 2 Huub (original) 3 Erroll (original) 4 Take The A-Train (Strayhorn) 5 Masquelero (Shorter) 6 I Love You So Much It Hurts (Tillman)
M1." Round Midnight"は、冒頭のピアノの比較的弱い音の早弾きから、ドラムはブラッシでスネアドラムを叩く音で展開しうねるような強弱で、時にシンバルを入れ、ベースは落ち着いたメロディーを流す。流れとしてはドラムスが印象深い。 M2." Huub"になって、ベースの軽快なリズムにピアノは前衛性を増し、ドラムスとともインプロが冴え渡る。 M3."Erroll"ドラムスとピアノの競演の極み。終盤ドラムス・ソロが楽しめる。 M4."Take The A-Train" 時に入るピアノの早弾きによる懐かしの旋律にほっとする。 M5."Masquelero" ここでも、ピアノとドラムスの競演が華々しく展開。ピアノのクラシック・ジャズ演奏と前衛性の競合がお見事。 M6." I Love You So Much It Hurt" ゆったりとピアノとドラムスの掛け合い。スティックによるリズムが冴え、シンバル音の響きが強烈。
(参考) Han Benninkリーダー・アルバム Instant Composers Pool (1968年、Instant Composers Pool) Derek Bailey & Han Bennink (1972年、Ictus) A European Proposal (Live In Cremona) (1979年、Horo) 『円環の幻想』 - Spots, Circles, and Fantasy (1988年、FMP) 『3』 - 3 (1997年、VIA Jazz) # Jazz Bunker (2000年、Golden Years Of New Jazz) Free Touching (Live In Beijing At Keep In Touch) (2004年、Noise Asia) Home Safely (2004年、Favorite) 3 (2004年、55 Records) # BBG (2005年、Favorite) # 『Monk Vol.1』 - Monk Volume One (2008年、Gramercy Park Music) # Laiv (2010年、Bassesferec)
1. Fragile* 2. Valentine* 3. Dear Soulmate* 4. I Wish You Love(Keely Smith)# 5. Night Light* 6. Ég Veit Þú Kemur(Elly Vilhjálm) 7. Falling Behind* 8. Best Friend# 9. Like The Movies# 10. The Nearness Of You(Hoagy Carmichel) 11. Let You Break My Heart Again(2021) 12. What Love Will Do To You* 13. Beautiful Stranger* 14. Every Time We Say Goodbye(Cole Porter)
*印: 1stフル・アルバム「Everything I Know About Love」から #印: デビューEP盤「Typical Of Me」から
現在はロサンゼルス在住の彼女が、去年10月、生まれ育った故郷のアイスランドはレイキャビクの歴史あるハルパ・コンサートホールでアイスランド交響楽団と共演したときのパフォーマンスをライヴ収録したアルバムである。 昨年リリースし話題となっている1stフル・アルバム『Everything I Know About Love』(*印、アルバムは下に紹介)の自作曲を中心に、以前のデビューEP盤『Typical Of Me』(#印)からと、スタンダード曲のカヴァーなどが収録されている。 まさにチェロやギターなどを弾きながらオーケストラをバックにしての相変わらずの魅力たっぷりの歌いっぷりは見事と言わざるを得ない。クラシックに通じている彼女としては、オーケストラとの競演はこれ又一つの目指すところであろう。ジャージーな味付けも忘れていないところが見事。 しかし、私としては、このオーケストラ版も面白いが、やっぱり昨年リリースされたジャズ的味付けによるヴォーカル・アルバムの方が好みである。そこで、その人気アルバムを以下に紹介する。
彼女は2021年にバークリー大学を卒業。現在は本拠地をロサンゼルスに移して活動中とのこと(チェロ奏者、ギタリスト、ピアニスト)。今回のフル・アルバムは以前にミニ・アルバムをリリースして好評だった延長にあって、同様な音楽的資質と学習・研究成果を反映したものと受け止められたのであった。 2021年にEP『Typical of Me』でデビューし、収録曲“Street by Street”が瞬く間にアイスランドのラジオチャートでトップに。さらに東南アジアとアメリカではTikTokから人気に火がつき同じZ世代の支持を獲得し、SpotifyのJazzチャートでは世界1位を記録した曲“Valentine”がある。
(Tracklist)
01.Fragile 02.Beautiful Stranger 03.Valentine 04.Above The Chinese Restaurant 05.Dear Soulmate 06.What Love Will Do To You 07.I've Never Been In Love Before 08.Just Like Chet 09.Everything I Know About Love 10.Falling Behind 11.Hi 12.Dance With You Tonight 13.Night Light 14.Slow Down 15.Lucky for Me 16.Questions For The Universe
とにかく、彼女独特の優しさの上に何となく深みのあるロマンティックな美声の歌は、若さとは違ったむしろ大人っぽさのある歌いまわしで驚く。このアルバムの曲は、M6."初めての恋 I’ve Never Been in Love Before"以外はオリジナルであり驚く。クラシックで育ったこともあってか、さすがロック系でなくポピュラー、ジャズ、ボサノヴァといった曲との融合した世界であり、又バラード調も得意としているし、かなりの説得力だ。これなら、大人のジャズ・ファンもお気に入りになりそう。
往年のジャズボーカルのスタイルを現代風の表現で一部語り聞かせるところもあって、心憎いほどの親密感のある歌声をしっとりと聴かせる。ただヒットしたアルバムタイトル曲M9."Everything I Know About Love"は、ちょっと一風変わっていてクラシック・ストリングス演奏から入って、変調してBillie Eilischに歌わせても面白そうな現代調を感ずさせるバック演奏の曲で、"私は愛について何も知らない"と迫ってくる。 スタートのM1."Fragile"はギターをバックにボサノヴァの展開を匂わせつつ、彼女の曲の特徴のとしてのクラシック調の味付けを交えての異なるジャンルの曲の融合が旨い。 M2."Beatiful Stranger"やM5."Dear Soulmate"の優しげなムードもなかなか出色。 一方ジャズ・バラード調も得意で 人気曲M3."Valentine"(この曲はLPでは収録無かったり入ったりしているようだ)は女性コーラスとの交わりに味付けが旨い。ギターのみの弾き語りによるM11."Hi"などもしっとりとした歌が見事。 又ジャジーな味付けもM6."What Love Will Do To You",M7."I've Never Been In Love Before"に聴かれるし、M8."Just Like Chet"のChet Bakerを哀しく描くところはジャズ心だ。 M12."Dance With You Tonight"は、懐かしポピュラームード。M13."Night Light"は、LP締めの曲、ストリングスが入ってコーラスとの歌が見事。
アルバム冒頭のM1."Wave"に戻るが、ここでは静かにして繊細な美しいピアノ、優しく響くシンバル音、それを支えるベースの響きに絶妙なトリオの交錯の見事な演奏がによって、瞑想的に迷入してゆくような流れに乗せられた領域に入る。 M2."Quarantine"では、単なるドラマー主導の曲展開でないことが十分感じられ、中盤のベースの演奏に惹かれる。 M3."Alice In Wonderland"のスタンダードで、アルバム中盤でほっとさせるところもなかなか上手だ。
これは英国(と、言ってもアイルランド)のSSWのイメルダ・メイImelda Mayの6枚目のスタジオアルバムである。2021年4月のリリースで既に2年の経過があるが最近はストリーミングにより聴いていた。しかしやっぱり手元にCDとして置いておきたい思う濃いアルバムであり、意外に取り上げられていないのでここに紹介する。 彼女に関しては、ここで何度か話をしてきたが、ジャンルはジャズというよりはロックだ。しかしジャズとして聴ける曲も多く、とにかく歌がうまい。私としては"アイルランドの美空ひばり"と名付けて以前から注目してきた。近年ではジェフ・ベックとの共演の"Cry me a River","Lilac wine"等が出色。そして、出産、離婚後の変身が凄くて前作『LIFE.LOVE.FRESH.BLOOD』(2017)でビックリ、その後のライブ活動も凄く、このアルバムも変身後の2作目で注目度も高かった。
01. 11 Past the Hour 02. Breathe 03. Made to Love(feat.Ronnie Wood etc) 04. Different Kinds of Love 05. Diamonds 06. Don't Let Me Stand On My Own(feat.Niall McNamee) 07. What We Did in the Dark(feat.Miles Kane) 08. Can't Say 09. Just One Kiss(with Noel Gallagher, feat.Ronnie Wood) 10. Solace 11. Never Look Back
私はM1."11 Past the Hour"のタイトル曲(UKのSSWであるPedro Vitoとの共作)が大歓迎だ。ロカビリー色の欠如で彼女のファンからは異論があっただろうが、アダルトコンテンポラリーの世界は確実に魅力を倍増した。パワフルなゴスペル調(描くは失った人への思い)の曲で、Imelda Mayの圧倒的なヴォーカルが際立つ。ダークでちょっと暑いバラードだが、彼女の声がかっては考えられない重さでのしかかってくる。中盤からのきしむようなギターがこの曲の一つの焦点で悲しみと不安を描く。 この曲は、失った世界から新しく旅する自分を赤裸々に訴えて、愛する人を失った人々に向けた慰めと希望を与える世界だ。背景には、社会から疎外されているコミュニティや制度的不平等に取り組む組織を支援することを目的にアイルランド政府の立ち上げた「Rethink Ireland」キャンペーンのために、彼女が書いた「You Don’t Get To Be Racist and Irish」という詩が、世界的に注目を集めた状況を思い出すと単純でない諸々が見えてくる。 重大なものを失った人々にその悲しみと孤独を共有し、同時に、時間が癒しの力を持つこと。しかし時間が過ぎ去っても、人間的思い出を忘れないでいることの重要性を訴えている。とにかく強い歌声と、力強く美しいメロディが圧巻。彼女の音楽性は、ロックやブルースをベースにしながらも、ジャズやソウルなどの要素を取り入れた独自のサウンドが結実している。
ここに彼女の言葉を記す・・・・ 「“11 Past the Hour”は私の真実です。私は常に意味を持って、心を込めて詩を書いています。それぞれの特別な瞬間に、自分の物語を介して人々と繋がることこそが私が書く理由であり、だからこそ、たとえほんのひと時でも、人々と繋がれることを願っているのです。私たちが折にふれて感じるものを、言葉や音楽にすることができるのだと思いたい。私たちは皆、笑い、歌い、愛し、泣き、踊り、キスをし、他人を大切に思っています。私たちは皆、欲望、怒り、喜び、心配、悲しみ、希望を経験します。時には静かに全てを抱え込み、時には踊りながら吹かれる風の中に全てを投げ出すこともありますが、一つだけ確かなことは、私たちは共にこの人生を歩んでいるということ。それぞれの歌は私の人生の瞬間です。それぞれの人生は時代の一瞬。一分一分が大切なんです」
その他一連の曲は・・・ M2."Breathe"、M3."Made To Love"(LGBTQ) とエネルギッシュでポップな曲が続く(Ronnie Woodをフィーチャー) M4."Different Kinds of Love" 情緒豊かなヴォーカル M5."Diamonds" ピアノのバックに叙情的スローバラード、深く美しき感謝の訴え(真純なる愛に感謝) M6."Don't Let Me Stand On My Own" Niall McNameeとのデュオ、民族的、牧歌的世界 m7."What We Did in the Dark " Miles Kane とのデュオ。アップ・テンポで典型的ロックだがどこか切なさが・・・ M8." Can't Say" 説得力の優しさあふれるバラード。彼女の訴えの歌い上げが聴き応え十分。歌詞は重く印象的な曲。 M9." Just One Kiss" 典型的な懐かしロック(Ronnie Woodをフューチャー) M10."Solace" かなり品格のあるバラード、彼女の美声に包まれる。人生の光明をみつけて・・・ M11."Never Look Back" 祈りに近い訴え
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