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2006年12月24日 (日)

<序言> 「灰とダイアモンドの世界」は・・・・映画「灰とダイヤモンド」、Rock「The Final Cut」

 松明のごと、なれの身より火花の飛び散るとき

  なれ知らずや、我が身をこがしつつ自由の身となれるを   

 持てるものは失わるべきさだめにあるを

  残るはただ灰とあらしのごと深淵に落ち行く昏迷のみなるを

    永遠の勝利のあかつきに、灰の底ふかく   

 さんさんたるダイアモンドの残らんことを・・・・・・

(ポーランドの詩人ツィプリアン・カミル・ノルヴィットcyprian kamil norwidの作品「舞台裏にて」にあるという一節である。訳は映画「灰とダイアモンド」の日本語字幕から)      

<映画>
アンジェイ・ワイダ監督「灰とダイアモンド」=私の映画史(1) 1958 ポーランド映画

Dvd  第二次世界大戦後のソ連体制下のポーランドにて、共産派新政権に対してレジスタンスに生きて悲惨な死をとげる若き闘士(マチェック)を描く。
 バーにいた美しい給仕クリスチナとの愛を知り、生きることの意義を知る中で、自分のテロリストの意義は何か?悩みながらノルヴィットの詩”灰とダイアモンド”(廃墟と化した教会で、マチェックとクリスチナは愛を確認する時、そこの墓銘に”君は知らぬ、燃え尽きた灰の底に、ダイアモンドがひそむことを”を見る)と交錯して、ズビグニエフ・チブルスキー演ずる主人公の若者マチェックは、同じ国の人間同士の戦いに無惨な死の時を迎える。壮絶な彼の死のシーンは、観るものにポーランドという国の歴史的状況の複雑な厳しさとその悲劇を訴えてくる。
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監督:アンジェイ・ワイダAndrzej Wajda
原作:イェジー・アンジェイエフスキーJerzy Andrzejewski

キャスト
 ズビグニエフ・チブルスキーZbigniew Cybulski :Maciek
 エヴァ・クジイジェフスカEva Krzyzwska : Krystyna
 アダム・パウリコフスキーAdam Pawlikoski : Andrzej

 世界歴史上(もちろん日本に於いても)、「灰とダイアモンドという言葉が我々の耳にすることになるのは、やはりアンジェイ・ワイダの映画が大いにその役割を果たした結果であろう。その言葉の意味は、若き人々の生き様に強烈なメッセージを送っている。ポーランドの作家であり詩人であるノルヴィットは、歴史的な困難を抱えた国において、人間を深く見つめ、懐疑と聡明なる知力にて、人というものに迫ったという。   

Photo_3                 

 *          *          *          *

音楽(ROCK)
 
 Pink Floyd / 「the final cut」 1983 

 ロック・グループPink Floydを語るとき、結成当初のシド・バレット(今年2006死亡)は忘れられない存在であることは論を待たない。しかし、世界に彼らの存在を知らしめることになるのは、当初からのメンバーであるベーシストのロジャー・ウォーターズのコンセプト(その一つは「狂気The Dark Side of The Moon」=”月の裏側の世界”)、そしてブルージーなディヴィット・ギルモアのギター・サウンドが主役である。しかしウォーターズの存在したPink Floydの最後のアルバムとなるこの「the final cut」こそは、数多いロック界に残る名盤の中でも、一際灰の中に光る一粒のダイアモンドのごとく存在する。

Thefinalcut a requiem for the post war dream by roger waters と記し、彼の父親(彼が生まれた直後に戦争に出征し、その戦いで死亡したためその後一度も会っていない)に捧げられたところに、彼のソロに近いアルバムであるとの評価は間違っていない。
 ロック・アルバムというものの考え方や評価、音楽論に於いても、グループ活動が長い年月を経ると、その中には次第に相違が生まれ、亀裂が生ずるのは多くのグループが経験することだ。ピンク・フロイドも例外ではない。そして分裂の危機感ある緊張の中で作られたのがこのアルバムである。そのようなものであるだけに、逆に中身は濃い。ウォーターズの主張は先鋭化して前面に出る、そうしたことに対立したギルモアであるが、彼の奏でるギターのサウンドは極めて哀しく美しい。
Thefinalcutart

 このアルバムの最後の曲である”two suns in the sunset”に、ロジャーによって書かれた詩には、”灰とダイアモンド”という言葉が登場する。

   ついに ボクは理解した 

    後に残された少数者の気持ちを・・・・

    灰とダイアモンド

    敵と友人

    結局 僕らは皆おなじなのだ

                    (山本安見 訳) 

 (注: 最後の文章"結局 僕らは皆おなじなのだ"は、むしろ"最後の時を迎えたときは、僕らは全ておなじになってしまうのだ"と、訳す方が解りやすい)

 と、ここにこのように”灰とダイアモンド”が・・・・・・・・。

 この「Final Cut」の世界は、ウォーターズが英国の”フォークランド紛争”の悲惨な現実を見たときに、彼の問題意識による血が騒いだ結果であり、父親の戦死と交錯して、若い命を奪われていく無惨な世界に黙っていられなかった結果でもある。それはPink Floydとして長く繋がれてきた仲間とも袂を別にしてでも、このアルバムを通して訴えざるを得ないところに追い込まれたとみてよい。つまりそれは彼の生涯の戦いのテーマでもある為に。
  そして一方、このアルバムの曲"southampton dock"には、息子を戦場に送る悲痛な母親の姿が歌われ、特に英国市民の善良な兵士の母親達の涙をさそうことになった。

 このブログのプロローグでは、ここまでにとどめよう。しかし、この「灰とダイアモンド」のテーマはこれがスタートである。 

(このブログには、各種の本の表紙、話題対象の写真、人物写真、音楽CDジャケ、映像DVDジャケ、又それらの内容の写真等多く登場するが、公開されたものに限定し使用いたします。”研究用にとして公開されたものを使用”という理由により、著作権には抵触しないと判断しています(著作権法32条)。・・・なお問題があればご連絡ください>真摯に対応いたします)

 

  

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コメント

こんにちは。僕のおじいちゃんも戦争体験しています。もう亡くなってしまいましたが尊敬していました。『ファイナル・カット』は高校時代友達と一緒に聞いたです。

投稿: 西山智(さとる) | 2010年4月27日 (火) 12時38分

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ダイヤモンドダイヤモンド(Diamond;金剛石、ダイアモンドとも言う)は、炭素が高温高圧の地球内部で圧縮され生成される8面体構造を持つ炭素の結晶であり、自然に生成される鉱物の中で最も硬い(理論的には、ダイヤモンドの炭素原子が一部窒素原子に置換された、立方晶窒化炭素はダイヤモンド以上の硬度を持つと予...... [続きを読む]

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