ピンク・フロイドのREUNIONはあるか?
ピンク・フロイドはLP時代に終わった。
ピンク・フロイドといえば、伝説のシド・バレットはさておき、このバンドが最も紆余曲折を繰り返しながらもロック界に確固たる地位を確保したのは、ロジャー・ウォーターズ、デヴィット・ギルモア、リチャード・ライトそしてニック・メイスンの4人によるメンバーによっての活動期である。
けっして少ないとは言えない作品群からみて、それは1968年から1979年までの11年間であったことは、今振り返ってみて意外にも短い。ロジャーが脱退して、今日でも再結成の希望的発言が後を絶たないが、特に2005年7月のLIVE8におけるロジャーからの呼びかけで、取り敢えずは4人による演奏が我々の目の前に見られたことは更にその期待を大きくしているのかも知れない。しかし、ロジャーの脱退は1985年であり既に20年も経過している。この間のそれぞれのメンバーの人生と音楽活動は、全く異質のものであって、今後ピンク・フロイドのビック・ネームの為に、4人が過去の曲を演奏することはあっても、又仮に合同の作業があったとしても(それは4人による一曲ごとの作成は可能性はあっても)決してアルバム作りが行われることは、あり得ないと断言する。
ピンク・フロイドは、アナログLP時代と奇しくも一致して終わった。又そのアルバム・タイトルも「the final cut」である。このアルバムはロジャーのソロと言われるとおりの、リックは解雇され、ニックすらも期待薄の状態で、ギルモアにおいても共作者というよりギタリストとしての参加であった。
その後は、ピンク・フロイド時代の’78年にコンセプトは出来上がっていたが、それぞれのメンバーに否定され作れなかったものを、ロジャーはエリック・クラプトンを迎えてソロとして「THE PROS ANDCONS OF HITCH HIKING」 を製作。これがLP時代の最後の作品である。
丁度この時期をして音楽業界はLPからCDへ。そして視覚的なアルバム作りも盛んになり、VideoTape(βの敗北、VHSへ)、LDの登場となってゆく。
ギルモアも’84年にやはりソロLPの「ABOUTFACE」をリリースしている。ここでロジャーとギルモアの別れが現実化し、ピンク・フロイドの本質的解体となった。
しかし、ギルモアはソロの不成功から「ピンク・フロイド」の名にこだわったことから、両者の対立は本格化するが、ロジャーのコンセプトはとどまることを知らず、「WHEN THE WIND BLOWS」、「RADIO K.A.O.S.」と、戦争問題に迫り核戦争の危機にスポットをあて訴える。
一方ギルモアは、ピンク・フロイド・ネームの獲得にニックを巻き込むことで成功し、アルバム「鬱」をリリース。しかし、過去のフロイド・サウンドの踏襲に終わり、一般大衆化したフロイド・ファンは喜ぶも、評価にはほど遠い作品となる。
その後に両者の違いが決定的となったのは、ロジャーはソロ「RADIO K.A.O.S.」(1987)を経て、1992年には「AMUSED TO DEATH 死滅遊戯」を発表した。
天安門事件、ソ連・東欧諸国の政変、湾岸戦争、宗教対立などなどを取り上げたのだ。それと同時に、それをテレビにて傍観いることの人類の恐ろしさなど、人間に迫る問題作をジェフ・ベックのギターで歌い上げる。
こうしたコンセプト・アルバムはロジャーの本質である路線の一つの頂点でもあり、既にギルモアとの世界の違いが明確になったところ。
しかし、一方ギルモアとメイスンのピンク・フロイドは、なんと資本主義社会の金にものを言わせ、それを謳歌してのカー・レースを自分たちが楽しむという「La Carrera Panamericana 道」(1992年)をLD盤を中心に発表。
ロジャーをして過去に自分は人生をかけて作り上げてきたピンク・フロイドという名を冒涜するものと怒らせた。
こうした決定的違いの上に、ロジャーは法廷での「ピンク・フロイド」使用権争いに敗れた為、自分の作った曲ですら演奏し録音録画の公開することを禁じられた。更に自分の作った曲を、ギルモアやニックのお祭り騒ぎのライブに使われていくことに耐えなければならなかったのである。
こうした事に対してのロジャーの怨念はすざましいものであり、それに加え社会感覚の違い、ロックという音楽感覚の違いということの事実は、今後一緒にアルバム作りなどあり得ないことを示している。REUNIONはあり得ない。
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