ジャック・ルーシェJ.Loussierとプレイ・バッハ(その4)
第3期を迎えたジャック・ルーシェ・トリオ
1985年の2期トリオが1990年代にかけて円熟味を増す中で、テラークと契約して、彼らの意志かレコード会社の希望なのか、その点は定かでないが、1997に我々を驚かすことが起きる。
約40年ルーシェはバッハのみにその作品を作り上げてきたが(モーツァルトを自作曲集で一度取り上げてはいるが)、1996年ついにバッハ以外の作曲家の作品にアプローチを開始した。
「ヴィヴァルディ:四季」(TELARC/PHCD-1550)
これは驚きで1997年に発表された。バロックの元祖的ヴィヴァルディの特にポピュラー的にも扱われる”四季”を取り上げたことに、新たなトリオの意欲を感ずることとなった。
しかしこの後、ベースのシャルボニエが倒れ、更にルーシェの方向に変化がもたらされる。
そして1997年、ベースにブノワ・デュノワイエ・セゴンザックを迎え、第3期ジャック・ルーシェ・トリオが誕生し、1998年「プレイ・サティGymnope'dies Gnossiennes」(TELARC/PHCD-1570)
を発表。
ここでもバッハから離れたルーシェを見る。しかもバロックから一歩も二歩も離れたトリオに驚きを隠せなかった。
この1998年には、ピアニスト姉妹のペキネルとジャック・ルーシェ・トリオでバッハの演奏を行っている。
「TAKE BACH」 (TELDEC WPCS10494)
これはジャック・ルーシェの別作業アルバムでした。
そしてこのトリオは更にラヴェルへもアプローチし、ルーシェの作曲した組曲も披露する。
「ラヴェル・ボレロ」(TELARC/PHCD 1578)
ここに来て、ルーシェの名作への挑戦が明確になってくる。
しかし、ここではバッハに立ち返った彼の姿が見える。特にバッハの技術的に難しい曲をお披露目したことは、彼は決してバッハ以外に安易に挑戦しているのではないと言いたかったのだろうか。
「プレイ・バッハ:ゴルトベルク変奏曲」(TELARC/PHCD 1593)
彼の長いプレイ・バッハ歴の40年にしてゴルドベルク変奏曲は初めての録音であった。
2000年になって、前アルバムにて、ルーシェはバッハに戻ったと我々は思っていたが・・・なんと更にピアノ曲制覇を目指すがごとく、ドビュッシーの登場となった。
「フレイズ・ドビュッシー/月の光」(TELARC/UCCT1008/2000)
もうここまで来ると、バッハとは異なる世界を如何にJAZZとして仕上げるかの興味が沸いてくる。しかし”月の光”がこうなって迫ろうとは、ただただ脱帽のトリオの演奏であった。
こうして、第3期ジャック・ルーシェ・トリオは止まるところを知らず、2000年代に入ってもバッハから離れて多彩な作曲家に挑戦するのが続くのである。
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