ジャック・ルーシェとプレイ・バッハ(その5)
ジャック・ルーシェの試み
約10年前にTELARCに移ったジャック・ルーシェは、バッハのジャズ演奏から多くのクラシック作曲家の名曲にアプローチするようになったが、それらは既に取り上げてきた。
「ヴィヴァルディ”四季”」、
「プレイ・サティ」、
「ラヴェル:ボレロ」
「ドビュッシー”月の光”」
そして、トリオとしては3代目のメンバーとともに、更にその世界は広がっていった。
Jacques Loussier : piano
Benoit Dunoyer De Segonzac : bass
Andre Arpino : drums
2001年
「バロック・ヒッツBaroque Favories」UCCT-1045
対象がバロックとなると・・・・ヘンデル、スカルラッティ、アルビノーニなどのバロックの名曲へとジャズ化を進めたのがこのアルバム。
私としては当時は興味半分で面白く受け止めてはいたが・・・。
2002年
こうした成り行きでは、ヘンデルへの”水上の音楽”まで至って行くのは、当然であったのかもしれない。
「ヘンデル:水上の音楽・王宮の花火の音楽」UCCT-1061
これがリリースされた時には、実はここまで来るとは思ってもいなかった。
しかしこうしたヘンデルジャズ化の軽快さというものは、一つには、ルーシェのプレイ・バッハと共通していた部分であったろうと言えるのだ。
2003年
遂に来たるところが来たかと思わせるベートーヴェンの登場となる。
「プレイズ・ベートーヴェンAllegretto from Symphony No.7 Theme and Variation」UCCT-1087
これは彼としても新しい試みであった。交響曲第7番のアレグレットの主題を10通りの変奏をトリオで演奏することを試みたのである。
2004年
ジャック・ルーシェは今度はソロで、ショパンのノクターンの制覇をする。
「J.LOUSSIER Impressions on Chopin's Nocturnes」UCCT-1107
これぞルーシェの真骨頂か?>1番から21番全曲のルーシェ・ジャズ・ピアノを聴かせる。バッハ以外のルーシェの代表作だ。
2005年
「ジャック・ルーシェ・トリオ/モーツァルト ピアノ協奏曲第20番、第23番」UCCT-1146
ここまで来ると、いよいよ行き着くところに来たかという印象だった。これはストリングス・オーケストラとの共演で仕上げたものである。
私にとっては、ちょっとモーツァルトとの印象の違いから、あまり素直に受け入れられないアルバムではあったが・・・
こうして、ジャック・ルーシェの挑戦は、良きにつけ悪しきにつけ楽しませてくれたことは事実である。しかし、彼の築いたバッハ演奏とは、やはり異なった世界であることも私は強調したい。これらの中ではショパンのソロは、それなりに出来上がっているが、それはトリオでなくソロとしての作品であったことが良かったのかも知れない。
そして2006年になって、彼の方向は再びバッハに向かうことになる。(次回)
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