ピンク・フロイドPink Floydの始動と終結(1)
ピンク・フロイドの始動の考察
(サイケデリックといわれた世界から・・・・)
”ピンク・フロイド”は、LP時代の1983年に終わった。それ以降既に25年が経過しているが、彼らの解散宣言はない。そして未だにピンク・フロイドは支持され愛され現実的に一部(?)には存在視されている。しかしそれが如何に無意味な幻想であるか、そのあたりの分析をきちんとしておくこともピンク・フロイドの評価として必要である。
「THE PIPER AT THE GATES OF DAWN (夜明けの口笛吹き)」 Syd Barrett(g,vo),Roger Waters(b,vo),Richard Rright(k),Nick Mason(ds) Produced by Norman Smith
記念すべき、ピンク・フロイドのファースト・アルバム(1967.8)
シド・バレットによる”アーノルド・レイン”、”シー・エミリー・プレイ”のシングル・ヒットがあったことにより実現したアルバム。日本では「サイケデリックの新鋭」という邦題(”シー・エミリー・プレイ”が追加されて)が付いて発売。このファースト・アルバムは現在も高音質のCDにて手に入る訳で(オリジナル・ジャケット・シリーズ2001年発売がお勧め)、ピンク・フロイドの新しい時代のファンにとっても幸せなことである。
それはさておき、このアルバムは11曲によって成るが、うち8曲はバレットによるもので、ウォーターズ1曲、そして4人によるものが2曲である。こうした内容からもバレット主導型であることは間違いない。バレットなくしてピンク・フロイドはない。しかし彼らの演奏する世界は、幻覚作用のあるドラッグのもたらす異常感覚を表す”サイケデリック”と言われるものとして、ビートルズ盛んなりし頃、ロンドンを中心として若者に浸透していった一種のヒッピー文化とつながり、よくもこうしたものがアルバムとしてリリース出来たことは驚きでもある。これにはEMI社のノーマン・スミスのセンスによるところが大きかったことだと思うのである。私自身はリアル・タイムにフロイドを聴いたのは、この次のアルバム「A Saucerful of Secrets 神秘」からで、当時の世相からも資本主義社会の日本は上昇の波、英国はそれに対して既に歪みと隆盛、下降の混在した社会情勢にあって、こうした若者のミュージック・ムーブメントはその背景によって生まれて来ていることを知らねばなるまい。つまり労働者階級の若者に支えられたロックという世界が英国においては、様々なパターンを生み、こうしたドラックと密接な関係にあったサイケデリックなパターンが支持されたのも、社会の産物として見て行く必要がある。しかし後のピンク・フロイドはバレットの天才的曲作りとサイケデリック世界とは別物として支持されていくことになる。
このB面(当時のLP)トップの曲”Interstellar Overdrive (星空のドライブ)”に注目すへきところがある。4人による実験的サウンド、インプロヴィゼーションの流れは、このグループが単なるサイケデリックと言われる以上の彼らの目指していたモノを見ることが出来る。バレットの世界でスタート出来たこのバンドではあるが、この曲こそ後のピンク・フロイドの流れの始動であったと言っても過言でない。後のギルモア加入による新生ピンク・フロイドの共同作業としての位置を占める重要な曲”エコーズ”にも通じるところが見え隠れする。当時のポップ界で既にこの約10分の長さの曲をアルバムにて展開したところは異例である。バレット以外のウォーターズ、ライト、メイスンの3人もむしろ対等に曲を作り上げるところに参加して単なる受けを狙ったポップな世界から明らかに別物である。この曲こそ、この後に続く彼らの活動の原点が感じられる。
「Interstellar Overdrive(星空のドライブ)」こそ、ピンク・フロイドの始動であるこのあたりをbootlegで検証してみよう。
なんと言っても強力なブートは・・・
「PINK FLOYD AJourney Through Time & Space」SCORPIO (←)
”outer zabriskie”と”spontaneous underground”の2枚組で、後者のCDに1966年3月録音の"Interstellar Overdrive"15分44秒の演奏がthompson Private Recording Studioの好録音で聴ける。彼らのポップ・ミュージックとは一線を画す音楽としての展開、そして楽器の秘めたるサウンドへの実験性が実感出来るむしろ壮絶と言える演奏だ。
(なお余談であるが、このブートは「Zabriskie Point」のサントラ盤から漏れた未発表アウトテイクの15曲収録で、歴史に残る貴重ブートでもある) 「The Live PINK FLOYD」 Bulldog Records BGCD018
これは1968年9月AMSTERDAM FANTASIO CLUBにてのもの。この年は既にバレットは危険な状態で、3月からはウォーターズの誘いで正式にギルモアの加入となる。とはいえ、バレット・ファンも根強く、ギルモアに対しての風当たりも厳しい中、ウォーターズはかなり根気よくギルモアを前面に出した。ここでは結構ギルモアはバレット流のギターの役をこなしているのが面白い。又、ウォーターズは独特のベースのリズムの刻みをみせるし、ライトのキーボード(オルガン)もこの後の「モア」の時代を思わせる演奏ぶりである。 「PINK FLOYD the Complete TOP GEAR sessions 1967-1969」 GDR CD 9206
1969年1月の演奏。バレットの代役として迎えられたギルモアもほぼ1年経過し、既にピンク・フロイドのギタリストの位置を作り上げている。相変わらず"Interstellar Overdrive"は、この時既に2ndアルバムの「神秘」は発売されているが、ウォーターズの"Set Controls or The Heart of The Sun"や"A Saucerful of Secrets"と共に、彼らの実験的アプローチの重要な曲として展開されている。「PINK FLOYD ultra Rare Trax Vol.1」TGP-CD114
ここに納められている"Interstellar Overdrive"は1970年2月7日ROYAL ALBERT HALLでのもの(ただし私の持つ記録では、当日のSet Listに、この曲名は見られない。従ってライブ音源の確定は不可。当時は2月15日のEmpire Theatreにてのライブには登場しているし、その後もこの年の3,4,5月には各地で演奏している)。彼らは既にクラシックの殿堂であるこの会場に進出している。メイスンのドラムスは既にこの時には、彼のパターンをこの曲で完成させているし、ギターも一部ギルモアのブルース調も顔をだしていて、この曲はライブでも3年以上長く取り上げられている。
-----------シド・バレットのサイケデリック・バンドとしてスタートしたピンク・フロイドであるが、既にウォーターズをはじめとして、音楽に対しての実験的アプローチが開始されていた。(サイケデリックと表現されるドラッグ幻覚などは、むしろ当時の世相からの産物で、実際にドラッグにはシドのみが関係していたようだ)彼らの歩みはこの当時のライトショーの興味や音楽スタイルへのアプローチから次第に対象が変わっていくことになるが、常にプログレッシブな姿勢は変わらない中でアルバム作りを行うことになる。そして1983年までにリリースされた12枚のアルバムは、決して同じスタイルと見られるものがない。このことこそ、ピンク・フロイドというグループの真髄であり評価のポイントとなるところである。
(その2に続く)
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