ピンク・フロイドPink Floydの始動と終結(3)
重要なウォーターズとギルモアの世界
この数年においても、2006年デヴット・ギルモアのソロ・アルバム「On An Island」の発売とツアーの成功、そして2006年~2007年のロジャー・ウォーターズの「The Dark Side Of The Moon世界 ツアー」の成功を見ると、ピンク・フロイドのビック・ネームの名において支持のあったギルモアもようやく今になって、彼の個人のネームで受け入れられるようになり、ロジャー・ウォーターズはソロになっての歴史も長くなり、数々の業績から今日においては彼はウォーターズとしての存在感を確固たるものとして作り上げて来ている。
しかし、面白いことに、ロジャー・ウォーターズの代名詞は"The Creative Genius of PINK FLOYD"であり、デヴィット・ギルモアの代名詞は、"The Voice and Guitar of PINK FLOYD"である。いずれにしてもピンク・フロイドのビック・ネームは、営業的にはその名は重要であって、それは今日においても全く変わっていないと言うことである。しかし、この代名詞は本人同士も認めているようで、なかなかうまく両者の存在を表している。つまり、ウォーターズのピンク・フロイド創造と成長における真髄の構成への存在と、ギルモアにおいてはギターによるサウンドの貢献である。
ソロ活動を早く始めてその失敗から、いち早く成功の為にはピンク・フロイドの名が、なにはともあれ欲しいと知ったギルモアは何が何でもPINK FLOYDに固執した。一方ピンク・フロイドを明け渡してからソロ活動を展開したウォーターズは、そのPINK FLOYDネームの偉大さを知った時は(遅れをとって)ピンク・フロイドは自分のモノで無くなっていた。この違いが悲しき1980~1990年代の彼らの歴史であった。
既にシド・バレットにより成功の一歩を踏み出したピンク・フロイドに、彼に異変が起きたことによりロジャー・ウォーターズによりギタリストとして、ギルモアを誘う。当時ギルモアの所属バンドもぱっとしない状態であり、すぐさまピンク・フロイド入りした。(左の写真はその当時であるが、これを見るとシド・バレットは蚊帳の外といった雰囲気だ)そして生き様として特徴のない(角のない)ギルモアは敵の少ない人生であっことなども手伝って、メンバーにも支えられ、すぐさま活動に加われたのは、案外ついている人間であるのかも知れない。それに引き替え、ウォーターズは出生直後に戦争により父を失い、父に会ったことのない人生に追いやられ、それが一つのトラウマとして生きて行かねばならなかったこと、そして若きエネルギーを人生で最も傾注したピンク・フロイドというバンドを、妥協の出来ない性格からギルモアとメイスンに引き渡さざるを得ないということになるという、考えてみれば人生の運というものの悪戯か?、つきのない歩みをしてきた(しかし冷静に考えてみると、それであるからこそ、彼のコンセプトには人間を引きつける魅力があるのかもしれない。彼の真摯な生真面目なメッセージはピンク・フロイドを単なる音楽バンドから一歩大きく羽ばたいた因子である)と言える。
この”ピンク・フロイドの始動と終結”というテーマについて語るのは、特にこの両者の歩み無くして語れない。私が言わんとしていることは、始動は「夜明けの口笛吹き」の”星影のドライヴ”であり、「神秘」の”太陽賛歌”、”神秘”であるということは、バンドの方向性が見えた曲であるし、そこには精神が見えることを指摘しているのである。つまり新しいサウンドの創造、楽器そのものの実験、ライブ演奏の新しい形態の構築、そしてウォーターズの歌詞によるメッセージの人間を見つめる深遠さと反体制的批判精神そして反戦思想など、これらがいわゆるプログレッシブなアプローチであったことは事実だ。ピンク・フロイドはこの事が「狂気」で頂点に達し、「ザ・ウォール」で、労働者階級のパンク・ムープメントとは別の、階級を超越した人間と人間社会を追究するロック・バントとして存在意味を確固たるものに構築出来たのである。つまり、シド・バレットでなく、ウォーターズ、ギルモア、メイスン、ライトの四人バンドこそビック・バンド=ピンク・フロイドのスタートなのである。
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