さようなら「写真工業」
「写真工業」2008年12月号(Vol.66 No.716)にて休刊
私の長年親しんだカメラ・写真雑誌「写真工業」が、この2008年12月号をもって休刊となった。1952年6月創刊で56年間、日本の写真産業界の発展に寄与し、リードしてきた雑誌である。まさに日本の写真・カメラの歴史そのものであった。この休刊の理由は、”昨今のデジタル化による業界の急激な変化により、「写真工業」という題号で対応することは難しくなった”と・・・・そして”所期の目的は十分に達せられたとの認識の基に、このたびの運びとなった”と謹告がでている。
この12月号では、小野隆彦氏の「どうなるデジタル一眼レフ」という記事では、”最後にデジタルカメラの設計者に御願いしたいことがある。ぜひ写真を撮って作品をつくる芸術家であっほしい。机上だけで考えて設計したり、市場調査の結果だけでカメラを作らないでほしいのだ。本当に写真が好きな設計者が作ったカメラならば、賛同者はたくさんでてくるはずだから”と結んでいる。更に、コンパクト・デジカメのニコン、キャノンのクールピクスP6000とパワーショットG10 の評価なども記事として取り上げているが、やはり本誌の基本的役割は光学的機器の発展や銀塩アナログ写真の充実に寄与することであったと言える。デジタル時代となって、精密光学機器の意味づけから大きくエレクトロニクスへの変化がその意義が大きくなってきた現在において、一つの時代を象徴している。
それでも、この最終号ではハンガリーの黒白印画紙の登場を紹介しその性能にも評価をしている。一方、”皇后さまがご愛用になったオリンパスペンS”などの記事は泣かせるところである。更に石川文洋の”生死をかけたベトナム取材”という記事は強烈なインパクトがある。
フィルム・モノクロ写真を愛し、現在においても暗室作業としてフィルム現像から印画紙へのプリントを楽しんでいる私にとっては、これからの銀塩写真の将来に不安を抱きながら、この「写真工業」の休刊を寂しく思っているところだ。
この写真工業社は、カメラ機器の研究、レンズの研究、暗室作業への導き、フォトテクニックなどなど写真というモノに関しての書籍の発刊もエネルギーを注いできた。これからの大きな転機の時としてとらえての「写真工業」の休刊かもしれないが、やはり一時代の終わったことを物語っている。
取り敢えず、最近の私のモノクロ写真2枚をここに付けて、「写真工業」の過去の業績に敬意を表したい。
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