今でも強烈な印象のデヴィル・ドールDVIL DOLL(その3)
プログレッシブ、カルト、シアトリカル、シンフォニック、アヴァンギャルド、オペラティック、チェンバー、ゴシックなどなど多彩に形容されるヘビー・メタル・ロック
4th「DIES IRAE 怒りの日 / DEVIL DOLL」 CAT. N. HG-10 ,BELLE ANTIQUE MAR95150 1995
MR.DOCTORなる謎の人物により作り上げられたバンド DEVIL DOLL の私の所持するラスト・アルバムである。ここまでも音楽的に完成度を高めた作品はそうざらにはない。
各パートには分かれていても全編通しての”怒りの日”1曲のみである。
ストリングスの演奏によるによる不安に満ちたオープニング、やがて静寂の雰囲気を作り上げバンドとオーケストラの合奏の中に、女性と男性(Mr.Doctor ?)の不気味なヴォーカル、そしてロック・バンドのスタート。相変わらず全16パートのうち、3パート目には既に虜になってしまう。
スロベニア出身でイタリアにて活動していたとみられるリーダーのMR.DOCTORは、果たして何をめざしていたのであろうか?
この組曲は1993年にほぼ録音も完成させていたさなかに、スロベニアにあるLjubljanaという町にあるスタジオの中で火災が起き(テロとの推測もあるようだが)、録音テープを失って、リリースを一度は諦めていた作品であるようだ。そのため”呪われたアルバム”とも表現されている。政治情勢の複雑なスロベニアにおける活動の難しさは想像に難くない。しかしそうした中から、ほとばしる芸術探求の作品としても十分耐えうる作品だ。1994年になって再レコーディングの期待も高まる中、ついに1995年完成をみたものだ。
不気味で、得たいの知れないヴォーカルとは裏腹に、美しいヴィオリン・ソロ、ピアノ・ソロを挟んでのオーケストラのドラマティックな展開はイタリア音楽の極みすらも吸収している。そしてただだらだらと流れるのでなく、予期せぬ変調とリズム感たっぷりのギター、荘厳なオルガンの響き。本作では女性ヴォーカルの占める位置も多くなり、此が又なかなかのオペラ感覚。いずれにしても暗く退廃的な中に、なんでここまでも美しいのかと忘れ得ないアルバムなのだ。
この後の DEVIL DOLL の消息は私は知らない。そしてこの MR.DOCTOR なる首謀者もどうなったのか?私は知らない。(現代のこと、どこかで詳細は明らかになっているのかも知れないが・・・)むしろこれからの結末は知らないほうが、私としてはこの音楽集団を何時までも一つのロックを絡んでの芸術の極みとして受け入れていけるのかも知れない。
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