ドリーム・シアターの新作「Black clouds & Silver Linings」
進化はあるか?マンネリか?
ロードランナー移籍の前作「systematic chaos」から既に2年経過しての彼らの第10作となるニュー・アルバム「Black Clouds & Silver Liningsブラック・クラウズ・アンド・シルヴァー・ライニングス」 ROADRUNNER Records 1686-178835 2009の登場。
プログレッシブ・メタルというジャンルも定着している現在、この世界を構築した彼らは結構偉大と言えば偉大である。その彼らの1stに引きつけられて以来の10作目となると、それなりに結構感動もある。
今回のアルバムは、CD3枚組で1枚目はこのアルバムのオリジナル全6曲。そしてボーナスCDとして、2枚目はカヴァー曲6曲、3枚目はこのアルバムのインスト・ヴァージョン6曲という構成である。(左パック裏面を参照:クリックにて拡大)
まず、前作があまり記憶に止まらない程度の作であったことから、今作に期待する気持ちが大きかったこと、そして又今回のヒュー・サムのカヴァー・アートが秀作であることからこのアルバムに接することは実は大きな喜びでもあった。
ドリーム・シアターは、あのリフそしてフレーズの多彩さは類を見ないし、展開のドラマティックさはトップクラスであることは誰もが認めようが、いかんせん最近はマンネリ化に陥っていたことは事実だ。彼らは器用であるが故に、ピンク・フロイドを筆頭にカヴァーも見事で、それが実は逆効果を及ぼしていたのではないか?。
そんな中での今作、アルバムとしてのまとまりは十分納得する。オープニング”A Nightmare To Remember”は極めて彼ららしいスタートで期待を持たせ、救急車のサイレンが何か不安な一つの世界を想像させるところは頂きだ。1曲目が16分の大作、このハードな曲展開はむしろ私は歓迎した。それは4曲目”The Shattered Fortress”にも繋がってこの曲の疾走感はいい。ただし、今回登場するマイクのデス声は頂けない。これらの曲をむしろネガティブに作用している。それが不安だったのか?、CD3枚目にインスト曲として披露している。これが実は彼らのマンネリからの脱却を計りたい暗中模索の姿とみた。かってある意味での美しさを描いた中のヘヴィネスが取り柄であったと言えるが、どっかのバンドのようなデス声は全くのマイナスだ。そもそもインスト盤をカップリングすること自体、彼らの曲作りに不安があったのだろう。これはサービスでなく、受けを求めてのナンセンスな抵抗だ。
それはさておき、5曲目の”The Best Of Time”のストリングス、ピアノ、ギターからの入りは美しい。
アルバム全体のラブリエの声も大人っぽくなった。これは賛否両論あろうところだ。しかし、結論的にはこのアルバムはマンネリ感の中の集大成といったところ。けっして駄作ではないが進化は見られなかった。であるが、ニュー・アルバムとしてこうして新曲を聴けるところは嬉しい複雑な気持ちになる。当然今後の頑張りはなんといっても期待するバンドであることには間違いない。
そうそう、2枚目CDのカヴァー集、レインボー、クイーン、アイアン・メイデンになんとキング・クリムゾンと来るから器用な彼らのサービスだ。しかし、よく聴いてみるとクリムゾンの”太陽と戦慄パート2”だって、なんかあのクリムゾンのスリルと不安感が出ていない。どっか違うのだ。クリムゾンをフロイドが演奏したような変な世界である。
もう一度結論的には、ドリーム・シアターのニュー・アルバムは歓迎する。音の単純化の方向にはどうしてもゆけない彼らのスタイルを、今後如何に進化するかの課題を残したアルバムといえるが、アルバムのまとまりは良くさすがと言っておきたい。
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