エヴァ・キャシディの掘り起こしアルバム検証(1)
生きている純粋さと新鮮さ、そして心を打つ歌声
エヴァ・キャシディ Eva Cassidy (正しくはイーヴァ・キャシディといったほうがいいのかも知れない)が、あの彼女の為のバンドといっていい構成の中のベーシストでありプロデューサー(ボーイ・フレンドでもあったという)であったクリス・ビオンドが録音しておいた音源からのアルバム「Live At Blues Alley」は、まさに今でも愛され続けている名盤だ。しかしこれも彼女の短命の死後にリリースされたわけだが、1stとこのライブ盤とのコンピレーション・アルバムがビル・ストロー Bill Straw によって「Songbird」としてリリースされ、英国においては圧倒的な支持され話題になって以降、10年以上経っても、彼女の録音音源掘り起こしを行って、ニューアルバムとしてリリースされいいる事は、驚くべき現象である。如何に聴くものの心を打つ歌声であるかが想像に難くない。そして私もその魅力に感動している一人である。
そうしたアルバムの一つは先頃触れた「Time After Time」(2000年)であり、そしてそれ以降も3アルバムがリリースされている。それらを検証してみよう。
「imagine」 Blix Street Records G2-10075 2002
後に掘り起こされた彼女の未収録トラックの集められたものである。これもビル・ストローによる編集盤だ。このアルバムは、ファンの間では貴重盤ではあることは一致するも、評価は2分している。いわゆる商業的に残り物をかき集めただけでエヴァの本質には迫らないあくまでもテスト・トラック集と言うものと、実はここにエヴァの姿が凝縮されて、エヴァ解釈による曲展開に喝采を浴びせるという人たちもいる。
いずれにしても私はエヴァの基本的なアルバムとして存在する7枚のアルバムの中では、実は好きなアルバムの右翼である。主体はカヴァー曲であっても、彼女の解釈が十分生きている為か、初めて聴いたような印象深い曲として受け止められる。特に、バックがオーケストラ的バンドでなく、彼女の奏でるリアルなギターと小バンドの音にのって唄われるリアル感はたまらない。
it doesn't matter anymore
Fever
who knows where the time goes
you've changes
Imagine
still not ready
early morning rain
Tennessee Walz
I can only be me
Danny boy
ポール・アンカの”I doesn't Matter anymore”でフォーク調にスタートし、”Fever”ではヴァイオリンをバックにリズムに乗って天に届くがごとく歌い上げる。3曲目の”You've Knows where the time goes? ”では、エヴァ節は健在だ。そして続く”You've Changed ”は、Jazzyな面をたっぷり堪能させてくれる。このあたりが私の好むところ。
そしてジョン・レノンの”Imagine”でも、これほどレノンと異なった世界で、しっとりを聴かせてくれる歌手はいるだろうか。彼女のすんだ歌声と造り上げる世界は一聴に値する。それに続く”Still Not Ready”は、精彩に欠けると評価するものもいるが、サックスの音でスタートして、ベースとともに、けだるさを唄い上げるJazzの世界は私は評価するし好きだ。”Tennessee Waltz”,”Danny Boy”などの唄い込みも、見事と言わざるを得ない。
とにかく、力みがなくしかし丁寧な曲づくりと歌い上げは、これはこれ一つのアルバムとして評価したい。全体をスロー・ペースの曲が占めているため、パンチという点では欠けているとみられがちであるが、決して内容は低くない。私は推薦するアルバムと言っておこう。
続く、「American Tune」「Somewhere」の2アルバムは次回に検証する。
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コメント
親愛なる風呂井戸さま。私の勘違いかもしれませんが、最新のイギリス・チャートでエヴァ・キャシディのアルバムがチャート・インしていたような気がします。勘違いだったらごめんなさい。でももしそうなら、これは凄いことだと思います。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年2月28日 (月) 21時51分
プロフェッサー・ケイさん、コメントどうも有り難うございます。
そのエヴァ・キャシディのニュースは知らないでいました。ほんとならまさに凄い話ですね。最近、いろいろと美女狩り(女性ヴォーカル探求)をしていますが、やはりエヴァの美しい歌声はピカイチですね。
投稿: 風呂井戸(*floyd) | 2011年2月28日 (月) 22時56分
親愛なる風呂井戸さま
やはりアルバム・チャート・インの話は事実でした。BBCで先週は5位ダウンの14位でした。ということはその前の週は9位だったことになります。アルバム・タイトルは「Simply Eva」というもので、当然のことながら編集盤でしょう。しかし、いまだにチャートに入るのですから、彼女の音楽は不変ということだと思います。あるいはイギリス人の感性が優れている証拠かもしれませんね。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年3月 1日 (火) 21時34分
プロフェッサー・ケイさん、情報有り難うございます。最近、エヴァ・キャシディはノー・マークでしたのでお聞きしてよかったです。今年の1月にUKとUSでニュー・アルバム「Simply Eva」としてリリースされていました。ソロのアコースティック版で未発表ものと言いますから、録音されていたものの編集盤ですね、多分。リリース元はBlixStreet Records からですから、今までと同じですね。さっそく注文しました(笑)。しかし、今も掘り起こししているんですね。商売にもなるんですね、恐ろしい事です。
投稿: 風呂井戸 | 2011年3月 1日 (火) 22時57分