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2009年9月11日 (金)

エヴァ・キャシディの掘り起こしアルバム検証(2)

リハーサル・テープからの構築されたアルバムは・・・・

 エヴァ・キャシディの掘り起こしアルバムの検証をしているわけであるが、この私のブログでも取り上げている英国の注目女性歌手のケイティ・メルアも、彼女の作品群には、エヴァに触発されているものも少なくないと言われている。面白いのは”DUET IMPOSSIBLE”という企画で、エヴァの残されたビデオ映像とダブらせてケイティがデュエットを試みている。("What A Wonderful World","Over The Rainbow"などの曲)
 このように今も愛され続けているエヴァであるだけに、未発表録音ものをアルバムとしてリリースされて来ているのも不思議なことではない。それらの検証として前回までに取り上げてない残る2枚をここでみてみよう。

Americantune アルバム「Imagine」から一年の経過の2003年、再びスタジオ・デモ、リハーサル・テープを掘り起こしてのアルバムの登場となる。
「American Tune」 Blix Street Records G2-10079  2003

評価の分かれた前作に比して、これもクリス・ビオンドが持っていたテープをビル・ストローが編集したもので、かってのアルバム「SongBird」に纏め上げられた作品群と比すと、出来には若干の見劣りがあっても、全体に明るさと作品としての発展性に富んでいて意外に好評であったものだ。

    drowning in the sea of love
    true colors
    the waters is wide
    hallelujah i love him so
    god bless the child
    dark eyed molly
    american tune
    it don't mean a thing
    yesterday
    you take my breath away

 オープニングのジョー・サイモンのヒット曲”Drowning In The Sea Of Love”そして4曲目のレイ・チャールズの”Hellelujah I Love Him So”など、彼女にとってのおなじみバック・バンドのKieth Grimes のエレクトニック・ギターに乗って、軽快に歌い上げる。又、エヴァが好んだというビリー・ホリディの曲の中の”God Bless The Child”などは、得意のJAZZYなアプローチで力みなく低音部から高音部への豊かな発声でのオーソドックスな曲に仕上がっている。ポール・サイモンの曲で、このアルバムのタイトルとなった曲”American Tune”は、どうもそれほどのインパクトはないが、安心して聴いていられる彼女の唄である。その他”Yesterday”までもエヴァ節で歌い上げている事には驚いた。
 とにもかくにも、こうしてリリースされたアルバムには、聴くものにとってはその出来映えと言うよりは、彼女の未聴の作品群に興味と期待を持って迎入れた。それほど、彼女へのファンの思いは大きいと言えよう。
 

Somewhere つい昨年(2008年)には、なんと彼女の死後10年以上を経て、掘り起こし未発表録音テープによるニュー・アルバムのリリースとなった。
「SOMEWHERE」 Blix Street Records G2-10090  2008

 ここまでするのかと思うほどであるが、やはりクリス・ビオンドの手にあった録音テープをビル・ストローが編集している。このアルバムの特徴は、一部の曲にはホーン・セクションやコーラスを後から加えられて曲作りをしたところだ。

    coat of many colors
    my love is like a red red rose
    ain't doin' too bad
    chain of fools
    won't be long
    walkin' after midnight
    early one morning
    a bold young farmar
    if i give my heart
    blue eyes crying in the rain
    summertime
    somewhere

 後付けされた楽器の音が加わってか、特に”Ain't Doin' too Bad”、”Chain of Fools”の2曲はこれまでの掘り起こしアルバムには見られなかったやや派手な曲の展開がある。これを良しとするかはいろいろの見方があろうが、「imagine」のようなアルバムを好む私にとっては、あまり歓迎しない。やはりエヴァはやや控えめのバック・バンドに、彼女自身のアコーステック・ギターに乗せて、じっくり聴かせてくれる歌声が似合うように思う。そんな意味ではここまでくるとそうならざるを得ないのか、若干作りすぎの感あるアルバムであった。
 又、全体的印象としてはアルバムの中間部では、カントリー・ソング的感覚が支配する作品作りがされている。このあたりも若干私の好みとは異なるところであった。
 彼女の死後12年を経て、ニューアルバムの登場には驚かされる訳であるが、いずれにしても彼女の愛されている技のなすところ、我々は大いに歓迎していいのであろう。アルバム最後の曲”Somewhere”は、このアルバムの中では全体の流れとしても異質な曲である。しかし、むしろこれを聴かせたいために作られたアルバムであったのかも知れない。と、などなど・・・いろいろと想像しながらも、楽しんでいる私です。

 エヴァ・キャシディの死後、名盤「Live At Blues Alley」の後の残されたリハーサル・テープ、デモ・テープなどから作られた4枚のアルバムを検証してみた。私はもちろん彼女の死後12年経過した今年に初めて接したわけで、外盤のみでしか手に入らないアルバム群ではあるが、こんなに親近感が持てたのも不思議なことであった。
 これからも、一人でも多くの人が彼女の唄声に接して欲しいと思いつつ、この検証を閉じる。

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コメント

こんばんは。Eva Cassidyのアルバムについてのブログを読んで、思わずコメントを書いてしまいました。私もまず「Imagine」や「Eva by Heart」から聞いてみたいと思います。とても参考になる情報をありがとうございました。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2009年9月13日 (日) 00時06分

プロフェッサー・ケイさん、コメント有り難うございます。私もケイさんの精力的なブログに圧倒されながら何時も拝見させていただいてます。このところ、ちょっと私はロックから少し横道にそれて、JAZZYな女性ヴォーカルに寄ってますが、まぁ幅広く、良いものは良いとして楽しみましょう。^^)

投稿: 風呂井戸 | 2009年9月13日 (日) 11時47分

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