フェイツ・ウォーニングのプログレッシブ・メタルの道(3)
プログレッシブHMの彼らの第2の頂点に・・・
アルバム「Perfect Symmetry」(1989),「Parallels」(1991) にてプログレッシブ・メタルという世界の一つの頂点を築いた彼らではあったが、続く「Inside Out」(1994)のリリースまではジム・マテオス主導の同一メンバーでのかなり実験的そしてテクニカルな奏法による一連の音楽作りをしてきている。
そして3年後の1997年、あのラッシュを手がけたテリー・ブラウンを再びプロデューサーに迎え、ジム・マテオスの新たなる試みが始動して、更なる頂点を目指した。
8thアルバム「A PLEASANT SHADE OF GRAY」 Metalblade Records VICP-60051 1997
なんと言っても、それは更なるプログレッシブなHMの実験的試みの新展開を果たすことになる。メンバーにあのドリーム・シアターを離れたケビン・ムーア Kevin Moore (Key boards)を招聘、ベースはジョーイ・ヴェラにチェンジしている。
曲はなんとアルバム全体を12の組曲的構成による約50分の1曲で仕上げた。曲の印象はキーボードの流れに、それぞれのメンバーが丁寧な演奏を乗せて盛り上げて行く。その展開はまさにプログレッシブな感覚に裏打ちされた説得力のある演奏とメロディー、そして一つ一つの音をここまで大切にした作りは出色である。HMのギター・リフも散りばめてはいるが、トータルの曲の構成の中ではそれがメリハリとなり、一方ピアノの音の流れも加わって明らかにドリーム・シアターとは一線を画すタイプのプログレッシブ・メタルの極致を知らしめる。
ビンク・フロイドを代表として、曲の展開と流れにロックというジャンルを超えた音楽性を構築するバンドを好む私にとっては、当時彼らの持ち前のダークさをもっての精神性を追求するサウンド作りに久々の感激を持って迎えたアルバムであった。
そしてこの作品は、ヨーロッパで圧倒的な支持を得て、彼らは1998年ヨーロッパ・ツアーを展開。この”A Pleasant Shade of Gray” の全曲と過去のヒット曲を聴かせてくれた。
その模様が、彼らの初のライブ・アルバム :
「STILL LIFE」 Metalblde Records VICP-60509-10 1998
に収められている。
キーボードの加わった曲展開は、ヨーロッパでの支持を受けた大きな因子であったのかも知れないが、ここに過去の変拍子を構築してきた実力が加わっての成果とみたい。ただし、ライブではキーボードは、ムーアに変わってジェイソン・キーザーが担当している。
この当時の映像は、2000年リリースのDVD 「Live at the DYNAMO」 で観ることが出来る。
これは1998年5月30日の”the Dynamo open air festival ”にての収録映像。
いつぞや書いたことがあるが、どうもこのバンドは、ライブの姿が今ひとつ私のこのバンドに持つ印象の世界と違うのだ。強いて言えば、メタル・バンドという建前を前面に出すためか、ステージのパフォーマンスと曲やアルバムのどちらかというとダークな、そして哲学的なイメージとが異なっているように感ずるのだ。私は、このフェイツ・ウォーニングは、アルバムをトータルにジックリ聴く事の方が好きだ。
このバンドの最高点に位置する「A Pleasant Shade Of Gray」まで言及できたが、次なる彼らの「DISCONNECTED」と近作の「FWX」の2アルバムについて、更に次回に検証したい。
(視聴)
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