マリリオン marillion 回顧(1)「Brave」
マリリオンの存在感は社会を見つめる眼だ
プログレッシブ・ロックは1960年代から1970年代には、最も大衆のミュージックであるロックに、クラシックやジャズ的手法を取り入れ、新しい音、新しい手法、そしてコンセプト・アルバムの誕生と、新しい分野として注目された訳である。しかしこの形はいずれにしても形骸化して行く宿命にあり、多くのプログレ・バンドは崩壊した。
しかし、その流れは決して消えるものでもなかった。その一つがマリリオンが築き上げた世界でもある。
1994年”2期マリリオン”の第3作 :
Marillion 「Brave」
EMI records / Tocp-8186 / 1994
まさにこのアルバムこそ、彼らの最高傑作と言っていいだろう。
1983年にアルバム「独り芝居の道化師 Script For A Jester's Tear」でデビューを果たした彼らであったが、当初からジェネシスの再来か?と期待されていたのであるが、ヴォーカルのフィッシュ(デレク・ディック)の独特の声の質と唄い回しはファンを2分していた。
当初からの彼らのストーリー性のあるアルバム作りには、プログレッシブ・ロックの再来として注目を集めていた。しかし、私にとっては、いかんせんフィッシュのヴォーカルには、どうも共感がもてないままで居たわけであるが、1980年ヴォーカリストがスティーブ・ホガースに変わり、ある意味での変身が試みられた。そして新メンバーの3作目「Brave」に至り、まさにプログレッシブ・ロックの新時代盤として我々に迫ってきたのであった。
当時のマリリオンのメンバーは、15年後の今年のニュー・アルバム「Less is More」、昨年の「happiness is the road」と同じで、steve hogarth(_Vo),steve rothery(G),mark kelly(Key),pete trewavas(B),ianmosley(Dr) という布陣である。
このアルバムの生まれる発端は、英国で実際にあった事件、それは大きな吊り橋のかかった高速道路脇で記憶喪失の錯乱状態の少女が発見されたという事件だ。このことから、今英国で起きている社会問題にスティーブ・ホガースが切り込んだ内容のアルバム作りとなったのである。現代社会の病巣ともいってよい部分にメスを入れる彼らの姿勢と、一方曲のタイプはキーボードによって支えられる音空間に、見事なギター・プレイと躍動感あるドラムスによるドラマティックな展開の曲構成に、ホーガスの語りそして訴える歌声が絡んで見事なトータル・コンセプト作品となった。
1 bridge
2 living with the big lie
3 runaway
4 goodbye to all that
5 hard as love
6 the hollow man
7 alone again in the lap of luxury
8 paper lies
9 brave
10 the great eacape
11 made again
1.~2.曲では、冒頭で不安な世界を思わせる音を発して、静かに物語の始まりをイメージする。次第にキーボードのうねりにギター・サウンドがハードに訴える。しかし時としてホーガスの語りに近い歌が入って抑揚の曲構成が見事。もうこの段階で聴くものを離さない。次第に哀しげな重く心に迫る曲と、かなりハードな緊張感を呼ぶ曲が交錯して進行する。そして時にみせるそれぞれのメンバーの演奏する楽器の音の彩による不思議な変調子は、高い演奏技術を見せつけるのだ。このあたりは名作と言われるところであろう。 丁度この頃は、唯一生き残ったプログレッシブ・ロックの雄ピンク・フロイドは、既に彼らの持ち味であったスペーシーな宇宙的曲から時代に呼応してハードでストレートな曲に変身し、又ロジャー・ウォーターズの詩的かつ哲学的であり社会に挑戦的な詩の世界が前面に出た「Animals」,「The Wall」,「The Final Cut」という3連作を生み出した後、ロジャーがバンドを脱退してギルモアのピンク・フロイド再構築が行われ2作目の「the division bell」をリリースした時でもある。しかしそれはコンセプトに弱さのあったピンク・フロイドであっがために、このアルバムでは過去のピンク・フロイドに近い壮大な曲作りとコンセプトを持ったマリリオンは当然プログレ・ファンには喜ばれた訳であり、パンク、ニュー・ウェーブを乗り越えたネオ・プログレッシブとも言われるに至ったのだ。それは英国独特の暗い社会背景をものの見事に描き、それを問題視した作品で、まさにマリリオンの頂点でもあった。
(試聴)
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コメント
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投稿: GuerreroBettye19 | 2012年12月12日 (水) 10時54分