ウィッシング・トゥリー the wishing tree の復活
ハンナ・ストバートの甘く小悪魔的な歌声は健在
12年前、英国のポンプ・ロックのマリリオンから派生的に生まれたユニット。なんとも愛くるしく(コケティッシュな)、そして小悪魔的な歌声のハンナ・ストバートを押し出しての英国であるから作れるケルト系のフィーリングでトラッド、エスニックな世界、そしてアコースティックな曲展開で、私のかなりお気に入りのプロジェクトであったあの”ウィッシング・トゥリー”が、なんと信じがたく12年ぶりに2ndアルバムをリリースしたのはつい今年の春だった。
このところ、JAZZYな女性ヴォーカルの話題を多く書いてきたので、このあたりでロックの女性ヴォーカルの世界に戻ってみたい。
the wishing tree : 2nd 「OSTARA」 ear MUSIC 0198062ERE 2009
マリリオンのギタリストSteve Rothery が女性ヴォーカルのHannah Stobart を軸としたユニットを”ウィッシング・トゥリー”と名付けて、いわゆるフォーク・ロックとして登場させたのが12年前のアルバム「CARNIVAL OF SOULS」だった。当時あのハンナの歌声とアコースティック・ギターのトラッド的世界に魅了されて、惚れ込んだのだが、それ以降全くの音無し、このユニットは一回だけのあだ花だったのかと思っていたが、今年になって、この2ndが登場したというわけである。
ostara
easy
hollow hills
seventh sign
falling
fly
kingfisher
soldier
以上8曲+ボーナストラック2曲という構成ながら、1stアルバムでは学生だったハンナも12年経ってどうなったのかと思ったが、あいも変わらずのコケティシュな歌声が健在で驚く。全く12年の経過を感じさせないのだ。このアルバムもロザリーのギターが主役で彼女のヴォーカルを支えるパターンなのだが、いわゆるフォーク・ロック、トラッドという印象を聴かせてくれる。ギターもアコースティックの他、エレクトリックも使用され曲によって色を変えてはいるが、マリリオンの acoustic side project という言葉は当たっている。全曲ロザリーとハンナによって作られていることも、やはりマリリオンのサイドプロジェクトとして、目下大御所のマリリオンが座礁した状態であるからこそ復活したのかも知れない。
いずれにしてもハートに快感刺激を与えるヴォーカルで、英国の落ち着いたある意味では若干暗さのある牧歌的ロックとの融合で、取り敢えずは聴き応えあるアルバムであると言っておこう。しかし、あの1stのようなインパクトはやはりない。全体にやや、単調である。
そしてそれに加えて、このジャケ・デザイン(↑)は頂けない。ひどいですね。全くこのアルバムの内容を表現していない。(こりゃ、いったい何なんでしょう?)
しかしそれに反して、左のように、ブックレットの曲のイメージ・カットはなかなか芸術的。これは最後の8曲目の”soldier”のもの。この暗さは何とも言えず訴えてくる。その他の曲のイメージ・カットも見るに値するものだけに、ジャケはもっと考えて欲しかった。
ジャケ(スリーブ)デザインって、私はかなり重要と思っている人間で、過去においても色々のアルバムで、その点も楽しんでいるわけだが、特にLP時代は今の小さいCDとは違って、もっと重要だったのではなかったか?。
ところでこれ(左:いずれもクリックで拡大)は、リリース宣伝イメージ・カット、なかなか良いと思ってここに供覧する。このあたりをジャケにして欲しかったというのは、私の余計な希望と言ったところだ。
とにもかくにも、ハンナ嬢(奥様?)の健在を喜んでいる。
プログレッシブ・ロックが形骸化して、潰れていく中で、一つのネオ・プログレッシブとして注目されたマリリオン。フェイツ・ウォーニングやドリーム・シアターのプログレ・メタルと相対するプログレッシブ・ロックの進化の形のポンプpompという分野として現在に残された世界を造り上げた事は貴重である。そしてそこから生まれたウィッシング・トゥリー、このユニットの将来は解らないが、こうしたものが、日本盤としてリリースされないのは寂しい。
このアルバムの重要な因子である女性ヴォーカルのハンナ・ストバートは、1stアルバムのドラマーPaul Craddick と結婚したというのは現在までの情報で、それ以上のことは知らないが、彼女の歌声は、男心をくすぐるような独特の甘さと可愛いらしさがあって貴重と言えば貴重。今後も活躍して欲しいことを願いつつ、この2ndアルバムを聴いているところである。
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