サラ・マクラクランの評価はどこに求められるか?(2)
多彩な活動が物語るもの
サラ・マクラクランを知る意味に於いても、又気楽に聴けて楽しめるアルバムとして
「オーディナリー・ミラクル~プレシャス・ソングス Rarities , B-Sides , and Other Stuff」 ARISTA BVCP-21611 , 2008 というのがある(左)。タイトルどうりまさに”珍品”である。
これは彼女の映画サントラものと、いろいろの多くのアーティストとのコラボレーション曲の集めたもので実に楽しい。
まあ、余興盤といっていいのだろうが、特に映画「シャーロットの贈り物」でエンディングに流れる”Ordinary Miracle”に魅せられた人も多かったことからの企画かどうか?、いずれにしてもこの曲からスタートして、シンディー・ローパー、ブライアン・アダムス、DMC、エミール・ハリス、ザ・ベリッシャーズ、レディスミス・ブラック・マンバーゾなどとの競演が収められている(もちろんライブものもある)。彼女の過去のアルバムの印象とは異なって、かなりポップな印象だ。(しかしここに収められた曲としては”Prayer of St.Francis”や”Unchained Melody”などの彼女自身のソロの曲が私は好むところであるが・・・・)そして最後の曲デレリアムDELERIUMとの12分に及ぶ”Silence”は圧巻だ。プログレッシブ・ロックの愛好者である私ではあるが、なにを隠そう実はこうゆうダンス・ビートを基調としてのプログレ・タイプの曲にも目がない。この曲だけでもこのアルバムを買った価値はあったと思うほどだ。
しかし、サラのこうした多くのアーティストとの交流が、他のアーティストと異なる特徴であることを知らねばならないところである。
サラ・マクラクランと言うと、男性主体のフェスと対抗(?)してか、女性アーティストをジャンルや人種を越えて多くを集めてのフェスティバル「リリス・フェア」を1997-1999年に企画して成功したとが大きなポイントだ。又チャリティー・コンサートはじめ各種の慈善事業が多方面に及んでいる。2005年ピンク・フロイドの再結成で話題になった”ライブ8”にも参加したのが思い出される。こうしたところが、彼女の存在感も高めているところであり、そしてカナダの国民栄誉賞も2004年に受賞している。
社会の中のアーティストとしてのこうした存在が、今や彼女の姿であり、そしてそれがこれからの2人の娘を抱えてのシングルマザーとしての生き様との交錯が注目されるところでもある。
振り返ってみると、左のアルバム「TOUCH」 ARISTA ARCD-8594 , 1988 から若干19歳でシンガー・ソングライターとしてスタートしたサラである。このアルバムは彼女の若き時代の記念碑だ。当時このアルバム・ジャケも単なるポップ・アルバムとは一線を画すると言いたいのか、極めて静かな、そして過去の遺産を感じさせる地味なイメージにむしろ私は興味を持った。
ギター、ピアノを中心にしたアコースティックな小編成のバックに、かなり美しさをイメージした曲群で構成されたアルバムで、ヒーリング・エイジといったところか。インパクトという面では若干弱かったと思うが、一部トラッドっぽい曲にも感じられ、又清純なイメージと神秘的な部分もあった。高音の美しさは出色で将来に期待したことを思い出す。(その後の彼女は社会性を中心とした方向に発展したことは、当時とても考えられなかった)
いずれにしても、年齢からは感じさせない大人ぽさは、このアルバムの特徴でもあろう。近年のサラの原点として興味ある人は一度は聴いてみる価値は十分にある。
ここで、近作の異色盤と原点盤を紹介したわけであるが、もう少し彼女の特徴に言及したい部分もあり、更に次回にその部分は譲りたいと思う。
(参考視聴)
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