LP-playerの復活(6) ハービー・ハンコック Herbie Hancock の衝撃
ブルー・ノート時代から驚きのファンキー・ミュージックへの着手
懐かしの所持しているかってのLP盤を回顧するシリーズで、このハービー・ハンコック Herbie Hancock に到達した。’70代ってほんとに面白かったんだなぁ~と、このアルバムを懐かしく手にして改めて思う。
「SECRETS / HERBIE HANCOCK」 CBS SONY 25AP-244 1976 (左)
このアルバムは彼の1973年の衝撃新展開ジャズ・ファンクの「Head Hunters」以来3年経てリリースされたもの。この間なんと年2枚ペースで新アルバムをリリースしてきた。
’70年代はジャズ分野よりはロック分野に主たる興味のあった私であるが、当時は16ビートのファンキー・ミジックが世間の関心をよんで、ロック界でもかなりの影響を受けた。
しかし、マイルス・デイヴィス・クインテットの一員としての活動や「処女航海 Maiden Voyage」などのストレート・アヘッド・ジャズ、スタンダード・ジャズのイメージのハービー・ハンコックが、あの1973年のアルバム「ヘッドハンターズ Head Hunters」以来、ファンキー・ミュージックを取り入れ、エレクトリック・ピアノを使い、その他電子楽器を駆使して挑戦してきたのだった。
(personnel)
Herbie Hancock (P, el.P, Syn )
Benny Maupin (ss, ts )
Wah Wah Aatson (g, syn )
Ray Parker (g )
James Levi (ds )
Paul Jackson (b )
Kenneth Nash (perc )
このアルバムで、特に私が引きつけられたのは、B面トップの”Spider” という曲、聴きようによっては、ジャズというよりロックのファンキー化とも言っていい曲で、ギターからスタートするが、強烈に全楽器が何度と響き渡りそしてギターとベースがリズムを刻み、キーボードも並行してリズミカルに曲を進める。私はこれで完全にハービーの虜となってしまったのだ。更にこのアルバム全体に於いてもワーワー・ワトソンのギター(カッティング奏法がお見事)の意味が重要な役割が果たされているところも、私が魅力を感じた一つと言っておきたい。
もともとプログレシブ・ロックのピンク・フロイドを愛する私が、彼らで言えば「炎」から「アニマルズ」に変身していく時であり、他方こうしたハービーの分野にも惹かれたのは、一つのところに止まらない時代背景の中での私自身の多様な変化もあっての事であったのかも知れない。
いずれ又この後には、ハービーも一方にはこの年にあの有名な”VSOPクインテット”の時代に原点回帰して行くのであるが、この時代は今回顧してみると驚くべき変動の時代でもあった。
ハービー・ハンコックで私が彼の世界に興味を持ったのは、実はこうしたフュージョン化していった以前のブルー・ノート時代の1968年のアルバム「Speak Like a Child」 BLUE NOTE LNJ-80124 1968 (左)だった。
もともと、バド・パウエル、ビル・エヴァンスなどのオーソドックスという表現は変であるが、アコースティックなジャズの流れの中で、ハービーは展開していたと言っていいと思う。そうした中でのこの作品に関しては、上のアルバム「SEDRETS」とは私は全く別の感覚で接してきていたのである。
このアルバムでは、ホーンセクションが支える中を、ハービーのピアノが美しく語ってくれます。ここには彼のピアノが非常に繊細に変化しながら曲を構築していく姿が浮き彫りになっていて、私の好きな昔の思い出のアルバムなのだ。
しかし、ハービー・ハンコックはこうした二面性を持って進化してきた訳で、LP時代の遺産を顧みているとそのことが良く解る。それと同時に、私自身の若き時代の多面性にも思いが馳せて懐かしいのである。
当時のアルバム「Head Hunters」CBS SONY SOPL-238 1973, 「Thrust」CBS SONY SOPN-96 1974, 「VSOP:Live Under the Sky」CBS SONY 40AP1037-8 1979 などのLP盤も健在で、それらをとっかえひっかえして聴いていると、ハービー・ハンコックの挑戦の姿が見えて来るのだった。
(試聴)
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コメント
風呂井戸さん,こんばんは。当方ブログへのTBありがとうございました。
ファンク路線のHerbie Hancockでは私は"Flood"が好きですねぇ。以前はあまり聞きませんでしたが,iPodでのプレイバック回数は結構多いと思います。気持ちが淀んだ時にはいいですよね。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年3月 9日 (水) 22時04分
こんばんは。
私はフューチャーショック以前は後追いでしたけど、マイルスバンドがどこか難しい部分を残していたのに比べ、ハービー・ハンコックは分かりやすかったですね。だからこそけっこう売れたんでしょうね。ファンク、ディスコ、そんな時代を通り抜けたような気がしています。
当方のアドレスは以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2020/08/post-8bf29c.html
投稿: 910 | 2020年8月 6日 (木) 18時52分