今にして知る レナード・コーエン Leonard Cohen の世界
とにもかくにも波瀾万丈多彩な人生から生まれる音楽
いやはや、ロックと一言では言えないモノであり、そしてフォークやブルースの因子の加味されたものと・・・・・単純に表現するのも当たっていない”詩人の音楽の世界”に遭遇した。
それは、レナード・コーエン Leonard Cohen だ。カナダ出身の父はユダヤ系、母はロシア系のようで、いわゆるフォーク・ロックと一般には表現されている音楽を奏でるシンガー・ソングライター。1934年生まれと言うから既に今年76歳、そのロンドン・ライブ(2008年)に遭遇してしまった。コーエンと言えば、ロック畑で名前を聞いたことがあるのは事実だが、私の興味の世界では無かった。しかし、今そのライブCDとDVDに接しているのである。それは私から求めたわけでなく、既に○○歳になろうという友人から、おまえも歳なんだから、こうゆうのを聴きなさいと言わんばかしのプレゼントであった。
「Leonard Cohen /LIVE IN LONDON」 SONY SICP 2232-3 (Recorded Live in Concert at O2 ARENA , July 17 , 2008) 2009 (左)
とにかく、人生の酸いも甘いも知り尽くしたと思われる老人の粋な歌には圧倒される。そしてCD2枚組全26曲の精力的ライブが展開する。
スタートの”Dance Me To The End of Love 哀しみのダンス”を聴くと、ええ!これがロック?、むしろシャンソンっぽい展開に、もうここで粋な高齢な男のイメージが作り上げられてしまう。とにかく低音部の厚いヴォイスはオーディオ装置を振るわせる。 このハットに手をしたポーズが、何とも言えない歴史あるそしてダンディーな男の味が出ている。
彼は16歳の時から”詩”の世界に入り、そして恋い多き人生をスタートさせ、ニューヨーク、コロンビア大学に入学して、そこでの生活でジャズ心を知り、後にロンドンに住み、小説を書き、さらには革命後の社会主義キューバに興味を持ってキューバに住んだこともあるという。
その後に、ようやくミュージシャンの世界に入って行くことになるのだが・・・・。既にそのデビューは32歳となっていた。 これがデビュー・アルバム
「レナード・コーエンの唄 Songs of Leonard Cohen 」 1968年 SONY MMCP-1333
これを聴いてみると、現在のロンドン・ライブよりは40年前であるから、如何にも声は若く、特に低音部の響きは全く違う、現在のような歴史を感じさせる厚みと深さはない。そりゃーーそうですよね。アコースティック・ギターをバックに唄う若いなりきの声の張りは現在よりはやっぱりあるが、しかし味という面では、現在の足下にも及ばない。 (左は彼の若いときのスナップ)
とにかく、今回初めて接した「2008年のロンドン・ライブ」は、私にとっては全てが初物ですから”なるほどねぇ~~
、こうゆう世界もあるんだなぁ~~”と、ただただ感心して聴き入っているわけです。
幸いにDVDによるライブの映像物があって、これが初めて知る私にとっては非常に有力。特に、録音が非常にダイナミックでいい。5.1サラウンドでも聴け、まさに会場に引っ張り込まれる。このO2アリーナというのは、世界最大のドーム会場であり、この映像でみても満席である。もともと彼は当初、米国よりは英国にて人気が出たようである。この歳でこれだけのショーを展開できるのであるから驚きだ。
もう一つは、バックに3人の女性ヴォーカルを引き連れているのであるが、このヴォーカルとのマッチングが、何とも言えない味なんですね。このあたりは対女性も百戦錬磨の彼の成せる技かと思うのである。バック・バンドも安定感たっぷり。
そして、一曲一曲丁寧にジックリ唄う響きは、まったく聴くものを疲れさせない。もともとそうした曲であるところに、彼の丸みのあるヴォイスが作り上げることによるのであろう。ブルース調あり、ときにタンゴ調やもあり充実した世界だ。
私のロックを愛しての人生の中で、全く知らなかったこの世界、こうして聴いてみるのも掛け値無しの価値を感じている。 左のアルバムも、その友人からのプレゼントであるが
「Jennifer Warnes / Famous Blue Raincoat = The Songs of Leonard Cohen 」 BMG BVCM-37388
これは、彼のバンドで女性コーラスをしていたジェニファー・ウォーンズが彼の唄をカヴァーしてリリースしたアルバムらしい。
1980年代、彼の活動も下火になって頃、このアルバムの出現によって再び彼は注目を浴びるようになったというのである。そして彼のピークは50歳代になって迎えたという事のようだ、恐るべし。
基本的には、この日本では後期高齢者という表現で顰蹙(ひんしゅく)をかった高年齢者の表現であるが、しかしそこにある世界は、それなりに哀愁と感動と希望があるのだと言わんばかしのこの歌声は多くの人の心に打つモノがあるのであろう。
特に今回DVDでも鑑賞できたのは、幸い日本語による歌詞の訳詞が見られることが、これも理解を深める大きな因子であったとも思う。もともと詩人のコーエンだけあって、なかなか味のある歌詞が歌われる。決して明るくはないのだが、さりとて悲観した世界でもないところが不思議である。(人生、反省の繰り返しというニュアンスが共感を呼ぶか?)
私自身では決して接触することはなかったであろうアルバムを視聴しての音楽の楽しさをここに記しておく。
(視聴)
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