映像で迫るダイアナ・クラール Diana Krall
女性ジャズ・ピアニストも映像に堪えられると言うことは良いことだ。
ダイアナ・クラールと言えば、女性ジャズ・ヴォーカリストと言っていいのだろうが、私はむしろピアニストとしての能力をかっている。確かにヴォーカルも若干ハスキーでありながら、包み込むソフトな魅力があり嫌みもない。ほんとは高音部に独特な特徴があるともっと凄いのだが・・・。そうは言っても当世、売り込むにはヴォーカルの魅力が大切であろうから、そんな意味では十分な能力と才能があって決して馬鹿にしたものではない。
かって約10年前に、まさかのサンタナがグラミー賞「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を獲得したとき、彼女のアルバムがノミネートされていて私は知ることになったのだが、その後世界的なヒットを飛ばしていて今や押しも押されぬ一人である。先頃ボサノバ、サンバの世界にもアプローチしたアルバム「クワイエット・ナイツ」をリリースしていて、興味があって現在までにリリースされている2枚の映像盤にも接してみた。特にライブものに興味のある私にとっては、やはり映像盤がいい。
DVD 「diana krall / LIVE IN Paris」 eagle vision YMBZ-20028 , 2009
彼女の人気を決定づけた2001年ワールド・ツアーの12月2日パリ、オランピア劇場ライブの収録盤である。この時はストリングス・管楽器オーケストラ(ヨーロッパ交響楽団)をバックにしてのダイアナ・クラールのピアノとその他本来のベースに加えてエレクトリック・ギターのトリオの他、ドラムス、パーカッション、アコースティック・ギター6人のミュージシャンによるバンドとかなり大がかりなライブ。そしてこれは待望の映像盤である。(画像も良好で、サウンドもDTS5.1も記録されている)
そもそも、この2001年のパリ・ライブは、CDで「Live in Paris」 として2002年にリリースされ、非常に評価が良く、人気のあったもの。それがここにきて映像と高音質でリリースされたもので、取りあえずは観ざるを得ないところに迫られたわけだ。
彼女は1964年カナダ生まれであるから、このライブ時は37歳という若さであるが、Johon Clayton のベース、Jeff Hamilton のドラムスと大御所としっかりわたり合って、Anthony Wilson のギターリズムに乗って、彼女の見事なピアノ・プレイが展開する。 そしてその演奏で一つの世界が構築されている上に、彼女のヴォーカルが乗って行くという見応えは十分の演奏なのだ。
(収録曲)
1.i love beiing here with you 2.all or nothing 3.let's fall in love 4.the look of love 5.maybe you'll be there 6.deed i do 7.devil may care 8.cry me a river 9.under my skin 10.east of the sun 11.i get along 12.pick yourself up 13.s'wounderful 14.love letters 15.i don't know enough about you 16.do it again 17.a case of you
選曲はオーソドックスであるし、演奏もいわゆるジャズのオーソドックス・タイプ。幸いに彼女はいわゆる美人タイプで映像は歓迎されるであろうし、内容から全てが一般受けする。
ジャズを愛する家族に育ち、ピアニストを目指して来たと言うだけあって、まさにバンドの一員としてピアノを演奏する。単なるヴォーカルの添え物演奏でないジャズ・ピアノを操るところが魅力でもある。2曲目”All or Nothing”の中盤での繊細で転がるようなピアノ・プレイが物語っている。
”the look of love” は、特にあのセルジオ・メンデスとブラジル66で私も馴染んできた曲であるが、ここではスローに明らかにダイアナ節になっていて楽しめる。ジョニ・ミッチェル”a case of you”で幕を閉じるが、全編を通してピアニストとして、ヴォーカリストとして、我々に何か安堵感のある安定した世界を提供してくれるところは、好感がが持てるのである。
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