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2010年5月 7日 (金)

私の映画史(7) 「モア」 (ルクセンブルグ映画 , 音楽:ピンク・フロイド)

未知なる世界を求めた青年の悲劇

 もう20年以上にもなるだろうか?、ピンク・フロイドが音楽を担当した3本の映画は、取り敢えず諸々の手段で観ることに成功した。その中で最も印象深いのは、このバーベット・シュローダー(バルベ・シュローデル)製作・監督の1970年の映画「モア」であった。
 この映画はルクセンブルグと西ドイツ資本の合作。日本公開時には私は観ていない。その後にVHSビデオが発売され、それにより私は接することが出来たもの。しかしその後近年まで容易に手に入らなくなっていたが、ついに2004年、2008年DVD発売となっている。
Barbetschroeder  もともとイランのテヘラン生まれである監督のシュローデルではあるが、主としてフランスにて教育を受け、大学では哲学を修めたという人物で、当時のいわゆるヌーヴェルヴァーグ運動に参加し、初の監督作品がこの「モア」であった。(彼の作品は特異なものが多いが、昨年、江戸川乱歩の小説「陰獣」を、これもなかなかインパクトが強かった映画「いのちの戦場」(2007)に主演したブノワ・マジメルをここに起用して映画化している)

More  さて、この映画「モア」であるが、その作品評価には賛否両論があったのを記憶している。しかし、私にとっては若き青年が未知なる世界を求め、それに冒険的にアプローチしてゆく姿には妙に共感が持てたし、そこにある若さというものを見事に描いている映画だと思う。
 しかし、この青年は自分にとって失い得なかった女性によりセックスとドラッグの魔力にはまってしまうことになるが、それから立ち直ろうとする理性ある努力する姿に哀しさが迫ってくる。
 そして最後には、ドラッグにより破滅し、自ら死に至らしてしまう残酷性は、やはり当時の若者の中に盛り上がりのあった自己認識を高めようとする”サイケデリックな文化”、更に”ヒッピー文化”に対して、その価値観を認めながらもある意味での警鐘として、一つの迫り方をした傑作映画であると評価する。

映画 「モア」 (原題:「More」 、1970年、製作国:ルクセンブルグ)
(スタッフ)
  監督 製作 : Barbet Schroeder
  脚本 : Paul Gegauff ,  Barbet Schroeder
  撮影 : Nestor Almendros
  音楽 : The Pink Floyd
(キャスト)
  Klaus Grunbarg  (Stefan)
    Mimsy Farmer  (Estelle)
    Michel Chanderli (Charlie)

Mimsyf  この映画にて、最も重要なポイントは青年をして虜にしてしまう女性(エステル)である。その役柄に選ばれたミムジー・ファーマー(左)は、十分にその役柄をこなしている。彼女はアメリカ・イリノイ生まれで、1963年に映画「スペンサーの山」に、あの名優ヘンリー・フォンダと共演。この映画では常にジョン・ウェインの相手役であったモーリン・オハラも出演している。こんな中でスタートした彼女は、俳優としての道は、かなり鍛えられたのではないかと想像される。しかしどうゆうことによるか不明だが、このアメリカ映画俳優が、フランス色の濃いルクセンブルグ映画「モア」の重要な鍵となる女性役に抜擢された訳だ。
 そして、ドラッグにひたり若き人生を空虚感に満ちた生活で流れていく女性と、一方不思議な魅力を発散する女性役をショートヘア・カットの美貌で見事に果たして、この映画を成功させた。しかしこの役柄のイメージが非常に強く、彼女の将来の役者人生にそれがついて回ることになったという。

Photo_2  主人公の青年ステファン役はドイツの演劇界からのクラウス・グリュンパークであるが、彼の好演も光る。
 なにはともあれ、それを支えるのがピンク・フロイドの音楽だ。ピンク・フロイドは当時リーダーのシド・バレットがドラッグと精神障害の為抜け、その後の立て直しにロジャー・ウォーターズが当時奮戦していた。そしてこの頃、最も報酬面でも恵まれていた映画音楽に対しての関心も強く、1969年のライブの定番曲や、ロック界初のコンセプト組曲作品”The Man”&”The Journey”の作品を分解してまで、この映画に投入した。そしてそれらの曲群が効果的に使われているのである。

Musicpf
 オープニングでは、未知の旅に出たドイツ人青年ステファンが雨の中パリへのヒッチハイクするシーンで、”Main Theme”が流れ、黒と白の字のオープニング・ロールに続いて、”music by the pink floyd”と、ここだけピンク色の字が浮かぶところは印象的だ。(ピンク・フロイドに"the"が付いているところが懐かしい(↑))
 青年は、一目惚れした女性エステルのホテルの部屋を訪れ、そして彼女がレコード盤に針を落とすと、流れてくる曲はウォーターズ作のギルモアが唄う”Cymbaline”で、私などはそのシーンにゾクっとしたことを思い出す。
 美しいイビザ島におけるシーンに於ては、当時のこれもウォーターズの人気曲”Green is The Colour”が風景にとけ込むように美しく流れ、更にはドラックが体を襲ったときの衝撃を”Cirrus minor”の曲とともに表現し、インパクトがあって印象的だ。このことは映画に於ける映像と音楽の醍醐味は、その相乗効果の素晴らしさであることを如実に示している。

 映画にとって重要な因子の映像に関しても、この作品に於いては、担当の Almendros の素晴らしい情景描写のセンスが評価され、当時話題にもなった。

 時代の流れをいち早く敏感に感ずる中で書かれた脚本の現実的価値の高さに加え、当時のロックの最先端を歩んだピンク・フロイドの妖しい美しさと幻想的な曲、それにジャズ的因子とロックの融合が試みられたプログレッシブな曲の多様性が、この映画では極めて有効的に働いて傑作に仕上げられた。

 青年の純粋さと、そこに潜む危険性とに焦点を当て、新しい時代の波を描いた作品であるが、そこには”哀しい残酷性”が描かれていて、胸を痛めたことを記憶している映画である。

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