私の映画史(8) 「赤い河」 (原題:Red River、1948年、米)
テキサス開拓者の厳しい環境下の人間模様
戦後、日本においてアメリカ映画が解禁され、どっと日本に流れ込んできたアメリカ映画。私が初めて西部劇映画というものに接したときの印象は大きかった。拳銃というものを武器として持ち歩き、相手とお互いに向き合っての銃による決闘は殺人事件としては取り扱わない社会感覚を理解するには、日本と違う異国の世界を知ることになる。
私が初めて観た西部劇は子供の頃観たもので、「ユタから来た男 THE MAN FROM UTAH」(1934公開、ロバート・ブラッドベイ監督、ジョン・ウェイン主演。もちろん私が生まれる前の作品である(左))であった。この映画の痛快さに感動し、それ以来西部劇映画に病みつきになり、数多くの名作と言われるものも含めて観てきたが、この映画の内容は一部のシーンのみ記憶にあるのみで、つい最近DVD化(酷い画像であるが)され、何十年ぶりに懐かしく接することが出来た。
そうした多くの西部劇の中で、必ず名作として挙げられるのは「駅馬車」、「真昼の決闘」、「荒野の決闘」、「シェーン」、「捜索者」などなど数は尽きないが、私の一押しの映画は、ハワード・ホークス監督の初の西部劇作品の「赤い河」(1948年)である。
先日紹介したキネマ旬報社の「映画遺産200(外国映画編)」で、”映画人・文化人が語る、心に残る珠玉の10本”という企画の中で、121人の中でこの映画を取り上げたのは原田眞人監督(”突入せよ!あさま山荘事件”(2002年)など)ただ一人であったが、彼はあらゆる外国映画のトップにこれを選んでいた。
映画「赤い河」 原題:Red River
1948年(日本公開1951年)、モントレー・プロ、ユナイト・アメリカ映画
(スタッフ)
監督: Howard Hawks
製作: Haward Hawks
脚本: Borden Chase
音楽: Dimitri Tiomkin
(キャスト)
John Wayne (Thomas Dunson)
Mongomery Clift (Matthew Garth)
Walter Brennan (Groot)
Joanne Dru (Tess Millay)
南北戦争前の1951年、一つがい2頭の牛を連れての開拓者ジョン・ウェイン扮するダンソンは親友グルート(ウォルター・ブレナン)と2人でテキサスに牧場を作る夢に燃え、新天地を求めて南に向かう。途中コマンチに襲われた幌馬車隊から一人逃げ延びた少年マシュウ(モンゴメリー・クリフト)を救い養子にする。
リオ・グランデ近くに土地をみつけ、彼らは十数年後には牛は一万頭にも及ぶ大牧場にまで苦労の結果発展させていた。 時は流れ、南北戦争も終わったが、牛を売るテキサスには買い手がない。そこで牛が売れるミズーリまでの1600キロを9000頭の牛を移動させる難事業を計画。
この映画では、牧場を作り上げるまでに7人の対立者と戦い殺し、難事業を男の意地で作り上げてきたダンソンの執念を描いて行く。そして南北戦争から帰って来た養子のマシュウと共に牛移動の難事業に出発した訳だ。
この苦しい難行の中で、ダンソンの狂気じみた厳しい行動に、次第に養子の若きマシュウは反感を持つようになる。こうした難事業に当たる男の執念と部下に対する毅然とした厳しさは、ついに脱走者まで生むことになる。その連中を捉え見せしめに縛り首処刑をしようとするダンソンに、ついにマシュウも許せず反抗してしまった。そして銃で傷ついた恩義ある義父のダンソンをおいて、今度はマシュウがリーダーとなって牛の移動を始める。しかもダンソンと共に苦労してきた親友のグルートも、マシュウの側について行ってしまう。
しかし、マシュウは、義父ダンソンの男の執念の凄さを知っているだけに、後から追ってくると思うダンソンに脅えての旅となる。
マシュウはその後インディアンとの戦いや、恋する女性(ミレー)も出来、何とか牛の大群を鉄道の敷かれた都市アビリーンに運び難事業を達成する。
しかし、養子マシュウと親友グルート更に部下たちに牛を連れ去られ、おいて行かれたダンソンは奪還のため部下を募って、追撃に進む。こうした悪役めいたジョン・ウェインのダンソンの演技は、緊迫感があってなかなかの見所。
最後に養子マシュウとの対決となるが、傷ついたダンソンがマシュウに銃を向けるもマシュウは銃を抜かない。ダンソンは銃を投げマシュウを殴り挙げる。「腰抜けめ!」と2度3度と殴ると、次の瞬間マシュウもダンソンを殴った。義理の親子の殴り合いとなる。
そこに心配していたマシュウの恋人ミレーが銃を撃つ。この殴り合いは最終的には共に苦労してきた”愛する男同士の戦い”であることを察知して、ミレーが結末を付けたのだっだ。あっけにとられた男同士は、そこでお互いを称えるのであった。
この映画の価値は、単なるアクションをみせるだけの西部劇でなく、西部開拓者の執念と言えるまでの厳しい中に達成されてきたことを描いている。その中に見える人間模様は時代感覚を超えて、我々に訴えてくるところが見事であった。古い映画であるが、良好なモノクロ映像でDVDにて鑑賞できるので、私は昔懐かしく鑑賞しているわけであるが、お勧めである。(かって、VHSでもリリースされていたが、ワーナー・ホーム・ビデオのDVD盤は良好)
ハワード・ホークスは、後に人気のあった西部劇「リオ・ブラボー」を作成するが、やはりこの映画のジョン・ウェイン、ウォルター・ブレナンを起用し、この映画「赤い河」の牧場のマークを「リオ・ブラボー」ではベルトのバックルに付けたり、ライフルを投げて受け取っての決闘シーンなど、後にもこの映画をイメージし再現させている。監督自身にとっても重要な映画であったと言うことであろう。
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