キース・ジャレット Keith Jarrett の世界(3) 孤独と生と死
私がキース・ジャレットの虜になった所以
キースがチャーリー・ヘイデンとの顔合わせで、30年ぶりの演奏を披露したアルバム「ジャスミン JASMINE」の登場で、にわかに私の彼の世界に関わってきた歴史を思い出す今日この頃となった。そして直ぐに頭に浮かぶ貴重なアルバムがある。
「Keith Jarrett DEATH AND THE FLOWER 生と死の幻想」 impulse 32XD603 , 1974年作品
このアルバムなくしてキース・ジャレットの関わりはなかったと言いたくなるほどの私にとっては重要なアルバムだ。ヘイデンのベースが関わっているアメリカン・カルテット(1971~77)の作品として、又 キースのマルチ・プレイヤーとして、更に彼のインプロヴィセーションの世界として、そして彼が描く世界観として、全てが凝縮したアルバムである。
(メンバー)
Keith Jarrett : Piano, Sax, Flute , Percussion他
Dewey Redman : Tener Sax
Charlie Haden : Bass
Paul Motian : Drums, Percussion
Guilherme Franco : Percussion
(収録曲)
1. Death and the Flower 生と死の幻想
2. Prayer プレイアー
3. Great Bird グレイト・バード
もちろんメインは1.の”生と死の幻想”である。この曲は当時のLPのA面を全て使った約23分の曲。原題を直訳すれば”死と花”であり、「生」をその生き方としての「花」として捉えている事は、このアルバムに載せられている彼の詩からも窺い知るところだ。
当時、私が最も興味を持っていたプログレッシブ・ロックのピンク・フロイドの「狂気」の直後であり、キング・クリムゾンで言えば、彼らが崩壊する「Red」の時である。ジャズ畑にてのこのキース・ジャレットにおいても、彼が音楽に求めた姿は当時のロック界とも私の場合はけっして別物としては捉えられず、それぞれがそれぞれの感覚と手段で、音楽と人間に迫ろうとしていた結果であるように思えてならない。
特に実際のキースの世界はどうであるかといってもそこは我々には判らないが、このアルバムに寄せた彼の詩の”自らの生の絶え間ない瞬間に、生まれつつあると同時に、死につつもあるのだ。・・・・・私たちは花のように生きるため、覚悟を持たねばならない。・・・・死を友とし、忠告者として考えよう”などの言葉には、彼が描こうとしている音楽を介しての一つのテーマの表現なのかもしれない。ここには私にとっては彼の孤独な印象も何故か感じてしまうところでもある。
このカルテットの重要メンバーであるベースのチャーリー・ヘイデンのフリー・ジャズ的センスがこの作品を盛り上げているのは事実だ。キースの時として神経質にも思える美学と人生観を支えると同時に、彼自身のジャズにかけた美学も融合して、このすばらしい”生と死”を見つめる幻想的な世界の構築を成し遂げていると思われる。
パーカッションなども有効に使われ、そしてテナー・サックスを織り交ぜてのこの曲”生と死の幻想”は、キースを語るにあまりにも重要であると同時に、幻想美と言っていいこの曲には私の思い入れも大きい。
また、2曲目の”プレイアー”は、キースとチャーリーのデュオであり、この曲のロマンチズムな美しさは、今振り返ってみると今回のアルバム「ジャスミン」の原点なのかも・・・と、ふと思うのである。
キースの一方の”スタンダーズの世界”や”ソロの世界”の美学はあまりにも知れ渡っているところであるが、このチャーリーとの築いたキースの世界に私は懐古的な感傷があるかもしれないが、今もって強調したいところなのだ。
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