静かなる安堵感:キース・ジャレット Keith Jarrett 「JASMINE」
必然的結果か?キースとチャーリーの結合
今、私のジャズものの棚を見ると、ずらっ~と並んでいるキース・ジャレットのCD群。であるにも関わらず、ここでは一度も取り上げなかった。それはあまりにも彼を語るには私の惚れ込みように関わらず、彼の音楽の評価が並では語れなかった。
しかし、ここに来てこのアルバムの登場で、やっぱりなりふり構わず書いてしまおうと・・・そんなところで過去を思い起こしながらの話になる。
「Keith Jarrett/Charlie Haden JASMINE」 ECM records ECM 2165 , 2010
何年ぶりになるのだろうか?、キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンの顔合わせ。多分30年以上は間違いない。
そして今回のアルバムは、スタンダード・スロー・ジャズ・バラードという驚きの安らぎと安堵感の世界。かってのキースでは考えられない世界。それは、キースのピアノとチャーリーのベースの再会を静かにお互いの30年を称えるが如き音なのである。
(曲目リスト)
For all we know
Where can i go without you
No moon at all
One day I7ll fly away
I'm gonna laugh you right out of my life
Body and soul
goodbye
Don't ever leave me
こうした世界は最近のものでは何時以来だったろうか?、キースのソロでの約10年前の「The Melody At Night With You」 と言っていいのだろう。あれは病気からの復活の心の歌だった。
そして今度は、やはり自宅のスタジオで、なんと3年間の熟成を計ってのリリースと言われるチャーリーとの共演作。非常にソロに近い中でのチャーリーとの心の通いが感じ取られる。
とにもかくにも美しいキースのピアノ。それを称えるかの如きチャーリーのベースの流れは私にとっても、これからの大切な一枚になるだろう。
あまりの聴きやすさに、キースの愛好家からは(実は私も)ちょっと意外感を持たれたかも知れないが、でも暦年の彼の作品の上に置いて聴くと、これが非常に重きを増してくるようにも思えるのです。(このアルバムはキースの65歳の誕生日にあわせてのリリース)
キースのチャーリー・ヘイデンとの競演といえば、アメリカン・カルテットということになるのだろうと思う。
「Keith Jarrett / The Survivors' Suite 残もう」 ECM POCJ-2040 , 1977 (CD 1991)
私にとっては、このアルバムを語らずにはおけない。キースのアルバムで、ここまで緊張感のあったアルバムはそうはないだろうと断言する。考えてみれば、このアルバムあたりが、キースとチャーリーとの共演の最後ではなかったか?。
(カルテット・メンバー)
keith Jarrett : Piano, Soprano Sax, Celeste など
Dewey Redman : Tenor Sax, Percussion
Charlie Haden : Bass
Poul Motian : Drums, Percussion
これは、トータルな組曲で、”The Survivors' Suite” のA面"Beginning 発端"、B面"Conclusion 結末" の2部構成。これはロック畑ではピンク・フロイドの「アニマルズ」の頃だった。とにかくジャズ・ピアノ奏者のキースが、前半ではソプラノ・サックスでメロディーを奏でて心にやや暗い世界を植え込んでくる。そして後半ではまさにカルテットの面々が、攻撃的な演奏をたたき込み、この緊張感は凄い。Jazzの世界にこのような感覚があったのか?と、当時はピンク・フロイドの変貌とともに、数年前のキング・クリムゾンの「Earthbound」をふと思い起こしつつ、私にとっては一大関心事の一つであった。
このカルテットのベース奏者チャーリー・ヘイデンとの30年以上を経ての今回の変貌ぶりには、これも驚きの一つである。私にはあのアルバム「残もう」が忘れられないモノであるだけにその印象は大きい。そして同時に、両者の人間的完成度を窺い知ることになったのだ。
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