”スーパー・オーディオ CD (SACD)”の出現から10年経ったが・・・
Audio界はどう捉えているのか??
私は非常に期待したものの一つは、 Super Audio CD (SACD) であった。確か1999年にソニーとフィリップスによってその規格が定まってスタートしたと記憶しているが、さて既に10年以上も経過したわけである。(対抗馬としてはDVD-Audioもある)
「CONCORD JAZZ SUPER AUDIO CD Sampler」Concord Records, SACD-1032-6 , 2003 (左)
このCDは、SACDでマルチチャンネル録音、そしてHybridタイプもの(CD録音との2層もの)のサンプル盤として宣伝用に出現したもの。こうしたもののによって大いに刺激されたものだ。
しかし私の印象としては、SACDと言っても、殆ど”知る人ぞ知る”といったところで、若い人に話しても”何、それ?”と言われてしまう。そんな訳であるから、当然売れ行きは芳しくない。最近はCDそのものの売れ行きも決してよいとはいえない。ネットを使って音楽配信を受けたり、CDなど買う場合もネット販売によることが多く、いわゆる街の「レコード店」なるものも繁盛していない。そしてその店の数も激減している。
さらにSACDをきちんとそろえて売っている店もあまり見ない。つまりSACDは売れていないのである。そんな訳で私の期待のSACDは、相変わらずタイトルの数も少ないし、従って値段も高い(一枚4500円なんて当たり前と言った感じ)。
一方画像を中心としたDVDの世界では、このところBD(ブルー・レイ・ディスク)は意外に順調に伸びている印象だ。このところ地上デジタル放送が広がり、薄型テレビの普及によりハイビジョン映像が主流になりつつあり、それに伴って良質な画像を期待するようになったためかも知れない。3Dという新戦略もあるが、このあたりはまだまだといったところか。
さて話は戻るが、それでも私の弱体オーディオ装置でも、少しでも良い音で音楽を聴きたいという気持ちは今でも続いている。その為、SACDにも少しは頑張ってもらって欲しいものと期待しているのである。
現状ではCDのリリースされる中では、やはりSACDは、クラシック、ジャズ系に主力がある。つまりマニアのものという世界の印象である。そしてその出来具合が多様というか、つまりよいものもあるが、期待はずれも結構多くある。そのあたりも値段が高い割には満足できずに、そしてユーザーも増えないのだろうか。
「MILES DAVIS / IN A SILENT WAY」 SONY Records SIPG29 , 2002
このタイプは1969年もののJAZZ名盤を、現在になってマスター・テープからDSD(Direct Stream Digital)録音したもので、マルチチャンネル盤(5.1ch)に作り上げていて、そんな古い録音とは信じられないほどの音質を確保している。
まさにマイルス・デイビスをこの2000年代によみがえらせているのである。このタイプのSACD盤は大いに我々には意義あるものとして受け入れられる。
「Pink Floyd / THE DARK SIDE OF THE MOON」 EMI Records TOGP-15001 , 2003
ロックものも少しずつSACDのリリースが現在も続いている。このピンク・フロイドの代表作(1973年)は、2003年に、やはりSACD・HYBRIDマルチ・チャンネル盤(5.1ch)としてリリースされた。これはいかにもマルチものと言ったところで、各楽器が四方から分離して出てくる。昔の4チャンネルものを思わせる造りだ。このあたりは好みが分かれるところ。しかしこれも30年前のマスターからのDSDmixingされたもの。それでもここまで音がだせるのであるから当時の録音も馬鹿にしたものでない。
「Diana Krall / THE GIRL IN THE OTHER ROOM」 VERVE B0002293-36 , 2004
このあたりにくると、既にSACDを考えての録音をしているし、SACD Surround Sound ,SACD Stereo, CD audio (Hybridタイプ)といった造りである。単に周囲にバック・バンドの楽器配置をとるのでなく、ホール感を生かしての録音。そしてダイアナのヴォーカルとピアノを中央に配して、左右にギター、ドラムス、ベース。その音のダイナミック・レンジの広さは見事で、ほれぼれする録音である。まさに聴くものを演奏の中に引き込んでゆく。 こうした造りをしてくれるとSACDの良さをつくづく感ずることになる。まさにダイアナのJazzyな世界を堪能できる良盤である。
「Vladimir Ashkenazy / Shostakovich : Symphony No.5 in D minor Op.47 」 EXTON OVGL-00009
クラシックものはさすがにSACDが多い。これは日本の東京・サントリー・ホールでの録音。いわゆるマルチものでなく、ステレオ・タイプのSACD盤。そしてCD盤も同時に別に発売している。
つまりSACDに対応した装置のみにての再生可能盤である。クラシック愛好家用であるからHybridタイプにしなくとも売れるということか?、このタイプがクラシックものには多い。
この盤は、さほどSACDとしての魅力は少なかった。そのあたりは、我々にとっては価格が一般CDより高いので、不満が残るところ。
数枚のSACDを紹介したが、特にマイルス・デイビスのSACD化はこれ以外のものもあるが大歓迎。ダイアナ・クラールの盤はお見事で、これからもこのタイプを望みたい。クラシックものは最近小澤征爾ものがどんどん出ているが、既にSACDの歴史も10年以上となり、この分野は買い手は音に関心も高いので、そんなに弱みにつけ込まないで、もっと値段をCDに近いものとしてリリースして欲しいところだ。
SACDの歴史から、もっと普及して欲しい希望を込めつつ雑談をしてみた。
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