聴きやすいジャズ・ヴォーカル/ピアノを演ずるキャロル・ウェルスマンCarol Welsman
オーソドックス・スタイルの15年の歴史を持った実力派
近年カナダから多くの女性ジャズ・ヴォーカリストがお目見えしているが、その中ではもう既にアルバム・デビュー15年の経験のあるキャロル・ウェルスマンCarol Welsman に焦点を当ててみたい。
彼女はピアニストでありソングライティングの実力派。カナダということでダイアナ・クラールを思い起こすが、それが明確な違いを持っている。どちらかというと編曲、ヴォーカルとも比較的オーソドックスで、癖がない。その為非常に聴きやすいし、又前衛風な難しさもない。声も全域にわたって標準的な美しさを持っている。
彼女の紹介を見ると、もともと祖父はトロント・シンフォニー・オーケストラの創始者で、父はサックスを奏し、母は芸術派と音楽一家で育ったという。アメリカ・ボストンのバークリー音楽大学にてピアノを選考してジャズに傾いてゆく。パリにも渡って経験を積んできたようだ。
■「Carol Welsman / I LIKE MEN reflections of miss peggy lee」 Welcar Music WMCD366 , 2009
Carol Welsman (voc/piano)
Pat Kelly (g)
Rene' Camacho(bass)
Jimmy Branly(drum/cajon)
Kevin Richard(percuss.)
Ken Peplowski(clarinet)
etc.
1. I LIKE MEN
2. DO I LOVE YOU?
3. LOVER
4. I LOVE BEING HERE WITH YOU
5. THE FOLKS WHO LIVE ON THE HILL
6. WHY DON'T YOU DO RIGHT?
7. JUST ONE OF THOSE THINGS
8. JOHNNY GUITAR
9. I'M GONNA GO FISHIN'
10. DANCE ON YOUR OWN
11. REMIND ME
12. FEVER
13. WHEN YOU'RE SMILING
14. ANGELS ON YOUR PILLOW
このアルバムが彼女の最新のものである。しかしこのリリース直前に2009年の4月には・・・・
■「Memories Of You ~ Carol Welsman sings Benny Goodman and Peggy Lee」 MUZAK MZCF1191, 2009
キャロル・ウェルスマン (VOCAL,PIANO)
ケン・ペプロウスキー (CLARINET)
フランク・キャップ (DRUMS)
レネ・カマチョ (BASS)
ピエール・コーテ (GUITAR)
ジミー・ブランリー (DRUMS)
カッシオ・デュアルテ (PERCUSSION)
・・・・・・・というベニー・グッドマンとペギー・リーへのトリビュート・アルバムを発表している。実はこのアルバムを私は友人から頂いて彼女のアルバムを初めてじっくりと聴くことになったのだが、どうもこのアルバムは2008年に録音して日本先行発売ということになっているが、日本向けの試作品であったようだ。従ってこの「I LIKE MEN」が正式アルバムということになるようだ。
そんな事情で、この両アルバムは4曲が重なっている。しかし基本的にはあの歴史的名歌手であり銀幕スターでもあったペギー・リーに迫ろうとしたことの企画の下で行われたことであると思われる。その重なった曲の3曲は同一バージョンである。
しかし、「Memories Of You」のほうは、ケン・ペプロウスキーのクラリネットの音を意識した曲作りであって、そうした演奏の楽しさがある。一方今回の「I LIKE MEN」は、彼女自身のピアノに加えてGuitar、Bass、Drumsを中心とした曲作りになっていてその違いがある。
内容はペギー・リーの比較的上品さをイメージしたヴォーカルを展開し、彼女の父親に捧げた形をとっている。そのことによるのか、とにかく彼女の歌声もそうであるが、上品に癖のないジャズ・ヴォーカル・アルバムに仕上げられている。こうしたアルバムは、確かに聴きやすいし、又違和感なく受け入れられ、ジャズ入門盤的ニュアンスすら感じられる。ただ、こうした癖のなさがある意味では魅力を欠くことになることでもあるのだが・・・。
更に、どうもこの「I LIKE MEN」のアルバムのジャケ・デザインは彼女の顔のクローズ・アップであまりセンスを感じない。それにひきかえ「Memories ・・・・」のほうは、ピアノに寄り添って足下にクラリネットを置いて、にそれなりに工夫されたデザインで魅力がある。
ここで、彼女の1995年来の数枚のアルバムの中での私のお薦め盤を紹介する。
■「CAROL WELSMAN」 Justin Time Records JUST220-2, 2007
1.brazasia
2. hold me
3. dans cette chambre
4. what a foll believes
5. eu vim de bahia
6. cafe
7. live to tell
8. nosotros
9. too close for comfort
10. with me
11. dans mon ile
12. beautiful
13. ora
2000年にはビルボード・ジャズ・アワードでハービー・ハンコックにより全米に紹介され一流どころの烙印もある彼女であり、このアルバムでもなるほどと言わせる彼女のピアノ・プレイとヴォーカルが聴ける。そして、Jimmy Haslip(Bass)、Jimmy Brandly(Drums & Percussion)、Pierre Cote'(Acoustic & Electric Guitars)がバックを支え、その外にSoprano Sax などが曲により加わる。
まず、ジャケ買いしそうなスリーブ・デザインであるが、それも決して間違いではない。ラテンタッチの曲群によってなかなか聴き応えあり、私はお勧めする。3曲目”Dans Cette Chambre”あたりから静かな南米のムードがスペイン語で歌われ押し寄せてくる。全体的にボサノバ風ギターやパーカッションが生きていて、ピアノもしっとりタイプで大人のムードに包まれている。私としてはこのアルバムのパターンが買いである。取り敢えずお勧め盤だ。
カナダからの女性ヴォーカルにこのところジャズ界では話題が多いが、その中でも実力派のキャロル・ウェルスマンを取り上げてみた。
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コメント
2011/9/24、ベニーー・グットマン・オーケストラともに来日し行われる公演の予習に拝見させていただきました。大変参考になりました。
投稿: 和の字 | 2011年9月24日 (土) 11時00分