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2010年8月28日 (土)

聴きやすいジャズ・ヴォーカル/ピアノを演ずるキャロル・ウェルスマンCarol Welsman

オーソドックス・スタイルの15年の歴史を持った実力派

Carolwelsman4  近年カナダから多くの女性ジャズ・ヴォーカリストがお目見えしているが、その中ではもう既にアルバム・デビュー15年の経験のあるキャロル・ウェルスマンCarol Welsman に焦点を当ててみたい。
 
 彼女はピアニストでありソングライティングの実力派。カナダということでダイアナ・クラールを思い起こすが、それが明確な違いを持っている。どちらかというと編曲、ヴォーカルとも比較的オーソドックスで、癖がない。その為非常に聴きやすいし、又前衛風な難しさもない。声も全域にわたって標準的な美しさを持っている。
 彼女の紹介を見ると、もともと祖父はトロント・シンフォニー・オーケストラの創始者で、父はサックスを奏し、母は芸術派と音楽一家で育ったという。アメリカ・ボストンのバークリー音楽大学にてピアノを選考してジャズに傾いてゆく。パリにも渡って経験を積んできたようだ。

「Carol Welsman / I LIKE MEN reflections of miss peggy lee」 Welcar Music WMCD366 , 2009 

CdilikemenCarol Welsman (voc/piano)
Pat Kelly (g)
Rene' Camacho(bass)
Jimmy Branly(drum/cajon)
Kevin Richard(percuss.)
Ken Peplowski(clarinet) 
                         etc.
1. I LIKE MEN
2. DO I LOVE YOU?
3. LOVER
4. I LOVE BEING HERE WITH YOU
5. THE FOLKS WHO LIVE ON THE HILL
6. WHY DON'T YOU DO RIGHT?
7. JUST ONE OF THOSE THINGS
8. JOHNNY GUITAR
9. I'M GONNA GO FISHIN'
10. DANCE ON YOUR OWN
11. REMIND ME
12. FEVER
13. WHEN YOU'RE SMILING
14. ANGELS ON YOUR PILLOW

 このアルバムが彼女の最新のものである。しかしこのリリース直前に2009年の4月には・・・・

「Memories Of You ~ Carol Welsman sings Benny Goodman and Peggy Lee」  MUZAK MZCF1191, 2009

Memories_of_benny_goodmanキャロル・ウェルスマン (VOCAL,PIANO)
ケン・ペプロウスキー (CLARINET)
フランク・キャップ (DRUMS)
レネ・カマチョ (BASS)
ピエール・コーテ (GUITAR)
ジミー・ブランリー (DRUMS)
カッシオ・デュアルテ (PERCUSSION)

・・・・・・・というベニー・グッドマンとペギー・リーへのトリビュート・アルバムを発表している。実はこのアルバムを私は友人から頂いて彼女のアルバムを初めてじっくりと聴くことになったのだが、どうもこのアルバムは2008年に録音して日本先行発売ということになっているが、日本向けの試作品であったようだ。従ってこの「I LIKE MEN」が正式アルバムということになるようだ。

 そんな事情で、この両アルバムは4曲が重なっている。しかし基本的にはあの歴史的名歌手であり銀幕スターでもあったペギー・リーに迫ろうとしたことの企画の下で行われたことであると思われる。その重なった曲の3曲は同一バージョンである。
 しかし、「Memories Of You」のほうは、ケン・ペプロウスキーのクラリネットの音を意識した曲作りであって、そうした演奏の楽しさがある。一方今回の「I LIKE MEN」は、彼女自身のピアノに加えてGuitar、Bass、Drumsを中心とした曲作りになっていてその違いがある。
 内容はペギー・リーの比較的上品さをイメージしたヴォーカルを展開し、彼女の父親に捧げた形をとっている。そのことによるのか、とにかく彼女の歌声もそうであるが、上品に癖のないジャズ・ヴォーカル・アルバムに仕上げられている。こうしたアルバムは、確かに聴きやすいし、又違和感なく受け入れられ、ジャズ入門盤的ニュアンスすら感じられる。ただ、こうした癖のなさがある意味では魅力を欠くことになることでもあるのだが・・・。
 更に、どうもこの「I LIKE MEN」のアルバムのジャケ・デザインは彼女の顔のクローズ・アップであまりセンスを感じない。それにひきかえ「Memories ・・・・」のほうは、ピアノに寄り添って足下にクラリネットを置いて、にそれなりに工夫されたデザインで魅力がある。

Cdcarolwelsman ここで、彼女の1995年来の数枚のアルバムの中での私のお薦め盤を紹介する。

「CAROL WELSMAN」 Justin Time Records JUST220-2, 2007

1.brazasia
2. hold me
3. dans cette chambre
4. what a foll believes
5. eu vim de bahia
6. cafe
7. live to tell
8. nosotros
9. too close for comfort
10. with me
11. dans mon ile
12. beautiful
13. ora

 2000年にはビルボード・ジャズ・アワードでハービー・ハンコックにより全米に紹介され一流どころの烙印もある彼女であり、このアルバムでもなるほどと言わせる彼女のピアノ・プレイとヴォーカルが聴ける。そして、Jimmy Haslip(Bass)、Jimmy Brandly(Drums & Percussion)、Pierre Cote'(Acoustic & Electric Guitars)がバックを支え、その外にSoprano Sax などが曲により加わる。
 まず、ジャケ買いしそうなスリーブ・デザインであるが、それも決して間違いではない。ラテンタッチの曲群によってなかなか聴き応えあり、私はお勧めする。3曲目”Dans Cette Chambre”あたりから静かな南米のムードがスペイン語で歌われ押し寄せてくる。全体的にボサノバ風ギターやパーカッションが生きていて、ピアノもしっとりタイプで大人のムードに包まれている。私としてはこのアルバムのパターンが買いである。取り敢えずお勧め盤だ。

 カナダからの女性ヴォーカルにこのところジャズ界では話題が多いが、その中でも実力派のキャロル・ウェルスマンを取り上げてみた。

 

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2010年8月21日 (土)

ギター職人スノーウィ・ホワイト(2): レスポールを愛するギタリストの歩み

気品あるブルーズ・ロック・ギタリスト

Snowy_white2_2  ピンク・フロイドにてのサイド・ギタリストとしての功績から評価を得たスノーウィ・ホワイトであるが、彼の代名詞はやはり”気品あるギター職人”と言うのが私の印象だ。ロジャー・ウォーターズがピンク・フロイドを離れ、エリック・クラプトンなど多くのギタリストとの共演を経て、再起を賭けたブリーディング・ハート・バンドを引き連れてのベルリンの壁崩壊を期しての一大イベント「ザ・ウォール・ライブ」においても、リック・ディフォンゾRick DiFonzo と共にギターを担当し、素晴らしい演奏を披露した。しかも極めて真摯な態度は観るものに快感であった。そしてその後もウォーターズのライブ(世界ツアー)には常に同行し、リード・ギターの一翼を担っている。2001年、日本に来た際(東京国際フォーラム)は珍しくストラトを握っての演奏であったが、やはり彼にはゴールド・トップ・レスポールが一番似合うし、彼自身のお気に入りでもある。

Whiteflames 「SNOWY WHITE / WHITE FLAMES」 1983 Towerbell Records , 1992 Repertoire Records REP 4293-WY

 これは私の大切にしているホワイトが30歳を過ぎてリリースした1stアルバムである。これぞスタートとして十分なホワイトの姿そのもののアルバムだ。派手に突っ張らない中に、何とも言えない味がある。ここに納められた全曲はホワイト自身の作であり、ブルース・ロック調の曲やジャズイな展開もみられ曲もある。その中で、クマ原田のBass、リチャード・ベイリーのDrumsによって造られるリズムに乗っての彼のギター・サウンドが展開する。又ヴォーカルも担当している。
 なんといっても納められた9曲の中の”Bird Of Paradise”は一度聴くと既に頭に焼き付く快感の曲。この曲全英チャートの3位まで上ったもの。

 スノーウィ・ホワイトは1949年生まれで、本名はテレンス・ホワイトというらしい。10歳になってからアコースティック・ギターを手にするようになる。ジョン・メイオール、エリック・クラプトン、ピーター・グリーンなどに魅力を感じブルーズ・ギタリストを目指したとか。70年代初めにHEAVY HEARTというバンドに属したときにクマ原田と知り合ったようだ。このあたりは1994年に伊藤政則が、アルバム「Highway to the sun」のライナー・ノーツに詳しく書いている。

Photo 「SNOWY WHITE / HIGHWAY TO THE SUN」 Canyon international PCCY 00521 1994

 ホワイトの6thアルバムである。これは日本盤のリリースもあり、日本においては最も知れたアルバムと思う。(これ以前にSnowy White's Blues Agency というブルース・バンドでアルバムを2枚出している)
 このアルバムはWhite Flames Muic というバンドを形作って演奏であるが、ホワイトとクマ原田の共同プロデュースである。
 そしてここで聴かれる曲はやはり殆どホワイトの作品で、ブルーズ・アルバムといっていいものに仕上がっている。又注目はポール・キャラック、クリス・レアそしてゲイリー・ムーア(”keep on working” この曲は約9分に及ぶもので、異色のムードがあり素晴らしいの一言である)がゲスト参加している。更にあのデヴィッド・ギルモアもゲスト参加(”Love, pain & sorrow”)というなにかホワイトの人柄が見えてくるのだ。
 とにかく一口に言うと癖のない曲と演奏である。その点がある意味では少々物足りないと言うことにもなるのだが、ギターの音色とリズムカルなテンポは英国ロックの気品を感じさせる分野に属すると言える。

 いずれにしても今年のライブ盤と来年のスタジオ録音盤を楽しみにしている今日この頃である。

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2010年8月20日 (金)

ギブソン・レスポールを操るギター職人スノーウィ・ホワイトSnowy White

地味なブルース・ロック・ギター職人ではあるが・・・

Snowywhite1 ピンク・フロイドの creative genius (創造的才能・守護神) と言われているロジャー・ウォーターズを、延々と支え続けてきたギタリストと言えば、このスノーウィ・ホワイトSnowy Whiteとアンディ・フェアウェザー・ロウAndy Fairweather-Lowであると言えるだろう。まさにこの二人はギター職人そのものである。そのスノーウィ・ホワイトが、「In Our Time.....Live」というニュー・アルバムをリリースする。又来年には更に「Realistic」というWhite Flame Bandによるスタジオ・アルバムも発表するという嬉しい話が伝わってきている。
 そんな時でもあり、ふと私の彼に対する愛着として所持している(実は4枚のみであるが)アルバムの愛聴盤をここで紹介してみたい。

Liveflames 「SNOWY WHITE & the WHITE FLAMES / LIVE FLAMES」 2007 snowy white & the white flames

このCDアルバムはインディーズ盤でもちろん日本盤はない。彼の1996年からのユニット・バンドにての演奏による2007年リリースのライブ・アルバムである。彼のアルバムはポニーキャニオンから日本盤も出された1994年の「Highway to the Sun」が最右翼かも知れないが、私は最も気に入っているのがこのライブ・アルバムだ。
Liveflameslist 収録されている曲は左のとおりである(クリック拡大参照)。2曲を除けば全て彼のオリジナル曲であり、ヴォーカルも聴かせるが、なんといっても彼のギブソン・レスポール・ギターの音色とそのテクニックの素晴らしさに尽きる。彼のギターの根底はブルース・ギターといっていいと思うが、シン・リジーThin Lizzyのロック・バンドのギタリストという経歴からもロックを基調としていることは間違いない。しかし彼がそれ以前にピンク・フロイドのサイド・ギタリストとして技能を発揮して多くの注目を浴びて以来、彼は彼の世界をじっくりと築いてきている。
Gibson1  わたしに言わせるとこのライブ盤聴かずしてスノーウィ・ホワイトを語るなと言いたいほどに彼の真価が凝縮している。彼の愛するゴールド・トップ・レスポールを軽快に真摯なサウンドを見せるかと思うと一方泣きギターの音で迫ってくる。
 (バンド・メンバー)
    Snowy White : Guitar/Vocals
    Juan van Emmerloof : Drums
    Walter Latupeirissa : Bass
    Max Middleton : Keybords
このようにキーボードの加わった4人編成。2006年のホワイトの”White Flames UK tour”を納めたもの。彼の最初のライブ・アルバムである。幸いにあまり大きな会場ではなさそうで録音も秀逸。彼のギターそしてベースなどの音も手に取るようにクリアに録音されていて貴重盤。

Swbluesproject さて、もう一枚は目下最も近作である・・・
「The Snowy White Blues Project / In Our Time of Living」 2009 Snowy White Blues Project (左)

 これは最近のユニットである。ホワイトのブルース・ロック・ギターが非常に技巧が細やかで心に迫ってくる。編成はツインギター(Snowy White , Matt Taylor)とベース(Round Weber Jr.)、ドラムス(Juan van Emmerloot)の4人バンド。
 特にギターはホワイトのレスポールとテイラーのストラトのツインが生きている。こうしたギター・サウンドを職人的に仕上げていくのが、スノーウィ・ホワイトの信条だ。このメンバーによるライブものが、今回リリース予定のアルバムだと推測する。
 演奏曲は、ホワイトの曲のみでなく、テイラーやウェーバーJrのものも対等に多く収録されていて、このユニットの楽しさが伝わってくる。タイトル曲の”In Our Time Of Living”や”Red Wine Blues”のブルース・ギターには痺れてしまう。
 ホワイトのバンドは”Snoey White's Blues Agency”そして”Snowy White & the White Flames”と経て、現在はこのユニットが動いていると思われる。

 スノーウィ・ホワイトの近作の愛聴盤2枚を紹介したが、ますます充実してきている彼のブルース・ロック・ギター・サウントは英国にとっても至宝的存在であると私は断言する。今年はこれからロジャー・ウォーターズの”ザ・ウォール THE WALL”北米ツアーと来年のヨーロッパ・ツアーに同行するが、かってのウォーターズのピンク・フロイド時代の”ザ・ウォール”のアルバムとツアー(1979年)に参加しているし、ベルリンの一大ショーの”ザ・ウォール”(1990年)でも大きな役割を果たした。彼はステージでも派手ではなくむしろ職人的味みせてくれる。今回もそのテクニックとサウンドに期待している。
(他のアルバムは又次回にまわして紹介したい)

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2010年8月18日 (水)

私の映画史(10) 「ジャイアンツ」(原題 ”GIANT” 1956年アメリカ映画)

30年に及ぶアメリカ・テキサスでの大河ドラマ

Giant1  私が十代に観た映画である。 なんと言ってもあの若くしてこの世を去ったジェームズ・ディーンの最終作。(当時のポスターは左のように写真でなく手で描いたものであった)
 原作はアメリカの女流作家エドナー・ファーバーが12年の歳月をかけて発表してベスト・セラーになったもの。それをジョージ・スティーブンス(製作・監督)が取り上げた。

 (キャスト)
  エリザベス・テーラー(Leslie Benedict)
  ロック・ハドソン(Bick Benedict)
  ジェームズ・ディーン(Jet Rink)
 (脚本)
  フレッド・ガイオル
 (撮影)
  ウィリアム・C・メラー 
 (音楽)
  ディミトリ・ティオムキン

 舞台は、テキサスにおける古い時代(牛の放牧)から新しい時代(石油文明)への30年に及ぶ流れである。
 大牧場主ビック・ベネディクトと東部から嫁いだレズリーの夫婦の多彩な人生を描く中に、二人に生まれた3人の子供、使用人のレズリーに恋心を持ったジェット・リンクの生き様を織りまぜて、アメリカ社会の問題点を取り上げている。

10239view016_2  この映画の流れはロック・ハドソンとエリザベス・テーラーの演ずる夫婦であるが、監督はもともとはウィリアム・ホールディンとグレース・ケリーを予定していたという。更にこの夫婦にからむ使用人のジェット役には、アラン・ラッドそしてリチャード・バートンを考えていたが、ジェームス・ディーンがかなりの熱意でアッピールして最終的には監督のスティーブンスが折れての起用になったという。更にエリザベス・テイラーはこの時妊娠しており、出産まで待っての撮影スタートであったようだ。

Photo  この映画の私が評価するポイントは何点かある。まずは、若き夫婦が多くを経験してゆく中から人間として大切なものを掴みながら人生を歩んでゆく姿をかなり丁寧に描いている。として、この夫婦に絡む使用人のジェットは、石油を掘り当て億万長者となるが、人間関係が構築できずに人生に虚無感を感ずるに至る哀しい姿を描いていること。アメリカ社会における大牧場主や石油王という財力の社会の意味。南部に残る人種差別と使用人の非人間的扱いの社会を批判的に描いている。時に起きた第二次世界大戦の戦争によって若い命が失われるという悲惨な状況・・・などである。

Photo_2  この5つのポイントの中でも、俳優ジェームス・ディーンの(既に過去の映画の役回りから自然と造られてきた)社会や家族から阻害されて生きていく男(ジェット)の姿が印象深い。成就ありえない主人の妻レズリーに恋心を持つに至り、必死に生きて石油王になり、財を成して全てを手に入れることが可能なアメリカ社会に君臨する。しかしただ一つ実現できなかった恋心は、時は流れてその成長したレズリーの娘ラズ(キャロル・ベーカー)に今度は心を寄せる。しかしその空しさをジェームス・ディーンは演じきった。晩餐会での泥酔しての告白シーンは見事であった。これは監督を口説いてまでももともと無かったそのシーンを作り演じたという。

 しかし、この映画はあまりにもポイントが多く散漫になってしまった感もあり、当時一部には批判もあったが、見方によればこの諸々の状況をも、人間のとっての価値観を描こうとしたことに絞ってみると、監督の目指したものが見えてくる。ロック・ハドソン演ずる主人公の大牧場主ビックが、封建的な地主の家族主義から、人間にとっての価値は何なのかを次第にエリザベス・テーラー演ずる妻と共に築いてゆく。財を成したジェットにとってのただ一つ手に入れられなかったものの重要さ。これらは人間の社会においてアメリカ独特の差別というものに焦点を当てながら人間にとっての大切なものを教えているのだ。

 この1956年という時に、経済中心のアメリカ社会の問題点、そして誰もが手を付けなかった人種問題などに果敢にアプローチして、人間の価値観を追求した一大ドラマを描ききったスティーブンス監督に喝采を浴びせたい。そして幸いにスティーブンスはこの映画でアカデミー賞監督賞を受賞した。

 又、この映画製作当時は、映画が最大の娯楽であった時代で、大衆音楽も映画音楽が主流をなし、この映画の音楽を担当したディミトリ・ティオムキンの主題曲”ジャイアンツ”は日本でもビック・ヒットした。彼はロシア(ウクライナ)生まれでベオグラード音楽院に学び、革命後のスターリン独裁体制確立の少し前の1925年にアメリカに移っている。私の知る限りでは西部劇の名作は彼の音楽が最も知れるところだ(「真昼の決闘」、「赤い河」(このブログ2010.5.10参照)、「アラモ」、「リオブラボー」など)。

(視聴)

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2010年8月14日 (土)

キース・ジャレット Keith Jarrettの世界(9) ソロ活動の集大成?「Testament」

遺言?聖約?証拠(あかし)?表明?

Testament 「KEITH JARRETT  PARIS/LONDON   Testament」 ECM Records ECM2103-32 , 2009

 キースが復活して10年が経過した。そして彼のソロ活動も続けられていてホッとしているところだ。これも最近の久々のソロ・アルバムである。
 2008年には来日してのソロ・ライブがあったが、その年の暮れのパリとロンドンで行われたライブが3枚組アルバムとして昨年リリースされたもの。
 この年は、例のスタンダーズ・トリオのライブが中心であったが、こうしてソロ活動も行われ、そしてそのライブ録音盤が「Testament」というタイトルが付けられ我々に提供されている。

 そもそもキースのソロ・アルバムには3っのスタイルがあることを(4)(2010..6.15参照)で書いたが、このアルバムはその中の”オリジナル即興ライブ演奏集”である。彼の真価はこのスタイルに注目度は高いが、彼の若き時代の名盤「ザ・ケルン・コンサート」(1975)のように、音楽という世界に挑戦的に彼自身の世界観を作り上げようとしていた時のモノと今回のこのアルバムはかなり意味合いが異なっていると思う。そのあたりにスポットを当ててみたい。

Keitha_4  キースは例の慢性疲労症候群という未だ解明が十分でない疾病のため1997年4月に病床に付く。それから約一年半以上は音沙汰もなく、噂では再起は危ぶまれていた。しかし1998年11月に、GaryとJackとでのトリオでアメリカにて再起を果たした。
 そしてアルバムでは、珍しくもソロでのスタンダードナンバー演奏盤(自宅録音「THE MELODY AT NIGHT , WITH YOU」)にて復活。その内容はかっての緊張感とは別の”優しさ”の溢れたものでその変化に驚かされたものだ。それもそのはず、自己の病気に対して献身的介護をしてくれた妻への感謝のアルバムであったとか、それにしても彼の演奏にこうした面があることは感動でもあった。

 そんな経過の中で、2006年の「The Carnegie hall Concert」というソロ・アルバムがあったが、今回のこの「Testament」とあらためてタイトルの付けられたところに何か大きな意味を感ぜざるを得ない。
 このアルバムのライナー・ノーツにはキース自身によって書かれている。彼の長いソロ活動の思いが綴られている。彼自身の個人的人生からの諸々の状況下にて生まれる演奏や、聴衆との融合・反応によって創り出される即興の意味合いにも触れている。特に注目点は、特別に周到な用意もなくピアノに向かっての演奏によって、聴衆に新たな感銘を与えられることそのことは”NOT natural”と表現している。
  しかし、それに挑戦してきた中での今回のアルバムのタイトルだが、和訳してみると”遺言”、”聖約”、”証拠(証し)”、”表明”などとなるが、果たしてキースは何を表したのであろうか?。
 演奏曲の内容は極めて濃い。かってのような長い曲というよりは5~6分から10分ぐらいの曲群によって構成している。パリは6曲、ロンドンは12曲に分かれる。両者とも動、静、快活の交代によって効果を高める手法がとられている。特に動ではあるときは前衛的な技巧の展開をみせ、静部分においてのメロディーの美しさは圧巻である。又深遠な世界にも導いてくれる。今回もやはり聴衆の拍手は演奏と重なるところはなく見事であったが、やはり私にとっては不要である。と言うよりむしろ邪魔である。キースの演奏には静寂な余韻が合うと私は常に思っている。

 さて、歴史的ソロ・アルバムの中でのこの占める位置は?となると、私はキースの”難病との戦いのあとの人間の表現の世界”であると感じてならない。本人の自覚は別として、私は彼は人生の円熟期に入ったと確信して聴いている。かっての挑戦のケルンとは別世界である。そしてやはり集大成に入ったことを感ずるのである。

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2010年8月 9日 (月)

キース・ジャレットKeith Jarrett の世界(8) 忘れられないアルバム

 既に、キース・ジャレットの多くのアルバムを取り上げてきているが、まだまだ忘れられない名盤がある。これらを取り敢えず回顧と期待とを持ってここに少しずつ記しておきたい。

Byebyeblack 「Keith Jarrett Trio / Bye Bye Blackbird」ECM  POCJ-1165 , 1991

 キース・ジャレットは彼の恩師とも言えるマイルス・デイヴィスの死(1991年)に直面して、その死後2週間後に追悼の意味をこめてスタジオ録音を行った。それは彼の音楽活動の最も中心となったゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットとのスタンダード・トリオによってのトリビュート作品となった。ジャケ・デザインもトランペットを持ったマイルスの後ろ姿を描き、演奏曲もマイルスが愛した曲を中心にしている。そして一曲キースのオリジナル曲”for miles”が入る。
 キースにとってのマイルスは、彼の人生を通しての音楽活動の原点をなしており、”人間”というものに迫る世界観を共有している。そんな状況下にてのマイルスの死は、キースをして心通じ合ったトリオによって、惜別と同時に自分の世界観を築こうとしたのであろう。

 (収録曲)
    1. Bye bye blackbird
    2. You won't forget me
    3. Butch and butch
    4. Summer night
    5. For miles
    6. Straight no chaser
    7. I thoght about you
    8. Blackbird bye bye

 冒頭の曲”Bye bye black bird”(Ray Hendersonの曲)にてマイルスを描き、最終曲”Blackbird bye bye”では彼らのインプヴィゼーション部分を再構築してのアルバムしあげという手法をとってトリビュート・アルバムであることを強調した。
 このアルバムに選ばれた曲群は、その彼ら特有の手法でスタンダード曲を哀愁ある美学で演奏しきっていて私のお気に入りの一枚である。
 更に、18分を超える”For miles”は、ディジョネットのドラムスから始まり、キースの悲しげな哀愁あるピアノが静かに現れてくる。そしてそれが何時までも終わりを知らないかのような流れでしっとりと聴かせる。トリオの自然に生まれる結晶といっていい心に響く曲だ。


Standardlive「Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack Dejonette / STANDARDS LIVE (星影のステラ)」 ECM uccu-5028 , 1985

 なんといっても、このトリオが結成され(1983年)、その演奏はスタンダード曲をオリジナル曲のごとく昇華させて見せたことで驚かされた。もともとこのトリオはスタジオ用に結成されたものであったようだが、ここに初のライブ盤の登場となったのだ(パリにて収録)。そんな意味でもこれから現在にまで続く彼らのライブ活動がここから始まるという記念すべき盤。それは1985年のことであった。

 (収録曲)
    1. Stella by starlight 星影のステラ
    2. The wrong blues
    3. Falling in love with love 恋に恋して
    4. Too young to go steady
    5. The way you look tonight 今宵の君は
    6. The old country

 これまでに、自作オリジナル曲や、インプロヴィゼーションの展開、更にはマルチ・プレイヤーとしての姿など、キースは彼自身の独特の世界でジャズ界に入り込んでいた。しかし、1983年のこのトリオによるスタンダード・ナンバーを演奏することにより、過去のの名曲が意外な展開を見せ始め多くの関心を得たのだ。そしてここに初のライブ盤の登場で、彼の世界観から生まれるスタンダード曲の現代化がライブ演奏の魅力も加わって、いよいよ聴くものに親近感を生んだのだった。
 一曲目の”星影のステラ”は、キースの甘いメロディーとスウィングする展開が見事で、彼らのイメージを作り上げるに十分なスタートである。
 ”Too young to go steady”では、キースのピアノが実に気持ちよく流れる。そして後半に入ってのドラムスとの展開は楽しい。
 締めくくりの”The old country”は極めて評判が良かった。いわゆる流れの良さとピアノの旋律の美しさだ。

 このようなライブで、会場と一体化しての聴かせる展開が見事であって、そんな世界を初めてこのトリオがリリースした記念的なアルバムとして印象深い。キースの音楽スタイルは難解なものも多いが、スタンダード演奏の世界は、ふと聴かれる聴き慣れた旋律と彼のアドリブになにか気持ちが安らぐところが魅力なのかも知れない。

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2010年8月 3日 (火)

ケイティ・メルアのニュー・アルバム「the house」

一つの転機か?過去のアルバムから一歩脱皮


Thehause 「Katie Melua / The House」 DRAMATICO DRAMCD0061,  2010

 比較的日本では広く行き渡って聴かれているというわけではないが、私の注目歌手の一人であり、ここでも何回か取り上げているケイティ・メルアのベスト及びライブ盤を除くと、4thアルバムとなるニュー・アルバムの登場である。今回も日本からのリリースは今のところない。
 3rdアルバム「Picture」以来久しぶりだ。グルジア(旧ソビエト)出身の英国での活動の彼女、かなりの評価を得ているにもかかわらず、どうゆう訳か日本版のリリースがない。(レコード会社の関係か?)
Photo  収録曲は左のごとくの12曲(クリック拡大参照)。そのうち11曲は助けを得ながらも彼女のオリジナル曲ということで、相変わらず自己の力を示している。ただし1stアルバムからの彼女の世界を造って来たかってのMike Battの関係した曲は1曲のみとなっている。そして演奏からも彼のピアノは消えている(彼はExective Producerと記されている)。そして今回は、彼女自身はアコースティック・ギターの演奏のみのヴォーカル中心の作品となっている(バンド構成はDrums , Guitars , Bass , Keybords )。
 そんな訳か、今回のアルバムはイメージが若干変わっている。基本的には、ややJazzyな印象は後退して、どちらかというとポップスである。
Katiemelua  さてさて、その内容であるが、スタートの”I'd love to kill you”は多分彼女自身の静かなアコースティック・ギターに乗ってのラブ・ソング。これは3rdまでの彼女の世界である。しかし2曲目の”The flood”となるとイメージが変わる。若干アジア的世界観というか?、彼女のグルジアの雰囲気か?、そして一転して迫り来るパワーを感ずる曲である(シングル・リリースしていた曲)。そしてそれに続く”A happy place”と続いて、彼女の訴えを歌い上げているような展開となる。このあたりがこのアルバムの一つの焦点のような気がする。
 そして4曲目には”A moment of madness”は、ちょっとタンゴ調の大人の世界に変わる。
 私の好みは、やはり失恋曲(?)”Red Balloons”とか、8曲目の哀しげなギターの音をバックにしての”The one i love is gone”あたりが好みである。
 そしてタイトル曲の”The House”は、このアルバムでは中身が濃い。スロー・テンポの曲であるが、彼女の歌が凝縮してている。ここに彼女の別の一つの世界が示されている。彼女の人生の中にあるかっての哀しい中身でも示していそうな世界でもある。これはお勧めである。
 いずれにしても、このあたりは日本盤がリリースされ、専門家のライナー・ノーツも拝見したくなるが、目下のところはそれはない。
 この盤は、やはり最後の曲の締めによって、やはり良いアルバムという結論を持った。

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