私の映画史(11) ソフィア・ローレン「河の女」(1955年イタリア映画)
ソフイア・ローレン Sophia Loren 高松宮殿下記念世界文化賞受賞
ここにきて、あのイタリア女優のソフィア・ローレンが日本で話題になるとは考えてもみなかった。彼女は1934年生まれであるので今年76歳になる。しかし私にとってはもっと年齢が高いと思っていた。そして最近の活動は全く知らなかったので、こんなに元気であることも驚きであった。
昨日のニュースで知ることになったのだが、優れた芸術の世界的創造者達を顕彰する「第22回高松宮殿下記念世界文化賞」の”演劇・映像部門”に選ばれた。この他、”音楽部門”ではマウリツィオ・ポリーニ(68歳)も受賞となった。
さて、そのソフィア・ローレンであるが、約20年前にアカデミー賞名誉賞受賞という話は記憶にあるが、その後も映画に出演しているようで驚きだ。何故かというと私にとっては彼女のインパクトのあった作品は、もう既に50年も前にさかのぼるからだ。時代はあの戦争後日本がようやく大きな発展を遂げようとしていた時代。音楽では日本に洋楽の楽しさを教えて話題になったあのペレス・プラードがマンボというスタイルを広げた直後の1955年である。
「河の女 La donna del fiume (Woman of River)」 イタリア映画 日本公開1956年
この映画の主演がソフィア・ローレンである。彼女は体格もよく美人ということで話題になるが、当時の私にはあまり美人には感じなかった。むしろ個性的な顔貌による迫力は他の女優とは一線を画していたと思っていた。この映画は主題歌「マンボ・バカン」がヒット。そして初めてローレンがマンボ・ダンスを一般に見せたという話題もあった。
考えてみると当時21歳であったとは考えられない彼女の迫真に迫る演技には今思うと脱帽ものだ。
(監督)マリオ・ソルダーティ
(製作)カルロ・ポンティ(後にローレンと結婚)
(出演)ソフィア・ローレン(Nives)
リク・バッタリア(Gino lodi)
ジェラール・ウーリー(Enzo cinti)
私が何故この映画を、私自身の「映画史」に取り上げるかというと、若き私にとつての人間の相(さが)と人情のきびというものに圧倒的なインパクトがあったからだ。ローレンの名を挙げると日本では映画「ひまわり」(1970)と言うことになろうかと思うが、私にとってはそれ以上の名作と今でも思っている。
(あらすじ)
ポー河の河口漁村における若き男女の物語。ジーノは漁師であり密輸もやり更に女誑し。魚工場で働く女ニイヴェス(ソフィア・ローレン)をもてあそび捨てる。しかし彼女に想いをよせる警官エンツォはジーノの密輸の摘発を彼女に迫る。数ヶ月後彼女はジーノの子供を身籠もったことを知る。その後ジーノは逮捕されるも脱獄。又ニィヴェスはジーノの子供を産み育てるも、その愛児が突然行方不明となりジーノの仕業かと思ったが、河中から溺死体で発見される(死体を発見する母親の悲惨なシーンは、ローレンの心搏の演技で、この映画のクライマックスでもある)。ジーノも我が子の死を眼前にして自分の生き方とニイヴェスの愛を心底に感じながら刑に服する。ニイヴェスは彼の帰りを待ちながら生き抜く決意をする。
ローレンは、この映画で若き躍動の女性をマンボを踊る姿で見せ、一方現実の厳しさの中で一児を懸命に育てる母親としての姿を演じた。何故この映画を当時観ようと思ったかは全く記憶がない。ただ若き私には強烈な印象が残っているし、ソフィア・ローレンという女優の存在を知らしめた作品であった。(この2年後には米映画「失われたものの伝説 Legend of the lost 」に抜擢され、ジョン・ウェインの異色作に出演している)
今回、日本に来て授賞式に出席の予定のようである。この映画DVDでは見当たらないので、記念にリリースして欲しいと思っているところだ。
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コメント
風呂井戸さん、こんにちはmonakaです。
ソフィア・ローレンはもちろん私たちよりか年上なので河の女など後から知った作品で、何とも力強い女性はとても印象に残りました。
でも以後の輪郭の強い感じは大好きで、はいグレース・ケリーとこの人が実は好き対局です。
品もありませんがTBさせていただきます。
投稿: monaka | 2014年6月11日 (水) 21時53分
monakaさん、コメントどうも・・・です。
私自身の感覚が歳のせいで鈍っているのでしょうか?。ソフィア・ローレンのようなインパクトのある女優が今はなかなか見当たりません。
投稿: 風呂井戸 | 2014年6月11日 (水) 22時41分