ハービー・ハンコック Herbie Hancock (3) : やはりアルバム「River」は凄い
ジョニ・ミッチェルに敬意の作品
多くのミュージシャンをフューチャリングして、そして一つの世界を構築する最近のハービー・ハンコック。前回は最新作アルバム「Imagine Project 」をレビューしてみたんですが、私にとっては、前作(2007年)のジョニ・ミッチェルをトリビュートしたアルバム「River」が忘れられず、つい比較してしまうのである。つまり両者全く思想の異なるアルバムであると思うし、比較の仕方がこれ又難題である。しかし好みはどっちか?と言われると個人的であって答えは出しやすい。そんな意味でここで取り上げると言うことは、こっちが好みなんです。
「Herbie Hancock / RIVER the joni letters」 VERVE B0009791-02 , 2007
昔私がハンコック・ファンに遂になってしまったアルバム「Secrets」 (1976)、そしてその後のVSOPなどの活動を思い起こすと、ちょっと考えられない作品がこのアルバムだ。
そして、あのカナダ出身の芸術家と言ったほうがいい泣く子も黙る女性ミュージシャン(シンガー・ソングライター)であるジョニ・ミッチェルJoni Mtchell とハンコックはどうゆう関係にあるのかは知らないが、しばらく音楽活動が途絶えていた彼女の再起を歓迎してのトリビュート・アルバムなのだ。
彼の多くのアルバムは全て所持しているわけではなく、ただしグラミー賞最優秀アルバム賞ということになると買わざるを得なかったこの作品。ほんとに手に入れて良かったと思うのである。ここで改めてレビューする。
1. Court and Spark : featuring Norah Jones
2. Edith and the Kingpin : featuring Tina Turner
3. Both Side Now (instrumental)
4. River : featuring Corinne Bailey Rae
5. Sweet Bird (instrumental)
6. Tea Leaf Prophecy : featuring Joni Mitchell
7. Solitude (instrumental)
8. Amelia : featuring Luciana Suza
9. Nefertiti (instrumental)
10. The Jungle Line : featuring Leonard Cohen
7 (Duke Ellington)、9 (Wayne Shoter) の2曲以外の8曲はジョニ・ミッチェルの作品だ。そして招かれた女性ヴォーカルがジョニ・ミッチェル本人の他4人の錚々(そうそう)たるメンバーである。
(バンド・メンバー)
Herbie Hancock : Piano
Wayne Shorter : Sop. and Tenor Saxophone
Dave Holland : Bass
Vinnie Colaiuta : Drums
Lionel Loueke : Guitar
とにかくハンコックのピアノ・サウンドがクリアで心地よく説得力のある響きがあり、ウェン・ショーターのサックスがムードを盛り上げるそんなアコースティック・ジャズ・アルバムである。
スタートは、ハンコックの静かなピアノにより始まり、いかにもトリビュートといった感が満ちている。ヴォーカルはノラ・ジョーンズが先陣をきって登場。そして続いて2曲目には昔CCRの”プラウド・メアリー”を歌ってヒットし、1980年代にはグラミー賞を獲得したロックのティナ・ターナーが懐かしの声で迫る。女性ヴォーカルは続いて4曲目に英国のこれはどちらかというとソウフルなスタイルで話題の若いところのコリーヌ・ベイリー・レイ。5曲目はジニ・ミッチェルが歌う。そして8曲目にはブラジルの優雅な歌姫のルシアーナ・ソウザ、彼女とショーターのサックスとの競っての歌い上げが印象深い。このようにハンコックの招集能力は凄い。そして最後の曲はがらっと変えて、レオーナード・コーエン(このブログ2010.3.22に紹介しているので参照)の年季の入った男の語りに近いヴォーカルが登場してこのアルバムを締める。
こうした多彩な女性ヴォーカルを中心に、詩情豊かに仕上げたジャズ・アルバムということであるが、実は私は3、5、7、9曲目のインストゥルメンタルの4曲の演奏に注目している。ハンコックとショーターの一つの境地でもあるのかと思うのだが、この達観した人生観といった演奏に感じられる。静かな中の人間の精神性を描いているように思えてならない。私の好きなアルバムなのだ。
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