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2010年9月 7日 (火)

ハービー・ハンコック Herbie Hancock (2):70歳の挑戦か?「IMAGINE PROJECT」

世界各地でのミュージシャンとの共演は「平和と地球規模の責任」と

Herbie1  今年の4月で70歳を迎えたハービー・ハンコックがニュー・アルバムをリリース。彼の記念アルバムのようだが、その規模は大きい。
Imagineproject 「Herbie Hancock / The IMAGINE PROJECT」 Hancock Records HR 0001 , 2010

 このところ数年、彼は自ら前面に出るというのでなく、多くのミュージシャンとの交流を楽しんでいるかのごとくの様子が窺えたが、このアルバムはそんな世界観からか?と・・・聴いてみると、いやいやなかなか彼のピアノ・プレイが十分に押し出されているいる。
 もともと、彼の歴史の中で(私のこのブログ2010.2.14「ハービー・ハンコックの衝撃」参照)、彼の音楽活動の多面性には驚かされるところであったが、それは彼の挑戦の歴史でもあると思ってきた。そして現在もその延長線にあると言ってもいいのかも知れない。
 前作「River the joni letters」はグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞して、そこに出た言葉には”現在になってようやく音楽の分野においても世界的規模に平等感が生まれたと感じた”と言っている。彼の音楽活動の人生でも、マイルス・デイビスなどの過去における評価に不満もあるのだと思う。

 それはさておき、このアルバム”イマジン・プロジェクト”と題されて、世界各地でレコーディングするという離れ業に加えて、参加ミュージシャンの多様性に圧倒される。収録10曲で以下の通りである。

   1. IMAGINE  featuring : P!nk, Seal, India.Arie, Jeff Beck
   2. DON'T GIVE UP featuring : P!nk, John Legend
   3. TEMPO DE AMOR  featuring : Ce'u
   4. SPACE CAPTAIN  featuring : SusanTedeschi, Derek Trucks
   5. THE TIMES, THEY ARE A'CHANGIN'  featuring : The Chiftains, Lisa Hannigan
   6. LA TIERRA  featuring Juanes
   7. TAMATANT TILAY/EXODUS  featuring : Tinariwen, K'naan, Los Lobos
   8. TOMORROW NEVER KNOWS  featuring : Dave Matthews
   9. A CHANGES IS GONNA COME  featuring James Morrison
  10. THE SONG GOES ON  featuring : Chaka Khan, Wayne Shorter, K.S.Chithra

Herbie_hancock_2  ジョン・レノン、ピーター・カブリエル、ボブ・ディラン、サム・クック などなどの曲が取り上げられ、バーデン・パウエルの曲も登場する。アメリカ、英国、フランス、ブラジル、インドなどで録音している。曲の展開のカラーはアフリカ色が強い。単にジャズという世界とは異なって、やはり民族音楽的ニュアンスをハンコックの実にクリアなピアノ・サウンドが支え、とにかく一曲一曲の完成度が高い。それなりのミュージシャンが揃うとやはり中身が濃い。よくもまあこれだけの企画を成功させたものと、ハンコックの実力には敬服する。近年彼の得意な一つのパターンとして、多彩なミュージシャンを生かして彼のアコースティック・ピアノの響きを展開するこの手法も板についている感じがする。サンタナも彼の場合はギター・サウンドで同様な世界を構築しているところが面白い。この両者、東洋思想に傾倒したところも似ている。

 一曲目には、ジェフ・ベックがフューチャリングされているが、彼のギターをじっくり聴こうと期待しない方がいい、わずかにそれらしく聴こえる程度。イマジン・プロジェクトとは言えども、ボブ・ディランの曲”The times,They are A'Changin'”の意味も大きそうで、The Chieftains そしてLisa Hanniganが頑張って Larry Klein がBass を担当している。
 Bass といえば、この企画ではあの Tal Wilkenfeld 嬢が何曲かに参加して、サム・クックの”A Change is Gonna come” ではその実力を発揮している。 この企画の流れのハービー・ハンコック70歳記念ライブでは、彼女がBassで参加しているがヴォーカルも女性としてはクリスティーナ・トレインと共に披露している。
 
 聞き応えは十分なアルバムである。ただし前作の「River」のような詩情豊かな作品(実は私はあのタイプのほうが好みであるが)とは異なるので、別の楽しみ方をして欲しい。

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