ロジャー・ウォーターズRoger Waters「ザ・ウォール・ツアー 2010」スタート
圧倒的なグラフィックス映像をバックにしての壮大なロック・ショー
ロジャー・ウォーターズの「ザ・ウォール・ツアー2010」がこの9月15日カナダからスタート。ピンク・フロイド時代の1979年のアルバム「ザ・ウォール THE WALL」の完全演奏と、バックには圧倒的なグラフィックス映像の展開で既に話題が沸騰している。
スタートの曲”In the flesh?”からバックのグラフィックスが曲に合わせて変化し、火花がステージに飛び散り、戦闘機が頭上を飛び衝突炎上。冒頭から観衆を興奮させる手法だ。今回のライブ・ステージは、これでもかこれでもかとあの手この手で圧倒してくる。例のごとくステージ上に壁が築かれ、倒壊させるところはベルリン・ライブと同じ。しかしこの壁に映されるコンピューター・グラフィックスを駆使しての映像は圧巻。
前半、”The thin ice”、”Another bricks in the wall-P.1”、”The happiest days of our lives”は、左右に既に壁は築かれており、その中央で比較的淡々と演奏を聴かせる。
そして”Another Brick in the wall-P.2”では、Dave Kilminster、Snowy White、G.E.Smith の3人のギターが響き、近年のウォーターズの手法である地元の少年少女約20~30名ほどをステージに上げて合唱させ、”We Don't need education ・・・・ Hey, teacher, leave the kids alone ”と、ステージ上の巨大な教師の動く人形に向かって叫ばせる。ここまでやってしまうのかと・・・・。
続く”mother”では、ピンク・フロイド時代の若きウォーターズ(1980年, EARLS COURT)の巨大な演奏映像がシンクロして映し出され、ここでウォーターズとRobbie Wyckoff が歌い上げる。もともとやや猫背のウォーターズであるが、歳を重ねてその程度は増した感があるが、ギター弾き語りのヴォーカルはまたまだ声量と高音部も十分で健在であった。
”Goodbye blue sky”は中央の円形スクリーンと左右の壁に戦争下の戦闘機が飛び暗黒の世界のムードを盛り上げる。
”Young Lust”これがなかなか気合いが入っている。当時ピンク・フロイドのこのようなハード・ロックには聴くものをして驚かされた。この演奏では左右の壁への女性の映像が印象的だ(かって30年前、ウォーターズとギルモアが一つのマイクに口を寄せて”Ooooh I need a dirty woman”と唄った曲だ。当時は若かった。この歌詞からも・・・・・)。
前半の終章の”Another bricks in the wall -P.3”から”Goodby cruel world”への次第に盛り上げていく世界は相変わらず見事。最後は壁が完成して中央のウォーターズのみの世界となる。(ここでIntermission)
後半にはいると壁の裏での”Hey you”の演奏が始まる。ベルリンではポール・キャラックの印象的な歌をWyckoffが健闘。
さて”Vera”から一つのクライマックスでもある”Bring the boys back home ”には、ウォーターズの熱唱だ。ここに例のアイゼンハワーの言葉がステージ・バック全体に築かれた壁に映し出される。" ・・・・・・A THEFT from those who hunger and are not fed those who are cold and clothed"が強烈に訴えてくる。そしてお待ちかねの”Comfortably numb”に繋がっていく。
”Comfortably numb” はいつもどおり語りかけるようなウォーターズの歌に始まり、築かれた壁のやや左上に天に放射するライトをバック浴びてギルモアのパートをWyckoffが歌い、右上にはDave Kilminster がやはりバックライトで登場し、例のギターを熱演する。完璧な演奏だ。最後に壁に描かれるグラフィックスに観衆が沸く。
そして”In the flesh””Run like hell”とロックの醍醐味を聴かして、終章に向かっての盛り上がりは凄い。”The trial”はあのジェラルド・スカーフのアニメーション映像がめくりめくって展開し、ウォーターズの最後の熱唱が観られる。完全にオペラと化す。うーーん、ウォーターズは歳を考えれば凄いパワーだ。
興奮の中でベルリン同様壁が壊される。そして”Outside the wall”で幕を閉じる。
この「ザ・ウォール・ライブ」は、ピンク・フロイドの時代に圧倒的観衆を集めたが、大赤字を出したことで有名だ。それは舞台および道具立て更には多くのスタッフに多大な費用を要したためだ。それを顧みず、ロジャー・ウォーターズはそれに勝るステージを作り上げた。もうこれは彼の意地以外の何者でもない。昔のライブ・メンバーではスノーウィ・ホワイトしかいない。彼はこのライブに参加してどう思ったことか?。このホワイトのギターも相変わらず渋い。ギターと言えば今回おなじみのアンディ・フェアウェザー・ロウに変わって G.E.Smithがギターで参加している。なかなかスライド・ギター・テクニックなどで、老獪な演奏を展開しているところも見物である。
更に今回はロジャー・ウォーターズのライブには何時も同行するキャティー・キースンらの女性ヴォーカル陣はいない。全て男性群のパワーで迫ってくる。
今回のツアー・メンバーは、ドラムスのGraham Broad、キーボードにJon Carin、Harry Waters。そしてバッキング・ボーカルに4人の男性群。以上合わせて12人である。
とにかく久々のロジャー・ウォーターズの迫力のライブに圧倒される。残念ながら日本での公演は目下企画されていない。
しかし、もうすぐブート映像などで完璧なライブは見れることは間違いない。そのあたりで取り敢えずはお茶を濁すとしようと思っているところだ。
(今回は、ネット上に現れた映像を参考にこのライブの模様を纏めてみた)
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コメント
失礼しました。サンタナではなくて、フロイドのお話でした。最近疲れ気味で、とちってばかりです。ちなみにサンタナは「胸いっぱいの愛を」が完コピ状態で、AC/DCの曲もラップとサンタナ・ギターの融合状態が面白かったです。
ところでフロイドのメンバーでG.E.スミスが参加していると聞いてビックリです。80年代は超有名スタジオ・ミュージシャンでした。またHarry WatersとはRodgerの息子のことでしょうか。なかなか興味が尽きませんね。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2010年10月 4日 (月) 22時39分
プロフェッサー・ケイさん、やっぱりG.E.Smith にはビックリでしたか?。私もそうでした。彼ももう60歳に近いですよね。多分スノーウィ・ホワイトとも親交がありそうです。でもこうした老かいなテクニシャンを引っ張り込んでくるロジャー・ウォーターズには脱帽です(彼のフランケンシュタインばりの顔も迫力あっていいですわ(笑))。
Harry Waters は、ロジャーの息子です。今のところ彼のアルバムは一枚持ち合わせていますが、どちらかというとジャズ・ピアノですね。今回のツアーは、キーボードは名手Jon Carinと2人体制で厚いです。
投稿: 風呂井戸(*floyd) | 2010年10月 5日 (火) 11時33分
Cars and houses are quite expensive and not everybody is able to buy it. Nevertheless, credit loans was created to support people in such cases.
投稿: ArnoldDarlene20 | 2012年8月 6日 (月) 03時21分