ロジャー・ウォーターズ「2010 THE WALL Live」 裏話 (1): 映画”空軍大戦略”
ロジャー・ウォーターズが用いる映画「 BATTLE BRITAIN 空軍大戦略」
ロジャー・ウォーターズの「THE WALL」ライブが進行、9月からカナダ・トロントを皮切りに北米ツアー中である。既に多くの映像が手に入り、ほぼその全容が判明したが、各地での熱狂的観衆には恐れ入る。
そして例のごとく、後半に豚が飛び、又戦闘機も冒頭”In the flesh?” から会場の聴衆の頭上を飛び衝突して火を噴く。そして12名による演奏とグラフィックスの充実で結構スケールの大きなライブ・ステージとなっている。
その中で、ウォーターズが後半の曲 ”Nobody Home” では、"When I pick up phohe, There's still nobody home" と、やはりテレビに向かって心の切なさを歌い上げるわけであるが(↑)、そのテレビに映し出される映画がある。それが彼がよく使うところの1969年のイギリスの空軍映画だ。
映画 「BATTLE BRITAIN 空軍大戦略」 イギリス映画 1969年公開(日本同時公開), DVD 20世紀フォックス MGBDC-16108
この映画は、第二次世界大戦1940年7月から10月にかけてのイギリス本土上空に進行したでドイツ空軍を迎え撃つイギリス空軍の戦いを描いたもの。
ドイツ軍は突如1940年フランスを占領し、次の目標はイギリスと、2500機を有するドイツ軍はまずは制空権を狙ってイギリス航空施設を空爆。それに対するイギリス空軍は600機という僅かな戦闘機での戦いを強いられた。
戦いの経過で、ドイツはロンドン空爆の戦術に出たが、当時の航空機では燃料の関係でわずかな時間しかロンドン上空にいられなかったことや、周辺の基地や工場よりはロンドン爆撃にこだわったため、イギリス空軍が生き返り反撃を許したことで、そのイギリス空軍の勝利への道を描いている。かなり史実には忠実に造られているようだ。
現在、幸いなことにこの映画は1969年作品でありながら、素晴らしい映像とサウンド(DTSサラウンド)でDVDに甦っている(お勧めである)。
とにかくここにに登場する航空機が凄い。私はその道には詳しくはないのだが、航空ファンにはたまらないようだ。イギリス側の戦闘機スビットファイア(右上)、ホーカー・ハリケーン、又ドイツ側のメッサー・シュミットBf109戦闘機(右下)、ユンカース・スツーカ急降下戦闘機、ハインケルHe111爆撃機などが、実物で登場する。この飛行機はスペインが保有していてエンジンはスペイン製のものを乗せていての実演という。
ロンドン上空での戦闘機同士の攻防戦はこの映画のクライマックスといえようが、被弾して落下する戦闘機などの姿は、現在のようにコンピューター・グラフィックスの無い時代で実物と特撮の駆使であろうが、見事な映像だ。
出演は、ローレンス・オリビエやクルト・ユルゲンスなどオール・スター・キャスト的に揃っている。人間模様の描写などはちょっとお粗末と言っていいかも知れないが、航空機戦争映画としては超一級である。制作費は当時の額で$13,000,000 と言われている。
ロジャー・ウォーターズはある意図をもって、戦争映画を使っていると思うが、かっての映画「THE WALL」でも当然こうした映画をつかっている。彼の好むものはこの「空軍大戦略」そして「暁の出撃」(こちらは又の機会に)である。
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