忘れ得ぬ”名ジャケット・アート”(4) : やっぱりオパス・アヴァントラ
イタリア・プログレのまさに珠玉の名作
「OPUS AVANTRA / Donella del monaco ”INTROSPEZIONE” オパス・アヴァントラ”イントロスペツィオーネ” 」 ARTIS Records ARCD 002 1989 (1974年作品)
ここまで、雑誌「Marquee」の話が進んできてしまうと、もはや挙げざるを得ないこのジャケット・アートである。ロックの展開がプログレッシブなスタイルが華々しかった時、御本家イギリスではピンク・フロイドは「狂気」、「炎」であり、キング・クリムゾンでいうとあの「Red」の頃であるからこの音楽活動の一つの終焉を迎えつつある頂点に達した頃である。
もちろんリアルタイムには当時このような作品がイタリアにあったとは夢にも知らなかった。御本家英国でのプログレの崩壊が、ユーロ・ロックにその流れをもとめたことにより我々に知らしめたのである。
このオパス・アヴァントラ1stのジャケ・アートこそ、プログレッシブなロックの描く世界とイメージが重なり合って我々の心を打つのである。何を感じても良い、この女性の表情が総べててある。これに関しては語らない方がよい、見たものが感じたものがそれなのである。
さてここに登場させなければならないのが「Marqee」第029号特集版「私の愛聴盤」(マーキー・ムーン社 1988年8月発行)である。
このプログレッシブ・ロックを中心とした全203頁の中身は、約20人のこの世界の音楽を愛するメンバーが熱い思いを綴ったものだ。
その中で、特にイタリアものに精通した鈴木伸一氏(書道家)のこのオパス・アヴァントラに関する感想が興味深い。紹介しよう。
・・・・・クラシックの様式美、ロックのバイタリティー、前衛音楽のスピリット等がドネラのボーカルと混然一体となって展開されるサウンドは、時代の感性の辿り着いた一つの究極である。哀しみが光りを閉ざし闇が苦悩を産み落とす中、それでも尚、愛と慈悲を希求する救い難き魂を優しく包み込む哀しき女神。その後発表された未収シングルやソロ・アルバムも又、散りゆく花弁の如き退廃美に染まった珠玉の名作である・・・・・
と、語っている。この感想に尽きるので私は多くを語らないが、ロック、ジャズ、クラシック、イタリア民族音楽の彼ら独自の融合の世界は見事である。
これが、表裏連続のアートだ。まずこれを見ずしてジャケ・アートそしてイタリア・プログレを語るなと言いたいぐらいの名作である。 この1stの主メンバーは、Donella del monaco (Vo.) と、作曲のAlfredo Tisocco (Key) そして企画・アイデアの Giorgio Bisootte である。
左写真は、35年後の2008年に来日の際のこのバンド・メンバーのスナップ。
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コメント
自分での書いたんですけどね、あまりにも高尚な音楽すぎてなかなか理解して好きだ〜!って思う程には聴きこめてません(笑)。凄いなぁ〜ってのはわかるんですが…。
投稿: フレ | 2010年11月 8日 (月) 23時23分
なんか変な音楽でした。基本はピアノの弾き語りだと思うのですが、突然キれたようになったりとか。
来日してたんですか。何をしに来日???
投稿: nr | 2010年11月 9日 (火) 00時18分
フレさん、コメント、トラックバック有り難うございました。
こうした音楽世界にはどんな状況で辿り着いたかもその印象は大きく左右されそうです。私は、英国プログレの雄、クリムゾンやピンク・フロイドの流れが危ぶまれたロック界において、後のユーロ掘り起こしの中での遭遇でした。特にイタリアものには感動でしたが、このオパス・アヴァントラのようなアヴァンギャルドな世界にも巡り会えて感動でした。ピアノやパーカッションの緊張感に、ふとイタリア的美しい旋律が流れるところは”やられた!”と言ったところです。そしてドネラ・デル・モナコの美しい歌と、そしてそれを裏切るかごとくの異様な奇声にとまどいつつ、このインプレッションの強いジャケ・アートに押しまくられたのです。
投稿: 風呂井戸 | 2010年11月 9日 (火) 16時11分
nrさん、コメント有り難うございました。
イタリアものの掘り起こし当時が懐かしいですね。やっぱりあの頃は今から何年も前ですから若かったわけですが、当時のnrさんのPC-VAN への書き込みが懐かしいです。
このコメントの・・・
”来日してたんですか。何をしに来日???”には、さすが・・nr節健在で、大いに喜ばせていただきました。^^)
投稿: 風呂井戸 | 2010年11月 9日 (火) 16時19分