ロジャー・ウォーターズ「2010 THE WALL live」裏話(2) : 映画「暁の出撃」
映画「THE WALL」に登場する1955年イギリス映画「The DAM BUSTERS 暁の出撃」
前回ロジャー・ウォーターズが、この「2010 THE WALL live」にイギリス映画「空軍大戦略 BATTLE BRITAIN」(1969年)を登場させている話をしたわけですが(このブログ10月31日参照)、実は映画「THE WALL」では、テレビに映っている映像は1955年イギリス映画「暁の出撃 The DAM BUSTERS」が使われている。
ロジャー・ウォーターズがこの両空軍戦争映画を時々登場させるのには、その理由があろうかと思うが、彼には”戦争”というものが父親を奪ったことで、常にそれがテーマであり、一方この両映画は、第二次世界大戦当時の軍用機(戦闘機、爆撃機)の実機をと使っているところが共通している。
さて、この映画「暁の出撃」は私にとっても印象深い映画であり、ここでスポットを当ててみたいのだ。
DVD 「暁の出撃 The DAM BUSTERS」 (HDリマスター版 2010) 1955年イギリス映画
このDVD版は、つい最近に1955年という50年以上前のモノクロ映画を見事な技術で観るに十分な映像に蘇らしている。既に過去にもDVD化されているが、是非このHDリマスター版で観て欲しい。
なんと言ってもこの映画の見所は、第二次世界大戦中のイギリス爆撃機の低空飛行爆撃によるドイツのダムを崩壊させるシーンである。モノクロであるが当時の実機を使って緊張感ある素晴らしい映像を作り上げた。
前回紹介の「空軍大戦略」では、戦闘機が主役であったが、この映画では爆撃機が主役だ。
私は詳しいところは解らないが、登場するのはアブロ・ランカスター爆撃機で当時のものが蘇ってその迫力は素晴らしい。更にアブロ・リンカーンも登場。そしてウィッカーズ・ウェリントン爆撃機、デバビランド・モスキート爆撃機も登場して、航空機ファンにはやはりたまらない映画になっている。
(スタッフ)
監督:マイケル・アンダーソン
製作:ロバート・クラーク
(キャスト)
ガイ・ギブソン大佐:リチャード・トッド
バーンズ・ウォリス博士:マイケル・レッドグレーブ
(ストーリー)
原作①ハロルド・ブリックヒル(「ギブソン大佐」)
②ギブソン大佐の報告書「月はかがやいていた」
第2次大戦中、ドイツの攻勢を受けるようになったイギリスでは、対抗策としてドイツ国内のダムを爆撃破壊を考え停電と洪水による工業地帯の活動を停止させる作戦に出た。これにはバーンズ・ウォリス博士の作戦であるダム湖上を低空飛行して投下した爆弾を水面で跳躍させてダムに接してから爆発させることにより効果を上げることを考える。
ギブソン中佐の率いる特別爆撃隊は十九機でこの困難な作戦をあらゆる技術と方法論をもって成し遂げるべく出陣する。
そして一機一発、非常に困難な危険な作戦を敢行しダムの破壊に成功する。その結果ドイツの軍需工業の機能を停止に追い込んだ。しかし多くの犠牲者を出したことで心痛む結末を迎える。
邦題”暁の出撃”とあるが、これは夕からの出撃で、月夜の下での戦闘であった。映画では、低空飛行で敵国に侵入し、対空放火を浴びながらダム湖上をまさに10数メートルの低空飛行で一個の爆弾の投下に命を賭ける。このあたりの映像と描写は手に汗握る緊張感である。
航空戦闘映画と言ってしまえばそれまでだが、この作品には戦闘というものは、多くの犠牲者の上に行われてきたその姿や、作戦の成功のためには又隠れた研究や努力の上に成り立ったことを描いている。
これは50年以上前の映画と言うことになるが、今でも十分鑑賞に値する。
取り敢えず、お勧めの映画である。
ロジャー・ウォーターズが何かと取り上げる映画を検証してみた。多分実機を使っての戦闘機・爆撃機の映画としての価値と、そこに描く戦争の厳しさを感じ取っているのであろう。「THE WALL」の映画や、ライブに於いてこうした航空機の映像やアニメーションは多く出てくる。ここには彼の一つの狙いが潜んでいると観るべきであろう。
幸い我々はこれらの映画を現在DVDにて鑑賞できるところが嬉しい。
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