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2010年12月30日 (木)

マデリン・ペルー Madeleine Peyroux (2) : 何故か気になるノスタルジック?な世界

マデリン・ペルーの音楽は、技巧に走らない姿が魅力

Madeleine_peyroux2 ジャズでありながらフォークでありブルースでありカントリーでもあるマデリン・ペルーの作り上げる音楽は、”ビリー・ホリディの再来”、”女性版レナード・コーエン”、”ポスト・ジョニー・ミッチェル”などなどと言われるようだが、私の聴くところでは単にそのように表現できない世界であって、そこに更にシャンソンも加わっての彼女独特の世界なのだと言っていいと思う。
 もともと音楽ファンの父親の聴くジャズを中心とした音楽が、子供であった彼女に影響を及ぼしていたようで、ジャズの範疇において作り上げられたものとして捉えていいのだろう。
 そして両親の離婚となり、母親がフランス語の教師であったことからか?フランスはパリに住んで少女期から音楽に目覚めて、そして作られてきたもの。 

 私にとっては、のめり込んで聴くというわけではないが、何故か気になるマデリン・ペルーの世界なのだ。そして既にここでも10月27日に3rdアルバム「Half the perfect world」を中心に彼女の世界にアプローチしてみたわけであるが、それを見た友人が有り難いことに彼女のライブDVDをプレゼントしてくれた。
 
Madeleinesumethingranddvd 「madeleine peyroux / SOMETHIN' GRAND」 UNIVERSAL UCBU-1028  2010

2009年1月ロサンゼルスのクラブにおけるライブ録音。大会場でないだけに、バンドやマデリンの一挙一動がよく映像に捉えられていて、これも彼女の音楽にマッチングした映像アルバムとなっている。
 収録曲は17曲で、最新作アルバム「bare bones」より9曲、3rd「Half the perfect world」より3曲、2nd「careless love」から4曲、1st「Dreamland」から1曲となっている。

(パーソネル)
 マデリン・ペルー (vo. g)
 ラリー・クライン (b)
 ディーン・バークス (g)
 ジム・ビアード (key)
 サム・ヤエル (org)
 ジョーイ・ワロンカー (ds)
 リサ・ジェマーノ (vln)

 2ndアルバムからのレナード・コーエンの”哀しみのダンス Dance me to the end of love” からスタート。そもそも彼女はギターを演奏してのシンガー・ソングライターではあるが、アルバムでもカヴァー曲が圧倒的に多い。しかしこのライブでは2曲目から彼女とその他のシンガー・ソングライターとの共作の曲が主体をなしている(彼女の好きなボブ・ディランの曲”私はさびしくなるわ”が登場するけれど)。そしてこれらがあのややかったるいというか、やや暗めに感ずるものもあるが、しかしどちらかというと郷愁を呼ぶ心の安堵感を導いてくれるものに仕上がったものが多くなっている。4曲目の”down the circumstances”なんかは歌った後で、ちょっと暗くなったので次の曲”悲しみにさよならI'm all right”は明るく歌うと語りながらのライブで、自分でもそのあたりは意識しているのかも知れない。ブルース調やフォーク調など比較的スローな曲群も歌われ、それなりにマデリン節になっている。
 もともと歌い方は軽く流すようなタイプで、力みやシャウトはなく聴くものにとっては刺激は少ない。それが場合によっては、特に引きつける印象もなくさらっと聴きながしたという感想をもつ人がいる原因であろうか?。しかしこうしたスタイルは、このご時世ではある意味では新しい世界と言ってもいいのかも知れない。我々のようにそれなりに年輪を重ねたものにとっては懐かしさをふと感じてしまうところだ。
 私が思うにマデリンのジャズ畑におけるこの彼女なりきの特殊性は、シャンソンの因子が大いに働いての結果とみている。そこがポイントだ。

 この映像に納められた彼女をみると、気取りもないがもともとそんなに愛想のいいタイプではないといわれているようだが、やや大柄に見える姿で結構オーディエンスに語りかけているところは愛嬌もある。そしてアコースティック・ギターを奏でながらの唄う姿は、ストリート・シンガーでの経験から形作られたパターンなんだろうと想像してしまう。

 このDVDのライナー・ノーツを担当している渡辺亨によると、マデリンを”ノンシャラン(nonchalant)”と言う言葉が似合うと言っている。この言葉は、気ままな、無頓着な、のほほんとした、というような意味らしい。確かにこの映像ものにも、歌い始めてとちって、もう一度歌い直すというシーンも納められていて、普通ならカットするところであろうが、平気で納めているところは結構親近感をもって見て取れる。
 いずれにしても、バック・バンド・メンバーも充実していて、2nd以降プロデュースを担当しているラリー・クライン(Bass)など、どうもこの収録ライブの為の特別メンバーと推測される。私には興味ある映像ものだ。

Calesslove2 そんなマデリンの方向性が良く出たアルバムがある。

2ndアルバム「Careless Love」Rounder Records  Rounder-11661-3192-2   2004  (左)

 1996年デビュー以降8年ぶりにリリースされたもの。レナード・コーエン、ボブ・ディラン、ハンク・ウィリアムス、などのカヴァー集だが、マデリン流ジャズ・ミュージックが花咲いている。全体的にスローな展開が多く日光の下で輝いて聴くというものでなく、深夜にゆったりとした気持ちで聴くに向いている。
 なにかジャズによって、よき時代を思い起こさせてもらい、そして現実社会での奮闘を癒してもらうには良いのかも知れない。

 世界でも100万枚以上の売り上げがあったというアルバムである。ラリー・クラインのプロデュースだ。彼女はルイ・アームストロング、ボブ・ディラン、ビリー・ホリディが最も敬愛する3人だと言っている。そうした流れを感じながら、聴き流すぐらいの気持ちで聴いているといいアルバムである。
 

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コメント

ホント、良いオンナ見つけるの上手いですよねぇ(笑)。いや、冗談です。

今年も色々と刺激的なネタ楽しみました。
来年もまたよろしくお願いします♪

投稿: フレ | 2010年12月31日 (金) 21時16分

 2011年元旦を迎えました。
 フレさん、今年もよろしくお願いします。私は雑食的に多くを聴きますが、基本ベースにはロックがあります(ですよね(笑))。
 昨年は女性ヴォーカルにアプローチしてみましたが(今年ももう少し続きそうですが)、これまた意外に楽しめるんです。
 フレさんのロックの道も興味津々に拝見していますので、今年も又ご健闘下さい。

投稿: 風呂井戸(*floyd) | 2011年1月 1日 (土) 18時53分

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