ZERO CORPORATION= ロックの一つの花:キングストン・ウォール Kingston Wall
哀しき’90年代のあだ花 : キングストン・ウォール
先日あるところで、1990年代の日本のレコード・レーベルであるゼロ・コーポレーション ZERO CORPORATION (配給は東芝EMI)に触れたんですが、このレーベルはヘヴィメタル系のアーティストの発掘に努力して契約アーティストは100以上に及んだようである。
私にとっては、英国を中心としてのプログレッシブ・ロック衰退の後、イタリアを始めとしてのユーロ・プログレに関心を持ち、それも一段落して何を何に求めて良いか暗中模索していた時に、このレーベルのリリースしたアルバムに、若干の関心を抱いていた。しかし残念ながら1999年に閉鎖となってしまっている。しかしこのレーベルのリリースした中で、当時いやに気になったバンドがあった。今ふとそれを思い出したのである。
キングストン・ウォール Kingston Wall 「Kingston Wall II」 ZERO Corporation XRCN-1067 1993
これが日本初お目見えしたアルバム。キングストン・ウォールというバンドの2ndアルバムである。
フィンランドはヘルシンキのトリオ・バンド。Petri Walli というギタリストがリード・ヴォーカルでリーダー、 Jukka Jylli (Bass, Backing Vocals)、 Sami Kuoppama"ki (Drums) のメンバー構成。
1. We cannot move
2. Istwan
3. Could it be so?
4. And it's all happening
5. Love tonight
6. Two of a kind
7. I feel love
8. Shine on me
9. You
10. Pale'kastro
もともとキング・クリムゾン、ピンク・フロイドに傾倒した私であるので、おおよその想像は付くと思うが、彼らのサウンドはキーボードはないのだが、プログレッシブのニュアンスを持ち、そしてサイケデリックであるハード・ロックといっていい。
しかし、その独特のアラビアを思わせるメロディーと、なんかサイケデリックなそして一種の特殊な世界に導かれるようなサウンドは、過去に類をみない。
もともとJimi Hendrix やLed Zeppelin の影響を受けつつ、Pink Floyd に傾倒したらしいから不思議な世界になってくる。スタートから中近東を想わせるリズムが流れる。そして”And it's all happening”や”Shine on me”の曲 あたりはギルモアのギターの音にも通づるところも感じて、私なんかはぐっぐっと引っ張り込まれる。アコースティック・ギターも登場するが、ドラムスとともに演じられるカッテイング奏法が面白い。最終曲”Pale'kastro”では、波のようにうねって迫り来るバンドの集中演奏は頼もしいインスト・ナンバー。
彼らの素晴らしいところは、彼らの編み出した世界に我々を引っ張り込んで行くところである。こんなバンドが’90年になって生まれたことが、非常に不思議だった。
キングストン・ウォールKingston Wall 「Kingston Wall I」 ZERO Corporation XRCN-1084 1993
日本盤初登場の「Kingston II」の注目度が高かったことにより、すぐさま出された彼らの1stアルバム。彼らはライブを非常に好んで、インプロヴィゼーションを非常に大切にしていると語っている。そしてそんな世界を2nd以上に聴かせるアルバムだ。ちなみにこのアルバムでは中盤の”Tanya”そして”I Prelude”あたりのインスト曲がなかなか深遠で私は好きです。そして終盤の盛り上がりは見事と言いたい。
キングストン・ウォール Kingston Wall 「Trilogy」 ZERO Corporation XRCN-1200 , 1994
彼らの3作目のアルバム。ここに来て明解になるが、1st と 2nd と この3rd で3部作になっている。従って、この3作バック・スリーブ・デザインが全く同じである。そしてこのアルバムに来て、ピンク・フロイドのシド・バレット流でなくロジャー・ウォーターズが試みたようなサウンドのサイケデリックな面が強調されてくる。又大作傾向で1曲目から10曲目まで切り目無しの40分の曲が作り上げられている。
1stはサイケ・ハード・ロックの色彩が濃く、2ndはミステリアスで宇宙的で、そして独特のリズムが刻んだプログレ感覚が強かった。
そんな訳で私は2ndを最も愛聴したわけですが・・・3rdリリース後、彼らはどのように発展するかが楽しみでしばらく待ったが、音無しの状態であった。そして哀しくもこの キングストン・ウォールは既に存在していないことを知ることになる。
実は、3rd発表後の1995年8月、このバンドのリーダーPetri Walli が死亡。死因については明確な情報がないが自殺が推測されている。従ってこの3枚のアルバムのみが彼らの独創的なサウンドの極みであったことになった。実に残念であるがそれが事実であった。
ふと、約20年近く前のロック界における一つの私が注目したバンド(宝物といっていい)をここに紹介した。そしてその世界を未だに継げるものがない事も彼らの特異性を示していることなのだ。
最後に、このキングストン・ウォールは伊藤政則が外盤で知りZEROに持ちかけたことにより、日本盤リリースということになったという。
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