女性ジャズ・ヴォーカル : 円熟のクレア・マーティンClaire Martin 「ア・モダン・アート」、「ヒー・ネヴァー・メンションド・ラブ」
コンテンポラリー・ヴォーカルもこなすが、やはりジャズ・ヴォーカルが魅力
一昨年来、女性ヴォーカリストをなんとなく多く取り上げてきたが、この英国はロンドン生まれのジャズ・シンガーであるクレア・マーティンClaire Martin は、やはり取り上げなければならない一人だ。彼女は1967年生まれであるから既に40歳を超えた。彼女は6歳で既にデビュー、10歳でコンテストなどにも顔を出し英国ではよく知られた歌手だ。美貌とその能力のバランスもよく、ブリティシュ・ジャズ・アウォードのベスト・ヴォーカリストに1990年代から何回と選出され、確固たる地位を築き上げている。
しかし、日本では意外に浸透していない。リリースしているアルバムも多いが日本盤のリリースは近年見ていない。しかしその道好きな人もそれなりに多く、外盤の輸入販売も身近に行われている。
「claire martin / a modern art」 SACD-Hybrid LINN Records AKD-340 2009
好録音で名のある"LINN レコード"から何枚かのアルバムがリリースされているが、これが最も最新盤である。彼女のアルバムは、それぞれにかなり特徴があり、全く同パターンでない。この盤は早い話がアメリカン・ソング・アルバムと言っていいものだ。もともとアメリカの歌手や音楽の影響を強く受けたというクレア・マーティンとしては、かなりのびのびとそして派手に歌われている。
(ミュージシャン)
claire martin : vocals / gareth williams : piano / laurence cottle : bass / nigel hitchcock : alto sax / mark nightingale : trombone / phil robson : guitar / james maddren : drums / chris dagley : drums / sola akingbola : percussion
このように共演ミュージシャンもピアノ・トリオに加えて多彩で、バック・バンドも華々しく展開する。そしてそれにも負けずに彼女のジャジーな歌が全体をリードしてお見事といったところ。
もともと彼女の声の特徴は厚みのある中・低音がハスキーに伸びてくるところであるが、その特徴も生きている。取り敢えず近代色と古典色の混在したジャズ・アルバムとして一聴の価値がある。
録音はどうかというと、SACD盤でマルチ・チャンネル録音もされ、音の分離と高音部の伸びも良い。彼女のアルバムの中では派手なジャズを好む人に向いていると思う。
「claire matrin / He never mentioned love ~ remembering shirley horn」 SACD-Hybrid LINN Records AKD-295 2007
これは、アメリカの女性ジャズ・ヴォーカリストでクレアの敬愛するシャーリー・ホーン(2005年71歳で逝去)に捧げたアルバムである。
結論的に言うと、私が彼女のアルバムでは最も素晴らしいと思っているものだ。
(ミュージシャン)
claire martin : vocals / gareth williams : piano / clark tracey : drums / laurence cottle : bass
これに、special guests としてギター、サックス、パーカッションなどが加わる。
1. He never mentioned love
2. forget me
3. everything must change
4. trav'llin' light
5. the music that make's me dance
6. all night long
7. if you go
8. a song for you
9. sloowly but shirley
10. you're nearer
11. L.A.breakdown
12. slow Time
13. the sun died
このアルバムでは、彼女のハスキーな声が見事にマッチングするしっとりとしたムーディーなバラード曲が展開する。アルバム・タイトル曲の1曲目の”He never mentioned love”は、ピアノの響きと共に静かに彼女のブォーカルが語りかけるように心地よく歌われ、このアルバムの期待を高める。3.everything must change になるとギターがバックを務め夜を彩るムードが醸し出され、4.trav'llin' light は、ベースの音に支えられ控えめのギターが加わり、更にムードは高まってゆく。そして7.8.の両曲では、flugelhorn の音が彼女のしっとりヴォーカルを支え、"a song for you"は夜のジャズ・ムードの最高潮に達する。
録音もSACD盤でマルチ・チャンネルであるが、しかしむやみに四方に展開するのでなく前方に安定して包み込んでくる。
曲もジャズ・タイプに統一されていて、安定感たっぷりのまれにみる好アルバムであるので、是非ともSACD盤で聴いて欲しい。このアルバムも、手にはいるのは私の持っている外盤のみであると多分思うが、絶対のお勧め。
夜の心の安らぎと快感をもたらしてくれる名盤と言っておこう。
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