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2011年2月22日 (火)

エミリー・クレア・バーロウ Emilie-claire Barlow (2) : 最新作「THE BEAT GOES ON」の疑問

進化か後退か最新作のポップ化の試み

Thebeatgoes 「emilie-claire barlow / THE BEAT GOES ON」 VICJ-61845  , 2010

 2010年11月リリースのこの最新作(8th)は、なんと60年代のポップス・ヒット名曲集。しかし、そうはいっても彼女のこと、ジャズ(的)アレンジでこのアルバムをまとめ上げている。
 なにはともあれ、60年代はロックの開花であり、ビートルズ旋風に世界が揺れた。そんな時代にジャス世界からポップスにスポットを当てた意味はよく解らないが、聴いてみると面白いと言えば面白い。
 今、多くのジャズ系女性ヴォーカルは、どっぷりのジャズから一歩ポピュラー系との融合を試みているものが多い。そんなところも影響しているのか?。
 実は私はこのエミリー・クレア・バーロウは先日紹介した4th「Like a lover」(2006年)と7th「Haven't We Met?」(2009年)の2枚のアルバムで取り敢えず納めてしまっていた。しかしこの最新アルバムは今年になって友人よりのプレゼントで聴いてみることになった。
 相変わらず、彼女の可愛いヴォーカルが耳に優しく伝わってくる。しかしそれはそれで良いのだが、こうしたポピュラー系にアプローチしたには何か物足りなさがある。それは何なんだろう?、彼女の声量が足りないのか、いかにも囁き調に優しく唄いすぎなのか、とにかく曲とのメリハリやその曲のムードとのマッチングとしてインパクトに欠けるのではないか?。それともそんなインパクトを求めてはいけない曲作りなのか?。

   1. raindrops keep falling on my head
   2. sunshine superman
   3. breaking up is hard to do
   4. don't think twice, it`s alright
   5. he thinks i still care
   6. The beat goes on / soul bossa nova
   7. these books were made for walkin'
   8. until it's time for you go
   9. little boot
  10. comme je crie, comme je chante
  11. will you (still) love me tommorrow?
  12. yester-me, yester-you, yesterday
  13. T7s pas un autre

 強いて言えば、アルバム・タイトル曲の”the beat goes on”と”these boots were made for walkin' ”の2曲には、それなりのリズムがあって救いの曲かとも思う。又”Yester-me, yester-you, yesterday ”は、バックのギターもジャズの感覚で弾いていてなにか安心して聴けるし、ヴォーカルとの関係も彼女の特徴が出ていてこのアルバムでは出色の曲だ。
 やはり、私の偏見によると彼女にはジャズ・バラードを唄ってもらったほうが良い。こうしたポピュラーなアルバム作りは他にまかせたほうが良いのでは。
 そして更にこのアルバムは、バックの演奏にも何か物足りなさがある。どうも方向性が中途半端なのだ。いずれにしても、どうも私には疑問が残ってしまったアルバムであった。



Theverythought「emilie-claire barlow / the very thought of you」 VICJ-61527 ,  2007

 このエミリーの5thアルバムは、少々前になるが「like a lover」の後の2007年のリリース。これはまさにスタンダード曲のオンパレード。

   1. the very thought of you
   2. almost like being in love
   3. o pato
   4. les yeux ouverts
   5. pennies from heaven
   6. what a little moonlight can do
   7. surrey with the fringe on top
   8. may time of day / i've never been love before
   9. c'est si bon
  10. de conversa em conversa
  11. the boy next door
  12. so many stars
  13. you're getting to be a habit with me

Emilie20claire20barlow2010  彼女のチャーミングな歌声が全編響く。ストリングスなども入るが、ジャズに散りばめられた彼女のオリジナルに固執しない編曲が冴えている。
 このアルバムも私の場合は、「Like a lover」や私のお薦めの「Haven't We Met?」の両アルバムより後になっての最近に聴かせてもらったわけだが、これはなかなかいい。彼女の4年前当時の更なるジャズへの探求の意欲が伝わってくる。ボサ・ノバ、シャンソン、バラードなんでもエミリー色になっている。
 アルバムを通して何というか全体に刺激は少ないと言えばそうだが、それが魅力となって、彼女のjazzyなムードに包まれた優しさは十分伝わってくる。これぞエミリーのアルバムだと私は言いたい。そしてこの流れが快作「Haven't We Mrt?」に繋がってきていると思う。

 上に取り上げた近作8thアルバム「THE BEAT GOES ON」は、彼女の流れの中での今日的一つの挑戦とみて、それはそれ良しとするが、私としては今後は彼女にはやはりジャズ・ヴォーカリストとしてジャズを掘り下げて言って欲しいと願いつつ応援するのである。




 

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