キャメル CAMEL の一考察(2) : アンディ・ラティマーの築いた世界「怒りの葡萄」
8年の沈黙を経て名盤「DUST AND DREAM 怒りの葡萄」のリリース
アンディ・ラティマーの奮戦によって1984年10thアルバム「Stationary traveller」のリリースが出来たキャメルであったが、既にここに来ては、かってのキャメルではなかった。このバンドの原点メンバーであり、そしてただ一人の残党あるアンディ・ラティマー主導のコンセプト・アルバムとして作り上げられ、そしてこのスタイルはむしろ私にとっては歓迎であった。それはまさにニュー・キャメルであったのだ。
彼は直ちにこのアルバムをひっさげてツアーに出る。
バンド・メンバーは、Andy Latimer(Guitar, Vocal)、 Colin Bass(bass)Paul Burgess(drums)、Ton Scheppenzeel(keyboards)、Chris Rainbow(vo. , key)の5名に、なんと既にキャメルから去っていた Pete Bardensと Mel Colins が加わって花を添えている。
そしてそのライブの模様は、キャメル初めてのオフィシャル映像のLD(レーザー・ディスク)盤としてリリースされた。
「CAMEL / PRESSURE POINTS~LIVE IN CONCERT 」(PolyGram SM037-3345)
この80年代の当時でもなかなかキャメルの映像はレアであったが、ここに素晴らしい映像とサウンドで我々の前に出現したのだった。
あの哀愁の曲”stationary traveller” では、ラティマーのギターが泣き、Pan Pipesの音が心に響く。かってのヒット曲”rhayader”、”rhayader goes to town”、”Lady fantasy”なども演奏されるが(”Lady fantasy”の盛り上がりは凄い、アルバムとは比較にならない出来であった。ライブの醍醐味そのもの)、ライブ会場全体の印象は、詰めかけたオーディエンスにとって何か心打つライブであった。当時公にはなっていなかったが、多分メンバーは心に決めていた”キャメルの幕引き”のライブであったのだ。
そして私には感動で迎えた1984年のキャメルであったが・・・・、これが見納めになることが後に明らかになったのだった。
しかし。簡単に事は終わらない。このキャメルの消えた1984年から8年という長い経過を経て、遂にキャメル復活のニュースが聴かれ、ここに出現したのが・・・・
「CAMEL / DUST AND DREAMS 怒りの葡萄」 Camel productions CP-001CD , 1992
わたしにとっては衝撃であった。あの名作スタインベックの「怒りの葡萄 The Grapes of Wrath」にインスバイヤーされたアルバムの登場であった。資本主義社会の矛盾と陰の部分と人間の力強い生き様と哀愁を描いたこの作品は、あのジョン・フォードによっても映画化もされている(このブログ:2009年11月2日参照)私にとっての貴重な3本の指に入る作品だ。それを主として”staitionary travellar LIVE”のメンバーで作り上げリリースしたのだ。もちろんこれにはラティマーの伴侶のスーザンが協力とサポートが大きく働いている。(このもジャケ・デザインも素晴らしい。砂地に立つ男の子の表情が総べてを物語る。これはロック・アルバム史に残る傑作だと思っている)
全編ラティマーの渾身の作品が並ぶ。全16曲が一つの世界を描ききる。悲劇の物語のスタート”go west”、”Rose of Sharon”に描かれる青春期女性の人生、”end of the line”のたたずむ道の厳しさ、”hopeless anger”、”whispers in the rain”に描かれる希望と絶望感。
果たしてこのアルバムは、小説「怒りの葡萄」を知らないものにはどう捉えられるのか?、映画「怒りの葡萄」(残念ながら映画は小説の途中で終わってしまうが)を知らないものにはどう捉えられるか?・・・・このことは私には全く解らない。とにかく私の青春時代にとっては強烈なインパクトのあったこの小説が見事に頭に描かれるこの曲群、素晴らしいの言葉以上では語れない。ロックというジャンルを超えて一歩昇華している。
ラティマーがこのスタインベックの小説に感動し、数年かけて構想を練った作品であったという。彼が少なくとも私の感動と彼の感動がどこかで一致したことが当時嬉しかったものだ。
この後、彼はやはりツアーを敢行してステージでも全曲披露している。それが左の2枚組オフィシャル・ブートレグだ。
「CAMEL / NEVER LETGO」 CAMEL Productions CP-004CD, 1993
このライブでは、1972年からのキャメルのヒット曲”never let go”でスタートし、”rhayader goes to town”、”echoes”、”ice”など登場し、そしてこのアルバム「Dust and Dreams」を再現し、”Lady fantasy”で幕を閉じる。
ラティマー版キャメルのオンパレード。まだ手にはいるようだったら、録音、演奏もよいので是非ともお勧めである。
ちょっと、ブートレグの話になるとその気になってしまう私であるので、ここでキャメルの1984年の「Stationary travellar」LIVE の全模様を聴きたかったら、良好のものを紹介しておく。左のAYANAMIの2枚組ブートだ。
「CAMEL / refgee」 Live in utrecht, holland 5/15/1984 , Ayanami-120
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コメント
キャメルも大好きなバンドで、もう10年以上も前になりますが、友人の家でキャメルのライブをLDで見ました。アンディ・ラティマーが汗をかきながら、メロディアスなギターを弾いているのを見て、この人けっこう上手だったんだということがわかりました。正直、ビックリしました。
あと、私は実は「ブレスレス」が好きなのです。周りの人は評価してくれませんが…
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年3月27日 (日) 22時40分
プロフェッサー・ケイさん、コメント有り難うございます。
「BREATHLESS」がお好みとか、聴き手は諸々の条件、環境下で心ひかれるものがあれば、それが一番良いと思います。あのアルバムは”Echoes”でしたね。この頃より7~8年前のピンク・フロイドの”Echoes”と比較してして、フロイドそしてその一派のプログレ信者の私としてはどうしても印象が薄かったんですが・・・・。
投稿: 風呂井戸 | 2011年3月28日 (月) 10時43分
ぼくもブレスレスが一番好きな(歌入り)曲です。アルハムとしてはスノーグースが一番気に入っていますが、大学生のころに聞いたエコーズのフレーズは、いま聞くと逆に青春時代を思い出すほど大きな印象深い曲となりました。昨日、アンディー・リトマーを来日ステージで観ましたが、まだまだ壮健で「おれも58歳になったけど、まだまだ頑張んなきゃ」と奮い立たせてくれました。アンディーに感謝です!
投稿: まさゆき | 2016年5月22日 (日) 04時35分
まさゆきさん、コメントどうも有り難うございます。
Camel来日中ですよね。ライブに参加されたようで羨ましいです。アンディ・ラティマー頑張っているようで嬉しいです(とにかく難病を克服しての彼ですから・・・)。
「スノーグース」の新録音を果たしていますが、是非とも新曲新アルバムを期待してしまいます。
投稿: 風呂井戸 | 2016年5月22日 (日) 09時44分