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2011年3月21日 (月)

「灰とダイアモンド」のアンジェイ・ワイダ氏からの手紙 : 東北関東(東日本)大震災

”ポーランド冷戦下時代の反体制運動家・映画監督”からの日本人への励まし

 今回の大震災の直接的被害を受けなかった私であるが、平静を保ちながらも、何か平常時と違う感覚下にいる。このブログでも平静を保つ事が我々の目下必要なことと思いつつ、音楽などの感想を書いてはみたものの、何か地に足が付いていない。そうした時に、あのアンジェイ・ワイダ氏(このブログのタイトルのよって至るところ)からの励ましの手紙が日本に届いた。
               *        *        *
Andrzej_wajda 日本の友人たちへ。
 このたびの苦難の時に当たって、心の底からご同情申し上げます。深く悲しみをともにすると同時に、称賛の思いも強くしています。恐るべき大災害に皆さんが立ち向かう姿をみると、常に日本人に対して抱き続けてきた尊敬の念を新たにします。その姿は、世界中が見習うべき模範です。
 ポーランドのテレビに映し出される大地震と津波の恐るべき映像。美しい国に途方もない災いが降りかかっています。それを見て、問わずにはいられません。「大自然が与えるこのような残酷非道に対し、人はどう応えたらいいのか」
 私はこう答えるのみです。「こうした経験を積み重ねて、日本人は強くなった。理解を超えた自然の力は、民族の運命であり、民族の生活の一部だという事実を、何世紀にもわたり日本人は受け入れてきた。今度のような悲劇や苦難を乗り越えて日本民族は生き続け、国を再建していくでしょう」
 日本の友人達よ。
 あなた方の国民性の素晴らしい点はすべて、ある事実を常に意識していることとつながっています。すなわち、人はいつ何時、危機に直面して自己の生き方を見直さざるをえなくなるか分からない、という事実です。
 それにもかかわらず、日本人が悲観主義に陥らないのは、驚くべき事であり、また素晴らしいことであります。悲観どころか日本の芸術には生きることへの喜びと楽観があふれています。日本の芸術は人の本質を見事に描き、力強く、様式においても完璧です。
 日本は私にとっては大切な国です。日本での仕事や日本への旅で出会い、個人的に知遇を得た多くの人々。ポーランドの古都クラクフに日本美術・技術センターを建設するのに協力しあった仲間たち。天皇、皇后両殿下に同行してクラクフを訪れた皆さんは、日本とその文化が、ポーランドでいかに尊敬の念をもって見られているか、知っているに違いありません。
 2002年7月の、あの忘れられないご訪問は、私たちにとって記念すべき出来事であり、以来、毎年、私たちの日本美術・技術センターでは記念行事を行ってきました。
 日本の皆さんへ。
 私はあなたたちに思いをはせています。この悪夢が早く終わって、繰り返されないよう、心から願っています。この至難の時を、力強く、決意をもって乗り越えられんことを。
 ワルシャワより、
 アンジェイ・ワイダ

                   (信濃毎日新聞2011.3.21より)
 
 

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