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2011年3月24日 (木)

キャメル CAMEL の一考察(1):「スノー・グース」から「ステーショナリー・トラベラー」

叙情派プログレッシブ・ロックという世界を築いた不思議なバンドの変遷

 Minasianのアルバム「Random Acts of Beauty」(このブログ2011.3.4で紹介)で、久々のアンディ・ラティマーのギターが聴けたことで、私のロック史において重要なバンド”キャメルCAMEL”をここで思い起こすわけである。

 そのキャメルは、もともと英国の叙情派プログレッシブ・ロックとしての名声が高いが、結成は1972年、ピンク・フロイドで言うと7thアルバム「雲の影」、キング・クリムゾンでは5thアルバム「Eearthbound 」の頃で、プログレもピークを迎えた頃である。こうしてみると遅咲きの感あるが、重要メンバーのギタリスト、アンディ・ラティマーAndrew Latimer は、既に1968年より”STRANGE BREW”というバンドを始めており、彼自身は英国ロック旋風の新しい流れを求めた中に見い出すことができるのだ。そしてこのバンドの中断や再結成をしている時に、キーボード・プレイヤーを募集し、オーディションに合格したピーター・バーデンスPete Bardensを迎え、このラティマーとバーデンスの出会いこそがバンド”キャメル”を産むことになった。

Snowgoose  そんな経過の中で、何だかんだ言っても、やっぱり我々がキャメルを知り、そして彼らの曲を愛したのは1975年の3rdアルバム「スノー・グース Music inspired by The Snow Goose / 白雁」(左)があったからだと言える。

 1stからのオリジナル・メンバー(peter bardens(key.)、 andy latimer(giit.flut.)、 andy word(drum.)、 doug fergusons(bass))が、このアルバムに来て自己のスタイルを完成したと言っていい。バーデンスのムーグ、ハモンドB-3、メロトロン、そしてラティマーのギターとフルートと、当時のプログレ・ファンには納得の構成。そしてポール・ギャリコの短編小説「白雁」の純真な心の通いの世界にインスパイヤーされて、彼らの音楽的センスと技能を駆使して一つの世界を極めた美しき傑作アルバム。

 ところが実は、このアルバムを私はかって初めてLP時代に聴いて以来、未だにロックという感覚にならないんですね。それはオーケストラの導入なども一つの因子かも知れないが、ただそれだけでない、曲のスタイルやメロディーとあまり美しく出来上がったアルバムの構築にて、ロックというよりはイージー・リスニングに近い絵巻物音楽といった方が良いのか?、そんな世界なのだ。それは全くの私の偏見的個人的感覚なんですが。
Camelmember  さて、私のキャメルとのお付き合いの話になるが、そのスタートはやっぱりこの「スノー・グース」からで、その美しさに魅了されたわけだが、逆に1st、2ndにふり戻ってその後聴いてみると、なんと意外に2ndアルバム「ミラージュ(蜃気楼)MIRAGE」(1974年)は、結構ロックだったりする。そしてこれも私は見逃せない名盤だと思うのだ。ライブでは必ず演奏する”Lady Fantasy”は、このアルバムの最後の締めくくりの曲として登場。

 とにかく、このキャメルが日本でも聴かれるようになったのは私の経過と同じように「スノー・グース(白雁)」からと言っていいと思うが、その時はピンク・フロイドは既に「狂気」で一つの頂点を極めた後であり、彼らは自分たちの音楽の次の道に暗中模索するに至り、なんとか2年半ぶりのアルバム「炎」のリリースが出来た時である。一方キング・クリムゾンは、「レッド」をリリースして解散してしまった時である。このようにプログレッシブ・ロック運動は既に一つの収束を得た時であった。こうした時に彼らは逆に注目と期待を浴びて一つの波となり、翌年(1976年)には早速4thアルバム「Moonmadness」をリリースしたのだ。

Statinarytraveller 「CAMEL / Stationary Traveller」 DECCA pocd-1831 ,  1984

 さて、ここにいきなりキャメルのライブものを別にしての10作目を登場させる。つまり「スノー・グス」以降ここに来るまでのキャメルのアルバムは、私にとってはいずれも悪くはないが、その悪くないところが逆に印象が薄いのだ。
 バンド・メンバーもリチャード・シンクレア(bass)、メル・コリンズ(sax,flut)の加入や、当初のバーデンスの脱退などと変遷を経ている。
 そうそう、7thアルバム「I can see Your House from Here リモート・ロマンス」(1979年)はバーデンス+ラティマーから、ラティマーへの転機のアルバムだった(最後のインスト曲”Ice”にはラティマーの世界が開花する。私はこれ一曲で十分だった)。
 1981年には、あの戦後29年もフィリピンで一人戦って来た小野田寛郎をテーマにした8thアルバム「NUDE」のリリースも話題だった。しかしアルバムとしての完成度は高いとは言えず、そのスタイルにおいては中途半端であったと言わざるを得ない。

 そしてこの10作目「Stationary Traveller」に至ると、振り返ってみればスタート時のメンバーはアンディ・ラティマーのみで、彼一人のバンドと化している。更にこのアルバムは”東西ベルリンの悲劇的実情”をテーマにしていたのだ。ラティマーにしてこの問題を描く事の来たるところは何なのか?、一つの大きな疑問に当時向き合うことになったが、以前に小野田寛郎を取り上げたことにも関係していることが後に解ったのだ。
 (members)
      Andy Latimer : guitar, pipes, piano, vocals
      david paton : bass
      paul burgress : drums
      ton scherpenzeel : Key.
      susan hoover : lyrics
 このアルバム、曲を作ったのはラティマーであって、あのかってのキャメルとは一線を画したロック・アルバムの世界に突入していたのだった。これはむしろ”新星ロック・バンド・キャメル”ではないか!。
 それには1977年よりのラティマーの良き伴侶のスーザンSusan Hooverとの関係が重要であることが解った。それは8thアルバム「NUDE」から加わった彼女とラティマーのコンビの結果が、この3作目にしてようやく開花したものでもあったのだ。全ての歌詞はスーザンによって書かれた。彼女の父親の戦争との関わり、それによるのか彼女には戦争に対する問題意識そして反戦・平和思想があり、それがラティマーの触発を促したのだった。
 ラティマーにとっても、コンセプト・アルバムの世界への意欲が充実した。もともと繊細にして内向的でどこか哀愁のあるラティマーの本質が、こうしたアルバム造りへの気持ちと築き上げられた音楽思想に一致をみるに至ったのだ。

(list)
   1. pressure points
   2. refugee
   3. vopos
   4. clock and daggerman
   5. stationary traveller
   6. west berlin
   7. fingertips
   8. missing
   9. after words
  10. long goodbyes

 スタート曲の”pressure points”は、ベースとギターで力強くスタートする。こうゆうパターンもかってのキャメルにはなかった。このアルバムは基本的には力強いドラムスでビートを刻みロックの味付けが前面に出る。しかし3曲目”Vopos”にして、哀しきテーマが流れ、5曲目のインスト曲”stationary travellar”になると美しい旋律が流れ、ラティマーのpan pipesが心を打ち、更に彼のギターが哀愁を帯びる。全編を通じて曲の構成が見事で非の打ち所がない。私はキャメルの一押しの名盤と言いたいところだ。”after words”のピアノも美しい。最後の”long goodbyes”でキャメルは一つの終止符を打つことになってしまうのだが。

 このアルバムは、ラティマー+スーザンのコンビの結実であった。そしてこの後あの名盤「DUST and DREAMS」へは、8年間の空白が襲うのである。
                                  (続く)


 

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コメント

うわぁ~、一気に来ましたね。
思い入れたっぷりのCamel話。楽しませてもらいますよ~。最初は印象に残らなかったバンドって聞いてちょっと安心しましたけど(笑)。10作目、気になります、うん。

投稿: フレ | 2011年3月24日 (木) 22時11分

「怒りの葡萄」の事を某音楽掲示板に延々書いてらっしゃいましたね。あれから20年以上経ちましたね。

投稿: nr | 2011年3月24日 (木) 22時38分

 フレさん、コメントどうも有り難うございます。キャメルはこの「Stationary traveller」が一つの頂点、そしてその後の「Dust and Dreams」、「Harbour of tears」が、復活の頂点と思っています。是非とも・・・・愛聴盤にしてください。

投稿: 風呂井戸 | 2011年3月25日 (金) 18時32分

 nrさん、何時も刺激を有り難うございます。「怒りの葡萄」は私の大切な小説です。今でも大久保康雄の訳本をたまに開くことがあります。そしてそれを取り扱ったキャメルの「Dust and Dreams」は、大切なミュージック盤です(ジャケが又良い)。
 ところで例のPALLASは、結構気に入ってしまってます。車の中で大音量で聴いてますと・・・遠乗りもあっという間に着いてしまいます(笑)。あのアルバムもジャケをもう少し別物にして欲しいですね。

投稿: 風呂井戸 | 2011年3月25日 (金) 18時42分

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 英国らしさを奏でるバンドは数多くあるんだけど、キャメルもその中ではかなり英国的なバンドと云える。アンディ・ラティマーの美しくメロディアスなギターは同じギターでもこのような旋律をこれほど綺麗...... [続きを読む]

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