ウィズイン・テンプテーション Within Temptation のニュー・アルバム「The Unforgiving」
ゴシック・メタルからポップ化したロックへの変身は、いやに評判が良い!
「Within Temptation / The Unforgiving」 ROADRUNNER Records 1686-179172 , 2011
待望のオランダのウィズイン・テンプテーションのニュー・アルバムの登場。女性ヴォーカルを立ててのバンドの宿命か?、シャロン嬢(もう”嬢”というのはやめようか)の出産(第2子だと思ったが)のため前作から4年経過しニュー・アルバムが完成した。
このところ新作までの埋め合わせと言うことか?、ライブ盤が登場し、しかも一昨年にはアコースティック・バージョンという意外なライブ・バージョンも我々の手にもたらされたのだが(当ブログ2010.3.16”ウィズイン・テンプテーションのアコースティック・スタイルの賛否両論”参照)、その後このバンドがどんな方向に向かうのか、それなりに興味があったところである。
まず、結論から言ってしまうと、なんとあの荘厳で叙情的とも表現されたシンフォニック・コジック・メタルからポップなシンフォニック・ロックへの変身だ。しかもジャケは、ここに見るようにかってのイメージからは想像できなかった意外なものになっている。
どうも今度のアルバムはコミックのストーリーに沿って製作されたコンセプト・アルバムだというのだ。
バンド・メンバーは左の5人になって、かってのツイン・ギターとキーボード、ベース、ドラムスとシャロンのヴォーカルの6人バンドから、ドラムスのステファン・ファン・ハストレットが消えている。
冒頭にストリングスとオーケストラをバックにナレーションが入り、彼らの得意なコシック系の異様空間に導いてくれるかと思いきや、2曲目から最後の12曲目まで一気にオーケストラとのシンフォニック世界は吹っ飛んで、ポップに、軽快なロックに圧倒される。これならキーボードにバックをまかせてオーケストラはいらなかったのでは?とも言いたくなる。
はっきり言うと、私の期待とは全く別の世界。しかし逆にこの快走感は見事と言いたくなる。
9曲目のアコーステック・ギターとシャロンのヴォーカルから始まる”Lost”は、このアルバムでは唯一ゆったりとしたリズムで聴ける。
しかし恐るべきは、このアルバムに登場する曲が、それぞれ見事なメロディー・ラインを持ち、ロック感覚に花咲いて完成度が高い。恐ろしやウィズイン・テンプテーションというところだ。
さて結論的にこのアルバムの評価となると・・・・、う~~ん、私にとっては壮大で荘厳なそしてコシックな異様空間のシンフォニツク・ロックを期待していた人間にとっては、ちょっと寂しさがある。シャロン・デン・アデルのヴォーカルも、語り聴かせるような部分ももう少し取り入れて欲しかったなぁ~~と、若干残念なのである。
しかし、しかし・・・・・、この線はメロディーが極めて解りやすく、バンド演奏もオーケストラと共にシンフォニック・ハードポップといっていい万人向けの格好良いロックになっている。そうそう、これはこれ楽しむという意味においては最高クラスであり、世界に広くアッピール出来るアルバムであったと言っておこう。多分ヒット・チャートでも過去を凌ぐところに至るだろう事は間違いない。
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コメント
もうね、捨てたものもあるけどそれ以上に得たものが大きいアルバム。今まで通りじゃ飽きるし、良い方向に展開してったなぁ〜と。ゴシックももう流行らないだろうし、こういう方向のバンドって他に見当たらないし、良いっす。気持ち良いもん♪
投稿: フレ | 2011年4月28日 (木) 20時38分
フレさん、トラックバックもどうも有り難うございます。
そうですね、そう思えばこれで良かったんですかね。そう言うところで取り敢えず今回は納得して、楽しみましょう。
そこで・・・さてさて気が早すぎますが、次作はどうなるかが興味津々と言ったところです。
投稿: 風呂井戸 | 2011年4月28日 (木) 22時27分
遅まきながら、聴きだして4周目に入りました。ヴォーカルは完璧ですね。技量が上がったのか、それとも、曲の難易度が下がったのか。あのフラつき気味の高音が聴かれないのが寂しい限りです。POPな方向については、ジョン ウェットンとスティーヴ ハウを久しぶりに見たらASIAだった的な、戸惑いがあります。これで、全曲フェードアウトで終わっていたら、プロデュースはジェフ ダウンズなのかとツッこんでいたとこです。ただ、曲のクォリティは、トラックバック先でも書いておられるように物凄く高いです。メタルなABBA、もしくは、ゴシック風味のマドンナのベストアルバムと自己催眠すると、やや受け入れられるようになりました。
投稿: nr | 2011年5月 4日 (水) 22時25分
nrさん、こんばんわ。
いやはや、相変わらずの表現の豊富さに感動です。”メタルなABBA、もしくは、ゴシック風味のマドンナのベストアルバム”には一瞬ビックリでしたが・・・。
いずれにしても、聴いていると結構のりの良さに、これはこれ立派です。アルバムの構成も中間部で"Fire and Ice"から"Iron"のような曲で抑揚をつけて次に展開させていくところは飽きさせないで旨いですね。
投稿: 風呂井戸 | 2011年5月 4日 (水) 23時58分