ポーランドからの女性ジャズ・ヴォーカル:アガ・ザリヤンAga Zaryan「My Lullaby」
温かさのある本格的ジャズ・ヴォーカルを聴かせてくれるアガ・ザリアン
あのポーランドのジャズ界は今や注目の世界。先日取り上げたマルチン・ボシレフスキのピアノ・トリオに感動して、もう一つ女性ボーカルにも焦点を当てざるを得ない。
「AGA ZARYAN / MY LULLABY」 EMI Blue Note X-0949422 , 2010
昨年(2010年3月)発売されたアガ・ザリアンAga Zaryanの5thアルバム「Looking Walking Being」が好評であった(日本でも注目を浴びた)ことによって、彼女のデビュー・アルバムがリマスターされ発売されたものだ。このアルバムはもともとポーランドはワルシャワで2001年9月に録音、2002年にリリースされ、そしてほぼ10年後の今に我々に届いたわけだ。
まず驚きは、これがデビュー・アルバムか?と思わせるところ。中身はジャズのエッセンスが十分に盛り込まれている。彼女のヴォーカルは実にオーソドックスでダイナミックな唱法で好感が持てる。声の質も充実していて高音部がややハスキーになるが、その点も魅力。そしてなんと言っても彼女の歌声には温かさが感じられるところは出色だ。
このバック・バンドは・・・・
Darek Oleszkiewwicz (double bass)
Tomasz Szukalski (tenor Sax.)
Michal Tokaj (piano)
lukasz Zyta (drums)
といったBassのDarekを中心としたカルテットだ。
女性ヴォーカルものは、最近の傾向としてバック・バンドは比較的前面に出ないで、歌声を支えるパターンが多いが、このアルバムはそうではない。Drumsはあまり暴れないが、Tenor Sax.、Piano そして Bass が、それぞれの曲で前面に出て演奏する。アガのヴォーカルと対等に主張して演奏するところが面白い。
そして又録音が実に良いのだ。この音の良さもアルバムの出来をバック・アップしている。
(List)
1. to see a world
2. waltz for debby
3. i've got the world on a string
4. my lullaby
5. you and the night and the music
6. i put a spell on you
7. never said(chan's song) /trust me
8. still we dream(ugly beaty)
9. i hear music
10. polka dots and moonbeams
私のお薦めは、やっぱりタイトル曲の”my lullaby”だ。スローな展開の中に味わいが濃い。サックスの演奏と競うような彼女のヴォーカルを聴くと、これは彼女の歌声が、曲を展開する楽器群の中の重要なポイントを占めている一つの音とも言える役割である。
ジャズの楽しさは、”i've got the world on string”、”you and the night and the music”、”i hear music”の3曲だろう。全楽器の演奏が代わる代わる主役を演じて乗ってくるところはお見事である。
ピアノとの彼女の関わりが楽しい”still we dream”とか、”to see a world”、”never said”はサックスが主張して面白い仕上げ。
最後の”polka dots and moonbeams ”は、ベースのみのバツクに彼女の歌唱力をみせつけて静かに幕を降ろす。
彼女は1976年生まれ(ポーランドの首都ワルシャワ)だから現在35歳ぐらい(このアルバムは10年近く前であるので当時は25、6歳というところか)。父親はクラシック・ピアニスト、母親は英語教師で作家という環境で育って、ヨーロッパ各地を広く旅しているし、小学校はイギリスのマンチェスターだという。両親の音楽環境はポップ・ミュージックにも接していて彼女に多大な影響をもたらしたであろう。10代に再びポーランドに戻っている。
そして音楽学歴もきちんとしているし、2008年にはポーランドの権威ある賞の「フレデリック・ショパン・アワード」受賞。なにせポーランドというとショパンの国、多分推測ではあるが、音楽の歴史的伝統はしっかりしたものがあると思われる。そんな国からのジャズの贈り物を紹介した。
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