オリジナルを聴かせるジャズ・ヴォーカルのシーネ・エイSinne Eeg / アルバム「Don't Be So Blue」
デンマークからの歌声はそれなりに説得力があった。
「SINNE EEG / DON'T BE SO BLUE」 Red Dot Music RDM-010 , 2010
全10曲の収録、シーネ・エイ自身のオリジナル曲が中心(7曲)で、シング・ソングライターの面目躍如のアルバム。彼女はデンマークのジャズ・ヴォーカリスト。特に詳しい情報は持っていないが、雑誌「ジャズ批評」では昨年の”ジャズ・オーディオ・ディスク大賞2010”で、銅賞を与えている。
今回のこのアルバムは彼女の5作目になるようだが、1stアルバムは彼女の名を冠したもので「Sinne Eeg」(Cope Records)であり、2003年にリリースしている。従ってそれなりのキャリアは積んでの今作だ。特に2007年の2ndアルバム「Wating for Dawn」はデンマークの音楽賞の”ヴォーカル・ジャズ・アルバム・オブ・ジ・イヤー”を獲得しているという。
(members)
Sinne Eeg (vo)
Jacob Christoffersen (p)
Morten Toftgard (b)
Morten Lund (ds)
Jesper Riis (tp on M-7)
バンドはピアノ・トリオである。特にヤコブ・クリストファーセンのピアノが快感の演奏を展開して、見事にそれぞれの曲を引き立てている。彼女はこのアルバムではヴォーカルのみであるが、これだけの作曲をするにつけてはピアノの技能もあろうかと推測するところだ。さて現実はどうなのか?。
(List)
1. don't be so blue*
2. Highway one*
3. the writing on the wall*
4. last ride*
5. goodbye
6. down on west fuxing lu*
7. the sound of music
8. the streets of berlin*
9. my favorite things
10. time to go*
(*印オリジナル) 1st曲は彼女オリジナルのアルバム・タイトル曲である”Don't be so blue”だ。スタートさせるやいなや前作から飛躍的に進歩した好録音の澄んだピアノの音が飛び込んでくる。そしてこの曲は、ぐっと引き込むゆったりした歌い込みの彼女のヴォーカルで説得力ある曲に仕上がっている。
一方このアルバムでは、映画「サウンド・オブ・ミュージック」からの2曲が盛り込まれているが、特に9曲目の”my favorite things”はバンドの演奏と彼女の熱唱が新解釈のアレンジを見せて内容のレベルは高い。しかし、どうもこのアルバムのムードから一歩浮いている感じで違和感がある。
私のお薦めは、5曲目のGordon Jenkinsの曲”goodbye”だ。これはピアノとベースのからみも美しくこのアルバムでも出色。
又彼女のオリジナルの6曲目の”down on west fuxing lu”は、ベースとドラムスの刻むリズムカルな展開が良い。そこに彼女の唄が乗って楽しい。
8曲目の彼女の曲”the streets of Berlin”は、静かにして繊細な音を構築しているピアノの美しい音に、私の独断的印象だが、異国の存在を感傷的に捉えているムードで、彼女にこうした世界があるのかと納得して聴き入ってしまう。この曲によってこのアルバムの印象を作り上げていると言っても過言でない。
いずれにしても好感のもてるアルバムということで、お勧めである。そして今後も注目してみたいところ。
さて、私がこのアルバムに到達することになった所以は、友人から左の前作の「Remembering You」 (Red dot music , 2010 )を聴かせてもらった事による。
このアルバムは好評のアルバムで、特に彼女の比較的素直な技巧に頼らないヴォーカルに私も好感を持った。そしてどちらかというとバラード系が出色で、そのあたりは私好みの世界であるからだ。
とにかく、彼女の歌声は比較的角のないそしてクセのないタイプ。そして声の質も若干ハスキーな中低音部もあるが、高音部はオーソドックスだ。ある意味ではそれが良いことにもなるが、場合によっては単調になることにもなる。しかし、ソングライターの能力も秀でているようだし、そんな意味ではこれからも曲も歌唱も魅力を増してくれそうでもある。期待してゆきたい。
(花の季節 : 「薔薇」 = 我が家の庭から・・・・ )
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