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2011年6月21日 (火)

絵画との対峙 : 中西繁の世界(3) 生涯テーマ「棄てられた街」<1>

問題意識から生まれる作品

 私が中西繁作品に傾倒するのは、その絵画技法とセンスと才能に惚れ込んでいるからであるが、それに加えて一つはパリを代表する”欧羅巴の美”そして二つ目はプラハを代表する”哀愁の街”。続いて三っ目のポイントが実は重大なのだ。これが多分中西繁の生涯テーマであると私は思う。それは一連の「棄てられた街 DESERTED CITY」の作品群だ。

Photo
軍艦島II(棄てられた島2001) (端島・長崎) F100 (中西繁作品集「LAND・SCAPE」より)

 私が驚愕したのは、この100号の大作である。今思い出せないが何かの雑誌でこの作品に遭遇して唖然とした。言葉がすぐに出ないほどの圧倒的迫力であった。(後にこの作品も何枚か彼は書き上げているが)日本にこんな風景の存在があったこと、それに挑戦していく画家としての問題意識の存在。そしてそれを表現していく卓越した技法(著書「油彩画プロの裏ワザ」には、この作品の作画過程で、木炭を絵の具にまぜたり、散乱する木材の表現に厚紙を切って貼ったりという工夫をしたり、無常観を表すに色彩をモノトーンに近く押さえたりしたというところが記されている)。素晴らしかった。ここに、中西繁の世界を見たと思った。

Photo_2
軍艦島I(端島・長崎) 3240×1303の左1/2 (中西繁作品集「LAND・SCAPE」より) 

 この軍艦島は長崎半島沖の幅160m、長さ480mの小さな離れ島。戦前からの炭坑の島であるが1973年に閉山となったという。多いときは5000人以上が住んでおり、しかし労働者の環境はいわゆる搾取された状態で厳しく、又強制的に連れてこられた朝鮮人労働者もいたと言われる。今は作品「軍艦島II」の如く廃墟の島となっている。
 この作品群は”棄てられた街 DESERTED CITY”というテーマの日本版で、中西繁は彼の問題意識の一つを我々に示し、我々にも何かを問うているのだ。一連のこのテーマの作品は私にとっては”パリの美意識”、”哀愁のプラハ”とは又別次元での迫りくるものが感じられたのだ。

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瓦礫の街II(長田・神戸) F100  (中西繁作品集「LAND・SCAPE」より)

 更に、あの1995年の阪神大震災、5000人以上の命が失われた悲劇。直ちにその場に救助活動にはせ参じた中西繁は、彼の技術でその姿を描くことも忘れなかった。
 (実は今年の3.11東日本大震災直後にも彼は直ちに救助活動に身を投じている。もうそんなに若くないので周囲では心配していたが、彼の心がそうさせるのであろう。そしておそらく写真とは違った心で描く作品が我々に届くであろうと思っている)

 中西繁の一大テーマはこの「棄てられた街 DESERTED CITY」である。そしてそれは日本に止まらず世界を見る目で進行して来たのである。    (続く)

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