ドリーム・シアターDream Theater のニュー・アルバム「a dramatic turn of events」
新構成はプログレ・バンドへの色合いが濃くなった
プログレッシブ・ロックが過去のものとなった時の寂しさは私だけでなかったと思う。その後フェイツ・ウォーニング、クイーンズライクなどが慰めてくれていたときに、プログレッシブ・メタルとしての支持を1990年代に世界的に集めたのが、このドリーム・シアターであった。もちろん私は歓迎した一人である。しかしこのバンドの中核であったドラマーのマイク・ポートノイの脱退話が約1年前にあり、ファンを驚かしたり心配させたが、ここに新ドラマーを加えての最新作(11作目)の登場だ。
「Dream Theater / a dramatic turn of events」 ROADRUNNER RECORDS RR7765-2 , 2011
さて、このニュー・アルバムは変わったか?と言うとやはり変わったといった方がいい。明らかにメタル色の後退である。そしてまず印象深いのは、ジョーダン・ルーデスのキー・ボードの締める位置が大きくなり、そしてその音もメロディー・ラインも共々美しくなった。もともと旨い下手は別としてプログレ色の強いケビン・ムーアのキー・ボードが私はこのバンドが好きになった一つの要素であったが、何かそのパターンへの復帰のイメージすら感ずる。このあたりは歓迎だ。
問題の新加入マイク・マンジーニのドラムスはというと、かなりテクニシャンという音造りで、リズム隊としてもジョン・マイアングのベースの音とのマッチングが極めてバランスが取れている。これはミキシング(アンディ・ウォレス)との関係もあるかも知れないが、なかなか良いじゃないかと言っておく。
今回のこの新構成バンドにおいては、このニュー・アルバムのプロデュースにギターのジョン・ペトルーシが係わったことが記されている。確かにポートノイの脱退によって、このバンドは危機感からかも知れないが、それぞれのリキ(力)が入っていると言っていいのだろう。ペトルーシは結構泣きギターも聴かせてくれるし、珍しくピンク・フロイド流のマイアングのベースの音も聞こえてくる。
納められた曲は左のように9曲、ジョン・ペトルーシを中心としての彼らのオリジナル曲である。そして10分以上に及ぶ曲が4曲も盛られた。
相変わらずリズムの変調子は健在で、特に長曲では楽しませる。又ジェイムズ・ラブリエのヴォーカルも適度に散りばめられて、Lyrics もペトルーシにより書かれているが、バランスはそれなりに良いのではないか(ただし、詩の意味についてはまだ私は未消化)。
前アルバには、カヴァー曲が特集されていたが、そんな雰囲気はなくなっている。彼らは彼らの曲で演奏で勝負して欲しい。又、今回も日本盤(私は敢えて買っていない)ではインスト曲を付加したようだが、それはレコード会社の販売テクニックなのかよく解らないが、曲はヴォーカル共々一つの演奏隊としてあってもなくてもいいというのでなく曲作り完成させていって欲しい。
今回のアルバムは、ペトルーシ(左)の意欲で、それぞれのメンバーの個性を生かしつつ創り上げたという印象が強いが、若干メタル色の後退で圧倒的パワーで迫ってくると言うところはなくなって寂しいという人もいるかも知れない。しかしその分、プログレ回帰が濃くなって、むしろ昔からのファンは見事に練り上げて創り上げられた完成度の高い曲の構築に、安心して聴いてゆけるといったところもあるのかもと推測する。
結論的には、前作あたりで一つの壁に当たっていたことも事実である。2009年8月3日に私はこのブログで”ドリーム・シアターの新作「Black clouds & silver linings」 進化はあるか?マンネリか?”と書いて若干疑問を持ったことを思い出す。いまこうしてみるとプログレ色への回帰へ方向を持ったようにも見える。多分このアルバムは売れ行きは良いかも知れない。そして問題は次作がどう出るかというとこであろう。
最後に、このドリーム・シアターの日本盤は相変わらず変な日本語タイトルは付けていなくてよいと思う。一方ジャケ・デザインは洒落ている。よく見るとこのロープの一部が今にも切れそうに最後の一本の糸で繋がれているところがドキッとさせてお見事である。
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コメント
私も早く聴きたいアルバムです。数少ない今を生きるプログレッシヴなロック・バンドですから。これほどテクニカルなバンドで、商業的にも成功しているバンドは少ないように思います。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年9月20日 (火) 19時36分
こんばんわ、ケイさん。最近のケイさんのブログの話題が私のコメント出来る範囲から逸脱(笑い)してしまってまして、傍観してしまっています。
こちらのドリーム・シアターのようなポピュラーなところは気楽で良いです。今回のアルバムは評価はどうなりますか?かなり聴きやすくなっています>それはそれ良いこととしますが。又ケイさんの感想も聞かせてください。
投稿: 風呂井戸 | 2011年9月20日 (火) 22時04分
初めまして、ヒロチェリと申します。
いつも、楽しく拝見させて頂いております。
Dream Theaterの最新作、
「Dramatic Turn of Events」
は予想以上に素晴らしかったですね。
ドラマーがマンジーニに変わり、
どうなる事やらと心配していたのですが、
全く杞憂に終わりました。
私はマイアングが大好きなので、
ベースの音がちゃんと聴こえる点は、
非常に嬉しかったですし、
新鮮でした。
ただ、前作、
「Black Clouds & Silver Linings」
収録の「The Count Of Tuscany」
のようなキラーチューンがなかったのが、
残念と言えば、残念です。
(「Breaking All Illusions」は
素晴らしい曲だと私も思うのですが、
「The Count Of Tuscany」と比較すると、
少し印象が劣るように思います。)
ただ、総合的に見て、
非常にクオリティの高いアルバム
ですので、大満足とは言わなくても、
非常に嬉しく思います。
投稿: ヒロチェリ | 2011年10月27日 (木) 17時05分
ヒロチェリさん、コメント有り難うございます。よろしくお願いします。
考えてみますと、Dream Theaterのようなバンドも歴史的に重要なバンドになりました。アルバムも単なる続編は許されない厳しさもあろうかと思ってみています。最近ピンク・フロイド回顧をしてますが、彼らも次のアルバムには相当のプレッシャーがあったようです。それとともにメンバーのお互いの音楽や諸々に対しての違いが浮き彫りになって行くところが、厳しいですね。
ところでヒロチェリさんのブログはクラシック一色ですね。ですが・・・バッハはジャック・ルーシェなどは如何ですか?。
投稿: 風呂井戸 | 2011年10月27日 (木) 18時24分
風呂井戸さん、
コメントどうもありがとうございます。
ジャック・ルーシェ!
渋いところをついてきますね~
私は好きですよ。
しかし、Jazz+Bachということでしたら、
私はキース・ジャレットの方が好きです。
Jazzアレンジのジャック・ルーシェのバッハ。
オーソドックスなキース・ジャレットのバッハ。
一長一短ですね~。
投稿: ヒロチェリ | 2011年10月31日 (月) 22時34分