秋の夜長の回顧シリーズ(4) : ローズマリー・クルーニーRosemary Clooney
彼女の芸達者には脱帽
ベスト盤アルバムの否定論者の私が、この回顧シリーズではベスト盤を中心に再検証しているという皮肉な状態に陥っている。その取り上げる女性ヴォーカリスト盤の一つがこのローズマリー・クルーニー盤である。
「The Essential ROSEMARY CLOONY」 COLUMBIA CK90861 , 2004
彼女の話をすると歳がばれるが、実はリアルタイムに私はそのヴォーカルに魅せられた一人なのである。
このアルバムは、彼女の1940年代から50年代の多岐に渡る多くの作品からの寄せ集めであるが、まあ絶頂期のものだけあって聴き応え十分だ。
そもそも彼女はアメリカのケンタッキー州にて、1928年生まれ、1945年に歌手デビュー。その後は人気上昇して映画女優としての活躍も花咲いた。
彼女の歌う範囲はジャズ系ではあるが、どちらかというとポップス寄りにあると言っていい。ビング・クロスビーとの共演が有名だが、実は私がこのローズマリーに関心はあったが、完全に魅せられたのはラテンものなんです。それもなんとあのペレス・プラードとの共演の曲”キエン・セラ Sway”でした。この曲のペレス・プラード楽団の刻むリズムといい彼女の歌声の迫力は、私にとっては日本の音楽はぶっ飛んでしまったんです。どちらかというと洋楽(当時の表現)に興味を持った原点に近いものなんですね。最も1950年代のエルビス・プレスリーも私にとっては重大ですが。
残念ながら彼女は2002年に亡くなっていますが、とにかく彼女を回顧するには、今も手に入るこのベスト盤は価値があります。
収録曲は左のように16曲、トップの”Come on-A my house”は1951年の陽気な曲で彼女を一躍有名にしたもの。日本でもその後10年以上盛んにラジオで流れていた。アメリカは何せ戦後は日本人において全てあこがれの国でしたからね。”mambo Italiano”このヒットも凄かったですね。日本で子供も大人も唄ったものです。
その他”Tenderly”などはがらっと変わって、今のジャズ・バラードの原点的なしっとりとしたムードがあります。いやはやこうした曲にはうっとりとさせられたものでした。”hey there”、”you started something”などもそのタイプです。”Half a Much”も良く聴かれた曲だ。このアルバムを聴いただけでも如何に彼女が芸達者であったかが解ろうというところ。
このベイト・アルバムは、オリジナルを集めたものであるが、当時はLPもないころのものもあり、よくここまで音を復活させていることに感心してしまうのである。
「ROSEMARY CLOONEY JAZZ SINGER」 Columbia CK86883 , 2003
ローズマリーのジャズ・ヴォーカルを聴きたかったら、このアルバムです。彼女のジャズをテーマに集めたベスト盤。この盤には、ダイアナ・クラールが”歌手そしてピアノ・プレイヤーとして最も大きな影響を受けた重要な歌手である”と言葉を寄せている。
”Memories of you”は、クラリネットにしっかり唄わせて、おもむろに彼女の低音の効かせたヴォーカルが登場というスタイルで聴けてなかなかどうしてムードたっぷり。
”Sophisticated Lady”、”Goodbye”の説得力のある歌い込みも魅力。
今や、女性ジャス・ヴォーカルは花盛りであるが、こうした秋の夜長には戦後におけるジャズ・ヴォーカルの原点に近いところに、ふと回顧してよき時代を思い起こしつつ聴いているというのが至福の時でもあるのだ。
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