ピンク・フロイドPink Floyd アルバム「狂気」誕生までの貴重なライブ音源
1972年の「狂気 Dark Side of The Moon」実験ライブは楽しい
このスナップは、1972年1月の「UK TOUR」で初めてステージで「狂気 Dark Side Of The Moon」を披露した(1972.1.20)英国ブライトンBrightonのThe Dome のバック・ステージにおけるピンク・フロイドの4人だ。
彼らの満足そうな雰囲気が印象的である。
とにかく世界No1のアルバム「狂気」を生み出した1年前のステージ実験はこの時から始まった訳だ。
この「UK TOUR」は1月20日のBrightonを皮切りに、1月に6ステージをこなし、2月には10公演を行っている。その最後の17-20日にLondon のRainbow Theatre で4回の公演だった。
そしてその直後の3月には「JAPANESE TOUR」に入ったわけである。
そのごく初期のRainbow Theatre のライブ音源がブート界では最も有名である。
「PINK FLOYD LIVE ~the best of Tour 72」 THE SWINGIN PIC RECORDS TSP-CD-049 ,1990
これは昔LP時代に72年初期の「狂気」演奏もので「IN CELEBRATION OF THE COMET」というタイトルのライブ・ブート盤がその音の良さで有名であったが、そのCD盤である。1980年代後半になってCD時代を迎えイタリアを中心にCD盤でのブートのリリースがブームとなった。そして遅まきながらこのCDが登場したわけである。
この80年代後半から90年代前半は、LPからCDというメディアの変換期で、ブートもCD化に花盛りで、非常に楽しい時でもあった。
これは2月のRainbow Theatre でのもので、音質の良さで圧倒的支持を得たもの。(BBC放送音源と推測)
内容は左のように、当時の全曲を網羅しておりアルバム「狂気」とは異なった原曲を楽しませてくれる。ただし締めのの”Eclipse”が最後の直前でフェイド・アウトされているところが残念である。
もともとアルバム「狂気」は、当時としては新しい手法として電子音響(シンセサイザー、エコー・マシーン)をふんだんに使っている。しかしこの初期のライブを聴いてみると、彼らの演奏が一つ一つ手に取るように解り、私なんかは、本来のアルバムよりは、このライブもの、そしてこの後の3年間のステージものも含めて好きなのである。
まず”on the run”は、あのアルバムのシンセサイザーものより明らかに楽しい。ギルモアのギター、ウォーターズのベース、メイスンのドラムスがリズムを刻み、そこにライトのキー・ボードがジャズィに絡んでくる。何故このタイプを降ろしてしまったか、非常に残念である。”time”はかなり仕上がっている。それに続いてオルガンが響き、人の様々な話し声、そしてなんとウォーターズ得意のブタの鳴き声が登場する。そして”the great gig in the sky”は勿論クレア・トリィのスキャットはないが、ライトのオルガンが教会音楽の如く荘厳に展開する。”money”の冒頭には、ウォーターズが語っているように女房の陶芸の音からヒントを得たと言うだけあって、それなりの金属製のボウルに多くのコインを無造作に放り込むような音が面白い。
”us & them”はやはりブタの鳴き声が冒頭に入り、そしオルガン、ギターと続くが、この時点でかなりアルバム盤に近くなっている。そして”any colour you like ”はギルモアのギターの美しさに尽きる。”brain damage”はウォーターズの締めくくりの歌声が印象的。
PINK FLOYD / COLD FRONT」 APHRODITE STUDIO AS91PF001 , 1991
これは1972年2月のUK TOURのRainbow Theatre の後の3月の「JAPANESE TOUR」ものである。日本では、3月6日の東京都体育館を皮切りに、北海道札幌NAKAJIMA SPORTS CENTER までの6回公演を行っている。実は7回の予定であったが、横浜がキャンセルされたのだった。このCD盤は最後のナカジマ・スポーツ・センターのライブ・オーディエンス録音。それでもかなり良好な音質であり万歳もの。
基本的にはRainbow Theatre と同じである。しかしこのアルバム「狂気」リリース前の実験段階の音源として楽しむことが出来る。この会場へ集まったファンにとっては46分に及ぶ新曲に度肝を抜かれたのではと想像するに難くない。
収録内容は左のとおり。スタートの”speak to me”はRainbow Theatre ものよりも曲の冒頭のSEからしっかりと入っている。
ここでの「狂気Dark side of the Moon」の演奏はトータル46分の演奏。最後の”eclipse”も完全収録されていて、曲の終了と同時に鐘の音が響いて印象的な仕上がり。このCD盤はまさに「狂気」の初期完全版でもある。
この日はその他”one of these days”、”careful with that axe, eugene”、”Echoes”も演奏されている。残念ながらこのCDには”Echoes”のみ収録されていない。CD一枚には全て収まらない為のことと思われる。余談ではあるが”one of these days”は10分に及び充実しているし、”careful with that axe, eugene”の出来は既に長年の演奏が行われているものだけあって完璧な演奏を披露している。
昔のブート盤を思い出してここに取り上げてみた。久しぶりに聴いてみると、やはり人工的な音作りのアルバム「狂気」よりは、オリジナルな彼らのステージにおける実験的演奏に、生の音の感動が沸いてくるのである。
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コメント
今野雄二の和訳ライナーに、「狂気の初演は、ホールが会議場のようになった」と記されています。いったいオーディエンスはどんな反応を示したのでしょうか?
投稿: nr | 2011年10月22日 (土) 22時31分
nrさんおはようございます。
狂気の初演までは、非常に準備期間も短く6週間前に初めて始めたようだ。ロジャーは今までの諸々の曲をくっつけてコンセプト主義を強く出た。ニックの話によると聴衆はさまざまで、昔の曲にあきた連中と、サイケデリック黄金期を懐かしむ連中と、サイケデリックを体験したいという連中と・・・等々で多種多様の中で、この”人間をテーマ”にした新タイプの「狂気」のお披露目をしたわけで、かなり様々な反応があったことは想像に難くない。
この後、評判はあっという間に広がり、ロンドンに帰ってのレインボー・シアターは12000人の聴衆、4日間の毎晩ソールドアウトになったという。
投稿: 風呂井戸 | 2011年10月23日 (日) 10時01分