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2011年10月14日 (金)

ピンク・フロイド「狂気The Dark Side Of The Moon」を知る為のもう一つの方法

「狂気」誕生のプロセスを知ることもフロイドの理解に繋がる

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 ピンク・フロイドは、過去のアルバムのリマスターでこのところ注目を浴びているわけであるが、先日の「狂気ボックス・セット」の内容に若干の不満足感を持つ私としては、やはり彼ら4人の「狂気」にかけたエネルギーの結集は見事であったことをもう少し検証して欲しい気持ちになっている。このアルバムの成功にはアラン・パーソンズそしてクリス・トーマスを始め技術陣の能力の高さにも評価が必要なのは言うまでもないが、一つにはロジャー・ウォーターズの問題意識と彼の曲作りに於ける普遍的テーマと発想の豊かさ、そしてそれを開花させたデヴィッド・ギルモアとリック・ライトの音楽的技術と探求心の高さの結晶であるし、音楽としての完成度も高かったことがこうした傑作を生み出したと言ってもいいだろう。
 もともと、演奏技術としての評価よりは、彼らの曲の歌詞や展開が聴くものの頭に描かせるファクターの充実度が高いところがピンク・フロイド魅力なのであるから、その誕生プロセスには興味を持たざるを得ないのだ。

Dvdpinkfloyd DVD  classic albums「PINK FLOYD / THE DARK SIDE OF THE MOON」 Eagle Rock Entertaiment  VABG-1115 ,  2003

 このDVDアルバムは、決して音楽を聴くためのものでないことを断っておく。2003年にSACD盤「狂気」(5.1サラウンド)がリリースされた際に、フロイドのメンバーの「狂気」制作エピソード、関係者の証言集といったところである。1971年12月からの曲作り、1972年1月20日Brightonで初めて舞台での演奏を開始し、5月からはスタジオ・レコーディングを開始し、その後もステージでの実験を繰り返し、73年になってようやく完成へ辿り着く過程を当時の映像を交えながら我々に紹介してくれる。いずれにしてもピンク・フロイドはステージでの実験から曲を完成させてゆくバンドであったことから、こうした回顧は興味の持たれるところなのだ。
 その意味に於いては、今回の「狂気ボックス・セット」のDVD盤よりは明らかに内容は濃い。既に何年か前のものとなってしまっているが、今「狂気ボックス・セット」を手にすると、”もっと充実したものがあったぞ”と言いたくなっての紹介である。

Dvdpinkfloydlist  このDVDの内容は左のように(クリック拡大)2つに分かれている。 まず冒頭に、ロジャー・ウォーターズの「”狂気”は政治的哲学的な他者への感情移入への集積なんだ」という言葉から始まり、デヴィッド・ギルモアも「当時のロジャーのアイディアはどの世代にも通用するいつの時代にも意味のあるものだ」と付け加える。
 シド・バレットが抜け、ギルモアを加えてみたが、全く方向が見えなくなっていたとき、ロジャーの言葉によると開き直りに聞こえる”得意なことをやるしかない”といったところからピンク・フロイドはスタートし、その流れから「狂気」に繋がっていくことを確認している。そしてその手法は”Echoes”で開花してこの「狂気」で完結したのである。

 "Chapter Selection"
  ここでは、”Breathe”はリハーサル・レコーディングが聴ける。そしてライトがマイルス・ディビスの”カインド・オブ・ブルー”にヒントを得たと話しているし、”On the run”はギター・ジャムのスタイルから始まってシンセサイザーに変わっていったこと、”The great gig in the sky”では、クレア・トリーにスタジオで即興で唄ってもらったとか、”Money”は、ロジャーのデモが聴け、最初はブルースのつもりで作ったという話。”Us and Them”は映画「砂丘」”用の曲だが、"美しいが悲しすぎる"と没になって、なぜかここで復活した話。”Brain damage”は、シドと関係ある曲とロジャーは言う、"人と違うことは何か?"と問うている。

Rogerwaters  "Bonus Interviews"
 ロジャーのこのアルバムのコンセプトに係わる話が出てくる。"誰もが根源的に直面する問題、他人とどう係わってゆくか"、ロジャーの世界観として"子供の頃人格は決まる。その後の価値観は子供の頃の経験で決まって行く"、"人道的行為が人間に可能なのか"これについては”us and them”がこの問題に直接的に唄われると。などなど、このアルバムでの根源的コンセプトを打ち出し、最も多くの曲を書き、全てのLiricsを書いたロジャー・ウォーターズによりこの「狂気」には”人間”が如何にテーマになっているかが多く語られるのだ。
 そして、一方ギルモアやライトは、音楽的な手法と構築などに関心のテーマが絞られている。こうした違いはこのアルバム回顧に於いてもはっきり浮き堀にされており、既に富をこのアルバムで手中にした彼らには生き方の違いがスタートしたことが解る。
 この後でロジャー・ウォーターズは社会主義か?資本主義か?に悩み、リック・ライトは華々しい生き方に溺れてゆく。そしてピンク・フロイドからロジャー・ウォータースが去るやいなや、ニック・メイスン、デヴィッド・ギルモアは、資本主義社会の典型である”カー・レース”に現(うつつ)をぬかし、そんなアルバム(「道:カレラ・パンアメリカーナ」)までリリースしてしまったのである。

このDVDの締めくくりは・・・・・・・・「月に闇の部分はない、全てが闇だ。明るく見えるのは太陽が照らす部分だけ」

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コメント

こんばんは、「狂気」の原曲を聞いてみたかったですね。当時はライヴで演奏しながら、段々と形を変え、完成品に近づいていったのでしょうか。当時のブートレッグには様々なバージョンが存在していたのですね。
 いずれにしてもピンク・フロイドの存在は永遠に語り継がれていくと思うのです。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年10月19日 (水) 20時20分

 ケイさん今晩わ。
 ピンク・フロイドの「狂気」は、アルバム・リリース前の1972年のライブものはブートで何枚か持っていますが、これらも結構楽しいです。特にRainbow Theatre ものが有名です。その後の日本ツアーものもあります。"on the run"、"the great gig in the sky"あたりはアルバムとかなり違いがあって面白い。"any colour you like"は、むしろギルモアのギターが生々しくてアルバムより好きです。もともとアルバム「狂気」は、技術陣があまりにも造り上げていて若干嫌気のするところもありますからね。

投稿: 風呂井戸 | 2011年10月19日 (水) 23時33分

風呂井戸さま、こんばんは
 某ブートレッグ通販会社でチェックしましたが、「the best of tour72」が4枚組で6980円でした。“狂気”のリマスター盤とアナログ盤で2枚、他の楽曲で2枚分、完全盤という触れ込みでしたが、どうなんでしょうか。
 72年の来日盤はやはり札幌での"Cold Front"がベストなのでしょうか。他にも東京、大阪、京都での収録というのがありました。フロイドのブート盤は初めてなので、なかなか迷うところであります。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年10月28日 (金) 21時42分

 プロフェッサー・ケイさんどうも、どうもです。^^)
 昔はブート話で、ワイワイやったもんですが、最近はピンク・フロイドものにはあまり手を付けていません。かってはTSP(THE SWINGIN' PIG)ものは良質でした。その後GREAT DANE とか、少々落ちますがTRIANGLEものなど、ピンク・フロイドに熱心でしたが、AYANAMIも健闘しました。
 お話のブートはもう近年チェックしていませんで私には不明ですが、どこのものかによって参考にしてみてください。来日ものの「狂気」は、かっては”COLD FRONT”が良かったです(「BEST OF TOUR 72」より音質はオーディエンスもので若干落ちますが、そう問題なく、内容は完全でした )。
 

投稿: 風呂井戸 | 2011年10月29日 (土) 14時32分

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