秋の夜長の回顧シリーズ(6): ペギー・リー Peggy Lee
女性ジャズ・ヴォーカルの一つの原点
「Peggy Lee / Greatest Hits」 Not Now Music NOT2CD284 , 2009
もう秋も深まって、初冬の時期となってきたが・・・なんとなく師走の忙しさも感ずるこの頃だ。
しかし、この夜長にはなんとなく回顧もいいもの。そこでこの「回顧シリーズ」では今回はペギー・リーに焦点を当ててみた。
私にとっては、何だかんだと言っても彼女の唄はあの映画「大砂塵」のテーマでビクター・ヤングが作曲した”ジャニー・ギターJohnny Guitar”(1954年)ということになる。歳がばれるが、まだ感受性豊かな少年時代に聴いたこの曲と歌は、1950年のペレス・プラードの”セレソローサ”から4年後となるが、これも日本では一世を風靡した。まさに当時の言葉で言うと洋楽の素晴らしさだった。又、このムードには子供ながらに痺れたものだ。
私にとってはそんな接点のペギー・リーであるも、実は彼女のジャズ・ヴォーカリストとしての活動は、その十数年前の1940年には始まっていたわけで、あのベニー・グッドマンにスカウトされたというところから、表舞台での活躍が始まったというとところなのであろう。生まれは1920年というから20歳頃からの活動だ。彼女の歴史はこのグッドマン楽団のギタリスト、ディブ・バーバーとの結婚から、ソロに転向して、更に磨きをかけていく。 ここに紹介したベスト盤には特にヒットした曲25曲(左)が詰め込まれ、更に評判の良かったアルバム二枚も納められており、彼女を十分他の能出来る代物。(デジタル・リマスターされ十分聴くに堪えうる)
現在もう数え切れないほどの女性ジャズ・ヴォーカリストが、ジャズ界にいるが、やはりこのペギー・リーの歌った曲をコピーして歌いアルバムに納めることが多い。それには彼女の世界が一つの原点になっていることは、誰もが認めるところであろう。
まずは、今でも多く歌われる’58年にヒットした”fever”からスタートする、そして続くMr.wonderful”などを聴くと、ここには女性ヴォーカルのお手本的唄が聴けるし、なつかしの”manana”などを聴くと歴史的音楽の楽しさを味わえる。
”wating for the train to come in”などは、なんとなくかったるさのヴォーカルも聴かせる技量には恐れ入る。
もちろん”johnny guitar”は登場するし、私の好きな”bye ye blackbirds”で、このベスト選曲は締められている。
いずれにしても、現在のジャズ・ヴォーカルの原点を聴く気持ちで聴けるところに、このアルバムは貴重である。
さて、ここには、1957年のキャピトルから出されたアルバム「The Man I Love」(左)の全12曲が納められ、いやはや如何にも良き時代の優雅なムードを感じさせてもらえる。
ストリングスもバックに入って、男女の愛をスローなバラードに乗せた曲を、楽しませた好評盤。
こうしてCDでのリマスター盤は大歓迎である。
そしてもう一枚のアルバム「Black Coffee」 、これは1953年、1956年にデッカからリリースされたもの。特にアルバム・タイトル曲の”Black Coffee”は、現代ジャズ・ヴォーカリストのお手本中のお手本。当時ここまで歌い込めたのには感心せざるを得ない。
何時も言うのだが、私はベスト盤は否定者で、アルバムというのはトータルに聴くところにその心が感じ取れると思っているのだが、この時代のペギー・リーにおいては、むしろベスト盤の価値はそう否定できるところでなく、まあそのまま楽しめばいいのだろうと思う。
しかしそこにおいても、ここに納められたアルバム「Black Coffee」は今の時代にも色あせずに、この夜長の時間帯に楽しめるところは20世紀の名ヴォーカリストとして数本の指に入るといわれるペギー・リーは、これからも聴かれてゆくところにあるのだと思う。
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コメント
こんばんわ!私はジャズがとても好きなんですが、あまりくわしくはありません。
でも初めてペギー・リーのジャニー・ギターを聞いたとき、ちょっと、衝撃を感じました。
今まで、いろんなアレンジのこの曲を聴いてきたのですが、ああ、これが本物なんだなあ・・
などと思ってすぐCDを買いました。
もっと素敵なヴォーカルいっぱいあるんでしょうね。
投稿: マービー | 2011年12月22日 (木) 20時43分