ヘイリー・ロレン Halie Loren (4) : ニュー・アルバム「ハート・ファースト Heart first」
ここで、ヘイリー・ロレンについて書くのも4回目になってしまった。今回も一年の間隔でのニュー・アルバムの登場でさっそく聴いてみての感想だ。
「Halie Loren / Heart First ハート・ファースト 」Victor VICJ-61660 , 2011
前作(3rdアルバム「After Dark」)の野暮ったいジャケに比べると、今回は良くなっていますね・・・・と、ジャケ話から入るのもちょっと何ですが、彼女の日本デビュー・アルバムである2nd「青い影」から期待した3rdがいまいちであったことから、期待は50%の気分でこのニュー・アルバムに臨んだ事の結果である。
さて、その結論からゆくと、またまた”中途半端なアルバムになっていた”というところだ。もともと彼女の1stアルバムを聴いてみると、彼女自身の曲で詰め込まれたかなり独創性のあるオルタナティブ・ミュージックととれて、なかなかジャズ畑と違った興味もたれるシンガーソングライターと思われた。
しかし、日本デビューの2nd「青い影」はむしろジャズよりのアルバムに変身して、そのジャズ・ヴォーカリストとしての魅力が大きく開花したと聴き取れ、更にそのジャズよりの線で進化していくのかと思いきや3rd「After Dark」は、どっちとも言えない中途半端な線で収まってしまった。
そこで、今回は・・・・と、まずそうした興味からアプローチしてしまった訳であるが、前作の線からどうも変わってはいない。ということは、どうもこのパターンが彼女の売りのポイントであるようだ。
さてこのCDの収録曲は左の通りである。実はスタート曲の”taking a chance on love”を聴いたときには、おお、今度はなかなかJazzyにゆけそうなアルバムだと期待を持った。しかしそれに続く2,3曲ではなんとなくやはりシャンソンっぽくなってくるが、それはそれなりきに悪くはないのだが、私の期待とはちょっと方向が異なってくる。それでも”C'est Si Bon”なんかは、ヘイリー節と言っていいのだろう。
”Sway”が登場してびっくりするが、やっぱりこれはローズマリー・クルーニーに圧倒された私にとっては、ちよっと味気ない。
6曲目の”heart first”は彼女とラリー・ウェイン・クラークの共作曲でこのアルバムのアルバム・タイトル曲だけあってちょっとした世界を聴かせてくれる。
そしてそれに続く”my one and only love”は、このアルバムでも出色の出来だ。バックのピアノも生きている。このパターンで彼女は押していって欲しいと私は思う。その後の”feeling good”も彼女のヴォーカルのみでスタートしてムーディーな結構な出来。このアルバムの中盤に来てこの2曲で盛り上がる。
ポヒュラーな”fly me to the moon”は、まあ並と言ったところでしょう。
”lotta love”もこれといった味には欠けるし、ジャズ・アレンジとしても中途半端。
”in time”は彼女のピアノが聴ける唯一の曲。彼女の曲でもあるが、やはりこれを聴くとジャズの世界とは異なっている。しかし美しさは感じられる良い曲でもある。
”smile”これも歴史的ヒット・ナンバーだが、スローにじっくりとした味で彼女なりきの唄に仕上げようとしている努力は解る曲。
このアルバムには、最初に書いたように本格的ジャズ世界を期待してはいけないのかも知れない。特に2曲のボーナス曲のうちの”ellie, my love”は余分であるし、私の偏見からはどうも中途半端。しかしこれが近年の流行のJazzy not Jazzというパターンと言えばそうなのかも知れない。そんなつもりで最初から聴けば良いのかも知れない。
まあ、「青い影」以来の彼女は期待株であるのは事実である。ただ、高音部で声がひっくり返るところは、魅力と感ずる人には魅力であろうし、ちょっとねちっこくて耳障りと言えば又そのようにも聴ける。ここのあたりは聴く人の好みであろうと思っている。
(参照)
① 2010.10.28 ヘイリー・ロレン ニユー・アルバム「After dark」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/halie-loren-3-a.html
② 2010.9.3 ヘイリー・ロレン 1st「Full Circle」
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/halie-lorenstfu.html
③ 2010.5.25 期待のヘイリー・ロレン http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/halie-loren-a9e.html
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コメント
ヘイリーのアシスタントをしているものでございます。この度はハートファーストをお聞きくださり丁寧で公平な評価をくださってどうもありがとうございました。貴重なご意見を参考にさせて頂きこれからも精進して参ります。どうもありがとうございました。ヘイリー本人も感謝しております。失礼致しました。
投稿: Alana | 2011年12月23日 (金) 15時15分
Alanaさん、コメント有り難うございます。もともと偏見に満ちているこの私のブログに、ヘイリー・ロレンのアシスタントをしている方とか、大変恐縮してしまいました。是非是非、日本でも期待株ですので、特に私の個人的希望としては、彼女のオルタナティブ路線も貴重ですが、最近のジャズ路線への傾向からその道に磨きをかけていただければと期待しています。来年の来日公演にも期待しております。
投稿: 風呂井戸 | 2011年12月23日 (金) 17時07分